「科学技術は環境(エコ)の基本」シリーズ

【第4回】科学技術を学ぼう②

~公式テキストから~ 「生活と科学技術」「エネルギー開発と対策技術」「地球規模の環境問題と対策技術」

科学技術の面白さと重要性を知っていただく「科学技術は環境(エコ)の基本」シリーズ第4回は、エコリーダー公式テキストから、身近な生活とエネルギー開発、そして地球規模の環境問題にかかわる科学技術におけるテーマについて、(公社)日本技術士会登録「持続可能な社会推進センター」会員の船越 元氏(株式会社 大建設計 札幌事務所 技術部長)が解説します。

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第4章 生活と科学技術

~有限である地球資源を次世代により良い形で引き継ぐために

船越元 氏

船越:私達の生活の基礎は「衣・食・住」にあり、それに必要な物資を運ぶ輸送手段など、多岐にわたる科学技術を活用して豊かな生活を実現してきました。しかし、その一方で貴重な自然環境や、限りある地球資源などを損壊してきたことも事実です。私達はこれからも生活に不可欠な食料やエネルギーなどを確保していかなければなりませんが、これまで以上に環境や資源に対する配慮が必要となり、科学技術の更なる進化と改善が求められます。

【食】の課題と科学技術

世界には農産物を輸出して豊かな生活を満喫している国がある一方、国民に必要な食料を確保できず、多くの飢餓難民を抱えている国もあります。地球上の農地や水などが有限であるのに対し、食料需要は人口増加に伴って増え続けるという、相反する課題の解決には科学技術の活用が不可欠です。

我が国は広大な未利用農地を抱えながら食料自給率は39%と、食料の過半を輸入に依存し、その一方で多くの食品残渣を廃棄物として処分している現実があります。世界的な食料ひっ迫が現実問題となった今日、私達は豊かな生活の陰に潜むこうした歪を是正し、私達のライフスタイルそのものを見直すことが必要です。更には、貴重な資源を限りなく活用することも重要です。

主要先進国の食料自給率

例えば、廃棄物として処分していた食品残渣からエネルギーを生産することや、バイオ農薬を活用して環境負荷の少ない農業生産の実現など、環境や資源を損壊せずに生産増を達成するために、科学技術の更なる研究開発が求められます。

【交通・輸送】の課題と科学技術

現代社会は様々な物や人が世界中を移動し、その輸送に膨大な化石燃料が消費されています。化石燃料を無尽蔵に使用できると考えた時代は、快適性、利便性優先の車社会が創出されてきました。しかし、化石燃料の有限性が明らかになるにつれ燃費効率が重視され、資源に乏しい日本がいち早くその技術開発に取り組んだことで、今では日本のメーカーが世界の環境技術をリードするようになりました。

日本が最初に実用化したハイブリッド車や電気自動車のほか、燃料電池車も実用化の直前にあり、究極のクリーンエンジンと言われる水素自動車など、CO2を全く排出しないゼロエミッション自動車の研究も進められています。これら環境配慮型の車両技術は、車から鉄道、船舶、航空機などへも応用され始めており、今後更なる発展が見込まれる技術分野と言えます。

【住宅】の課題と科学技術

私達はこれまで、安全性、快適性に優れた住宅を求めてきましたが、近年は環境意識の高まりとともに、高断熱構造の省エネ住宅や太陽光、地中熱、バイオマス等の再生可能エネルギーを導入したエコ住宅への需要が高まっています。わが国ではこれまで、エコ住宅は従来型住宅に比べて割高であるためになかなか普及しませんでしたが、2011年3月の福島原発事故を契機に国民の間に再生可能エネルギーへの期待が膨らみ、国としても再生可能エネルギーの導入拡大に向けて様々な支援策を策定しましたので、今後急速にエコ住宅に関連する技術開発が進むものと期待されています。

また、エネルギー問題とは別に、世界一の高齢化社会を迎えた我が国において、日々生活する住宅には高齢者が住み易い住環境が求められ、それを創出するために介護ロボット等も組み入れたユニバーサルデザイン住宅の開発も重要になるでしょう。

以上述べてきたように、私達の生活に密着した食、交通、住宅などの分野において、有限である地球資源の消耗を抑えて将来世代に良い環境を引き継いでいくうえで、科学技術が果たすべき役割は極めて大きく、これからも持続的に発展させていくことが求められています。

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