識者に聞く

再生可能エネルギーは原発に替われるか第2回 エネルギー国家百年の計を語る

再生可能エネルギー普及の課題

再生可能エネルギーが普及しなかったのにはいくつか理由があげられます。

1.高価であること

再生可能エネルギーの普及には価格が高いという問題があります。ドイツの場合、太陽光発電の電力は高く買ってくれます。それでも2004年当時キロワットアワーで80円くらいだったのが、2012年には20円くらいに落ちています。

日本でも昨年から再生可能エネルギーの固定価格買取制度が始まりました。日本は42円から始まりましたが30円くらいならグリッドパリティが成立すると言われていますから、42円というのはまだご祝儀相場だと思います。

2.不安定なこと

太陽光発電は、晴れ、曇り、雨など天候によって発電量にばらつきがあります。風力も風によって発電する時間と発電しない時間が出てきます。だからこんなものは役に立たないと言われてきました。

スペインは風力を大量に仕入れ、さらに太陽光発電やバイオマス発電も多くしました。原子力は一定の電力を起こしますが、風力は風任せです。これで調節は聞きません。なんで調節しているかというと、水力で調節しているのです。ダムの水のバルブを開けたり閉めたりしています。

一日の利用のピークの時間には応答の高い石油やガスも使っています。それでも通常の日であれば、50%程度は再生可能エネルギーでまかなっています。

日本は、太陽電池も風力も不安定だから電池を先に買いなさいと言ってきました。平坦な電気になったら電力会社は受け入れますよと言ってきたのです。スペインなんかは電池なんか要りません、電力会社が汗をかいてつないでくれるわけです。国情によって電力会社と再生可能エネルギーの設置者の力関係が違っています。

スペインは水力で調整していると申し上げましたが、日本も揚水発電所はたくさんあります。日本の方が電力の調整の下地はできているのです。ところが電力会社からすれば原子力のためにつくったもので再生可能エネルギーのためにつくったものではないという返答です。

3.電力系統が弱い

風力のように不安定ならば、電力の系統を広い地域でつなぐという方法もあります。欧州では海底ケーブルを使って各国間をつなぐ広域融通も広がっています。

一番長いものだとオランダとノルウェーをつなぐ580㎞のもの海底ケーブルもあります。電力系統を再生可能エネルギーのためにつくるのはとってもお金がかかると日本の電力会社は言います。発電で儲けている電力会社からすれば、風力発電を受け入れるというのはその分自分の売上が減ることを意味します。買いたくないのは当然です。制度が悪いわけです。

欧州では、太陽光や風力をつなぎたいと言われたら、電力会社は断ってはいけないという法律があります。日本は原則として受け入れるとしか書いてありません。日本の電力系統は東北と北海道が極端に悪いのです。電力のニーズが低かったからと言えるかもしれませんが、実は風力発電は北海道や東北あたりが一番強いところです。日本が風力を充実させるとすれば北海道や東北の電力系統をもっと充実させなければいけません。

4.設置場所の問題

太陽電池で原発1基分の100万kWを発電しようとすると、東京の山手線の内側くらいの面積が必要です。狭い日本でどれくらいの再生可能エネルギーがつくれるのか、環境省が最大開発可能性を調査しました。今の法律の下で太陽光や陸上の風力発電、地熱発電を合わせると、今の効率のままでも全電力をまかなうことは可能だという調査結果が出ています。

海外から輸入している化石燃料分も再生可能エネルギーで置き換えるとなると、2.5倍のエネルギーをつくらなければいけません。それをやるには洋上風力も必要になります。

実はいま必要な電力を太陽光発電でやろうとすると四国の半分くらいは太陽光パネルで覆わないといけないという計算です。ところが全農地のうちに耕作放棄地があります。また、建物には屋根があります。それに駐車場の面積を含めると四国の半分くらいになるのです。やろうと思えば、できないわけではありません。

農家の平均年収は125〜150万円です。それでは息子さんが農家を継ぐことはできません。1平米( 1 m2)の太陽電池が1年間に稼ぐ金額を5,700円ということにすると、200〜300平米の農地があれば、現在の収入を倍増することが可能です。休耕田などに太陽電池を設置すれば良いわけです。もっとつくりたければソーラシェアリングという方法もあります。太陽パネルを間隔を空けて高い架台に設置することにより、同じ土地で農業と発電を両立させるという方法です。低コスト化も話題になっています。スパイラルくい工法という台風にも耐えられる安上がりな方法も開発されています。

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