識者に聞く

再生可能エネルギーは原発に替われるか第2回 エネルギー国家百年の計を語る

再生可能エネルギーの実現に必要な投資額は年5兆円レベル

いつか、洋上風力も必要になるかもしれませんが、九州大学の教授たちは漁業と太陽発電と風力発電の3つを共存させる方法を研究しています。

地熱発電はやりさえすれば採算が取れます。ただ、国立公園法が妨げになっています。それとの調整が必要なのです。こうして見ていくと北海道は太陽光発電でもポテンシャルが高いわけです。日本学術会議ではエネルギー政策の選択肢を6つのシナリオをつくって検討しました。この中から4つが選ばれ、さらに3つに絞って前野田首相に提言しました。民主党は2030年に原発を限りなくゼロにすると決めていますが、その計算のベースになっています。

鳩山さんの時代に温室効果ガスを25%削減するという国際公約を行いました。原発の停止と温室効果ガス25%削減の2つの約束を果たすにはどれくらいの資金が必要かも試算しました。それによれば、1年間に再生可能エネルギーを5兆円買えば、原発を止め、鳩山さんの約束も果たせるという結論でした。5兆円というのは国民一人当たりでいえば約5万円です。

ドイツの再生可能エネルギーは国民一人当たりで計算すると5万円です。日本人は16万円をパチンコに投資していると話しましたが、少し発想を変えればできない目標ではありません。

日本の鉱物性燃料の輸入額の推移を見ると変動幅が大きくなっています。危機が起きると5倍くらいになることもあります。2008年には年間30兆円くらいの輸入額でGDPの5%相当額でした。パチンコ産業はGDPの3%です。

経団連会長は高い再生可能エネルギーで日本はつぶれるという発言をしています。せいぜい5兆円の話なのです。毎年毎年再生可能エネルギーが増えていけば、鉱物性燃料の輸入額も減っていきます。再生可能エネルギーに毎年5兆円くらいの投資をしていけば、毎年の価値として30兆円になるような状況が生まれる可能性があります。それでリスクを回避できるのなら決して高い投資だとはいえません。

国民が再生可能エネルギーに賛同して毎年5兆円の投資に理解を示すのなら、いずれは払った分が自分たちのところに戻ってくると思います。

<a href="http://csr-magazine.com/2013/01/01/rjif1/第1回]「福島第一原発事故を調査して」はコチラ

※この記事は、2012年11月16日に「豊かな成熟した日本を考える会」が主催する懇話会での講演をまとめたものです。あくまでも北澤先生の発言の要旨であり、文責は当編集部にあります。

〇北澤宏一さんのプロフィール
独立行政法人科学技術振興機構顧問。1966年東京大学理学部化学科卒業、1972年マサチューセッツ工科大学材料科学専攻博士終了、1987年東京大学工学系研究科工業化学専攻教授、新領域創成科学研究科物質系専攻教授などを経て、2007年から独立行政法人科学技術振興機構理事長、2011年独立行政法人科学技術振興機構顧問。
〇福島原発事故独立検証委員会について
http://rebuildjpn.org/fukushima/about/kitazawa
〇北澤さんの著書のおすすめ 『日本は再生可能エネルギー大国になれるか』
福島第一原発事故の独立民間事故調査委員会委員長の経験を踏まえ、脱原発を行うための経済的な検証などを行ったもの。北澤さんが自費でまとめたものです。

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