「科学技術は環境(エコ)の基本」シリーズ

【第4回】科学技術を学ぼう②

~公式テキストから~ 「生活と科学技術」「エネルギー開発と対策技術」「地球規模の環境問題と対策技術」

第5章 エネルギー開発と対策技術

~新エネルギーを実用化するための技術開発

1.エネルギー開発と環境保全

船越:我が国では、一次エネルギー消費の41%が発電用で、その56%を化石燃料による火力発電が占めます。CO2排出量の少ない新エネルギーは1%にすぎず、地球温暖化防止の観点から新エネルギー利用や省エネの普及が望まれます。ただ、新エネルギーには発電の不安定さという課題があり、その対策として電力貯蔵技術(蓄電池等)の開発が急がれています。

エネルギーチャート

原子力発電は少量の燃料から膨大なエネルギーを生産でき、CO2を排出しないクリーンなエネルギーとして、我が国でも多くの原発が建設されてきました。しかし、2011年3月の福島原発事故以来、不測事態に対する不安すなわち「潜在的危険性」を完全に払拭することの困難さや、核廃棄物の最終処分法が確立されていないことなどから、エネルギー政策の抜本的見直しが行われています。

2.改正省エネルギー法の概要

CO2削減とともにエネルギー需要を賄うには省エネも重要であり、政府は1979年に燃料・電気・熱を対象にした「エネルギーの使用の合理化に関する法律(略:省エネ法)」を制定し、2009年には改正省エネ法を制定しました。改正省エネ法では、改正前の工場・事業所単位から企業全体のエネルギー管理に変更となり、年間エネルギー消費量(原油換算)が1,500kl以上の企業に特定事業者として指定を義務付けました。これによって、省エネ法の規制対象となる企業は改正前の10%から50%程度にまで拡大しました。

3.再生可能エネルギーの開発

持続可能な社会の構築には太陽光、風力、バイオマス、地熱などの再生可能エネルギー導入が必要ですが、化石燃料などに比べて割高な利用コストが課題となっていました。そこで、我が国は価格差解消に向けた支援策を実施することで、再生可能エネルギーの導入拡大とともに技術革新によるコスト削減を図っています。中でも、地中熱や空気熱を利用したヒートポンプは再生可能エネルギーの変換技術として注目されています。

4.ヒートアイランド現象の対策と利用

都市の市街地では、産業や交通など大量のエネルギー利用に伴う排熱により郊外地より温度が2~5℃高くなる傾向があります。こうした都市特有の温度上昇を「ヒートアイランド現象」と言い、都市環境の再生には避けて通れない問題となっています。特に、夏季は冷房排熱に起因する温度上昇が顕著となり、都市の良好な大気生活環境を確保するためには、排熱を出さないための省エネ対策と併せて、多様な昇温抑制技術を組み合わせた対策を進めることが必要です。

また、近年はビル等の冷暖房から出る排熱を一旦地下貯留して地下熱と熱交換させ、ヒートポンプによって循環させる「地下熱交換型冷暖房システム」の技術開発が進んでいます(下図)。今後は都市排熱の利用技術のみならず、省エネ住宅の建設や保水性舗装など都市全体の昇温抑制に繋がる技術を活用して、新たなエコ都市創出に向けた科学も研究していく必要があります。

地下熱交換型冷暖房システム

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