「科学技術は環境(エコ)の基本」シリーズ

【第4回】科学技術を学ぼう②

~公式テキストから~ 「生活と科学技術」「エネルギー開発と対策技術」「地球規模の環境問題と対策技術」

第6章 地球規模の環境問題と対策技術

~産業経済の発展と地球環境、2つの共生のために

船越:私達は、産業経済の発展や生活の都市化に伴い、大気、水質、土壌、地下水の汚染や、廃棄物の大量発生など数々の環境問題を引き起こしてきました。こうした環境問題は、私達の日常生活や事業活動に深く根ざしており、相互の関わりも強く複雑なだけに、その解決にはこれまでの技術に加えて新たな技術開発が必要になります。

1.大気汚染

大気汚染の主たる原因物質には一酸化炭素(CO)、二酸化硫黄(SO2)、窒素酸化物(NOx)、浮遊粒子状物質(SPM)等があり、その多くは工場や自動車などで化石燃料を燃焼することによって排出されています。このため、我が国は1967年に公害対策基本法、1968年に大気汚染防止法を制定し、工場や発電所など固定排出源からの大気汚染を大幅に改善してきました。

しかし、自動車など移動排出源からの排出は、燃料の改質や燃焼効率の改善などの技術革新が進められたものの今なお改善は遅れており、国は大気汚染防止法や関連の法規制を強化しています。今後は化石燃料を使用しない電気自動車など、エコカーの更なる技術開発を促進することによって大幅な排出改善を進める必要があります。

2.水質汚濁

昭和45年の水質汚濁防止法により工場や事業所からの排水は改善され、私達の生活排水についても下水道整備によって改善されました。この結果、公共用水域での環境基準達成率は健康項目ではほぼ100%になりましたが、生活環境項目は河川で92.3%、湖沼は53.0%に留まっています。今後は、特定汚染源からの削減対策だけで対応困難な市街地や農業地域での対策が重要になっています。

3.土壌・地下水汚染

我が国の土壌汚染は、1973年に東京都内の工場跡地に埋められていたクロム鉱滓が周辺環境を汚染し、大きな社会問題となったことでクローズアップされました。その後、半導体工場でのトリクロロエチレン流出による地下水汚染なども相次ぎました。土壌・地下水汚染は、人々の健康に甚大な影響を与えるだけでなく、一度発生すると長期にわたる修復期間と多大な費用が発生し、原因企業等の社会責任も大きく問われるだけに、発生予見が可能な立場にある技術者には強い倫理感が求められるとともに、企業としての未然防止対策が極めて重要です。

国内には土壌地下水汚染が疑われる事業所や工場跡地が未だ44万カ所程度あると想定されており、国はこうした所からの土壌汚染が健康に及ぼす影響を懸念し、2002年に「土壌汚染対策法」を制定し、土壌調査法や対策方法などを定めています。

4.廃棄物処理

日本の年間ごみ廃棄量は、一般廃棄物が約5千万トン、産業廃棄物は約4億トンに達し、最終処分場の枯渇対策や安全処分のための対策が急務になっています。特に、焼却施設からのダイオキシンや重金属など有害物質の排出抑制など、環境負荷の少ない処理法や処分技術の開発が進められてきました。

さらに近年は、循環型社会の構築のためには排出抑制(Reduce)、再生使用(Reuse)、再生利用(Recycle)の『3Rシステム』による資源循環が不可欠との認識が高まってきたことから、国は廃棄物処理法の改正やリサイクル法などを制定し、廃棄物の発生防止とともに貴重な資源を可能な限り有効活用する社会システムの構築を目指しています。今後は、私達の生活の中から廃棄物を出さないゼロエミッション社会を実現するために、廃棄物の減量化や再資源化などリサイクル関連技術の開発が求められています。(2012年10月)

●「科学技術は環境(エコ)の基本」シリーズ

【はじめに】時代が必要とする科学技術エコリーダーとは?
【第1回】東日本大震災と科学技術 ~科学の目で今を選択することが、未来を変える~
【第2回】ニュースの中の環境問題と科学技術~何かしなければの想いを実践につなげる~
【第3回】科学技術を学ぼう①「地球環境の現状と科学技術」「環境問題とその側面」「地球環境問題への対策技術」
【第4回】科学技術を学ぼう②「生活と科学技術」「エネルギー開発と対策技術」「地球規模の環境問題と対策技術」
【第5回】科学技術を学ぼう③「IT技術の仕組みと活用」「自然災害から国土をまもる環境保全対策」
【第6回】科学技術を学ぼう④「環境リスクとリスクマネジメント」「技術者のモラル」「環境と経済」
【第7回】科学技術を学ぼう⑤「国際化」「人材育成人材活用を急ごう」「社会環境への気配り」
【第8回】行動力とリ-ダ-シップが社会を変える

●科学技術エコリーダー養成講座について

●エコリーダー公式テキスト「<科学技術>エコリーダーになろう」

既に16万人を超えるeco検定合格者(エコピープル)を対象に、スキルアップ事業「科学技術エコリーダー養成講座」を定期的に開催しています。職場や地域で環境分野のリーダー育成を目的とするもので、2日間の講習修了者には東京商工会議所および(社)日本技術士会「持続可能な社会推進センター」からの認定証が発行されます。

●科学技術エコリーダー養成講座:大阪会場
日時:2013年3月2日(土)、3日(日)
時間:AM10:00~PM4:00(2日間共通)
https://www.eco-people.jp/skillup/kouzaseminar/7875

●上記以外の今後のスケジュールについては下記にお問い合わせください。
[問い合わせ先] エコピープル支援協議会 事務局(エコリーダー担当)
Tel. 03-3556-6405 Fax. 03-5226-3322
E-mail: ecoleader-uketsuke@ep-support.jp

<関連記事>

●復興への”土台創り”は地元の技術と雇用で解決する
●東北の女性をつなぐ「福島のお母さん達と行く石巻」プロジェクト
●なぜ、高速ツアーバス事故はなくならないのか
●電気を選べる時代がやってくる(前半)                        
●自転車をもっと暮らしの中に

TOPへ戻る