「科学技術は環境(エコ)の基本」シリーズ
【第2回】ニュースの中の環境問題と科学技術
~何かしなければの想いを実践につなげる~6.災害を未然に防ぎ、最小化することが科学技術の役割
大島:ここ数年、日本全国で豪雨災害が多発し、多くの犠牲者と被害が出ていることは大変痛ましい出来事です。この豪雨・洪水災害の多くが、人為的要因による温暖化が関係すると考えられます。環境省は2009年、二酸化炭素削減など地球温暖化対策を取らなかった場合の日本への影響について予測しました。2090年には豪雨による洪水の被害額は全国で最大年間8兆7千億円と現状の9倍、気温上昇で熱中症による死亡率も中国・四国・九州が約7.0倍となると見込んでいます。これら災害を未然かつ最小限の被害に抑えることこそ、科学技術の役割です。
図-4 人間環境による環境への危機 (環境省:21世紀環境立国戦略より)
7.環境性と経済性を両立させる科学技術
大島:いくら環境を配慮した国づくりと言っても経済の成長を考えない科学技術はありません。経済と環境を両立させることが私達科学技術を学ぶ者の使命です。
近年、ハイブリット車、電気自動車など、日本でも環境に配慮し「環境と経済を両立」させた新産業の創出、育成が拡がっています。1995年に政府は「科学技術基本法」を制定し「科学技術創造立国」を宣言しました。このなかでは「環境と経済を両立」させ、持続可能な社会発展をめざすためには何が必要なのか?その答えとして、“科学技術”を持って「地球環境の保全と人類の幸福(安心・安全)を実現」と「新たな産業を育成」し、国際競争力のある国づくりを目指すとあります。特に重点項目としては「科学技術の成果を早く社会に還元する」ための「人材の育成」が示されています。これからの日本の社会を築くうえで、国として改めて科学技術の重要性がしっかりと示したと言えるでしょう。
8.今なぜ科学技術エコリ-ダ-が必要か?
大島:科学技術基本法に示される「地球温暖化・エネルギ-問題の克服」・「環境と調和した循環型社会の実現」。私たち日本技術士会が科学技術エコリーダーの養成を推進する理念が、まさにここにあります。ご存じのように地球環境問題は今や世界的規模の問題であり、国民1人ひとりが正しい環境知識をもって経済と両立させた国づくりを目指すことが急務です。
このためには二つの方法があります。一つは自らが環境負荷の少ないライフスタイルを実践する。もう一つは環境負荷の少ないビジネス、技術など環境に適した社会の構築にむけて人々を引っ張る、あるいは教育するリ-ダ-です。後者が科学技術エコリ-ダ-と理解してもいいでしょう。
既に個人の皆さんも含めて地球環境問題への関心は高く、専門家だけでなく全国で草の根的に地球環境問題対策を実践されています。環境問題を正しく知り、人材育成、一般市民の啓発を図りながら持続可能な社会発展に向け取り組んでいくためにも、地域の中に個人のエコリ-ダ-が数多く必要な時代となりました。
既に全国64地方自冶体の約92%が環境教育・環境学習に係わる条例、基本方針、計画等を策定し、また78%の自冶体が環境リ-ダ-等養成講座を開催しています。例えば、全国でも神奈川県川崎市では環境行政と人材育成は早くから始まり、「公害の街かわさき」から「人が環境と共生する都市・かわさき」を実現しました。(写真-1、写真-2)
私自身が所属する日本技術士会・北海道本部)では、「環境体験学習」や「野外授業」「出前授業」を通して次世帯の子供達やシニア層まで、各世帯が一緒に環境学習に取り組んでいます。(写真-3、写真-4)