国内企業最前線

就業時間、製品、株式の1%を社会貢献に

セールスフォース・ドットコムの「1/1/1」モデル

平日における社員の社会貢献活動を推奨サポート

Q.震災以降、日本企業も社員のボランティア休暇をサポートする傾向が強まりましたが、貴社の仕組みは当初から一歩踏み込んだもののようですね?

丸野:社員の社会貢献活動を応援するといっても通常は“休日に”という話だと思うのですが、当社は平日での活動も推奨しています。1人年間20時間以上/6日間のボランティア休暇を推奨し、2012年度の実績として、日本の社員の社会貢献時間は合計6,500時間に達しました。

Q.社員の中にはボランティア活動って何をすれば良いか分からない方もいらっしゃいませんか?会社としてどのように社員の活動をサポートしているのでしょうか?

丸野:当社の主要製品の一つにSalesforce Chatter(以下、Chatter)というコミュニケーションツールがあり、そちらを活用し社内で社会貢献活動支援システムを構築しています。社員なら誰でも活用することができ、社員はボランティア情報の確認、登録、会社への助成金の申請、休暇スケジュールの入力など、ボランティア活動の事務管理全般を行うことができると同時に、互いに情報共有し、コミュニケーションをとりあうことができます。

また社内では社会貢献委員会を組織しており、製品開発や営業などビジネスに直接携わる部門からも各1-2名が担当者として選任され、2-3ヶ月に1回会議をしています。先日の会議では2012年末に児童養護施設にクリスマスプレゼントを届けに行った活動報告がありました。会議で様々な部署からの活動プラン・報告を聞いて、別な部署からも「うちの部署でもやってみたい」「別な形でこういう事ができないか」など、相互の連携や新たなアイデアが生まれています。

東日本大震災の折にはどちらの企業でも自然発生的なボランティア活動が活発に行われたと思いますが、当社でも同様でした。前述の社内システムを通じて、親族が被災した社員が洋服を集めたいとか、またバンド活動を趣味とする社員の発案で行ったチャリティライブには会社からも集まった寄付の同額を助成し、トータルで200万円近くを3県の児童養護施設に寄付しました。

このように、社員のボランティア活動に対しては、単に会社が休みを推奨するだけでなく、Salesforce.com Foundationを通じて具体的にコーディネートしたり、物品・金銭的な助成も行っています。

製品・人材を無償提供する「製品の1%」

Q.「製品の1%」では、非営利団体等にCRMアプリケーションを無償提供されるそうですね。

長野:NPOや非営利団体等に向けてCRMアプリケーション「Salesforce」を10ライセンス無償提供させていただき、11ライセンス以上の場合はディスカウント提供しています。また、「製品の1%」として提供する会社資源には製品だけでなく、人的資源も含みます。

NPOや非営利団体ではITスキルが高い人材が不足しており、製品をご提供しただけでは、使いこなせない、また実際のデータ入力やメンテナンス作業を行う人手がないというケースも少なくありません。そこで、現状は関東圏を中心に、当社のSEやコンサルタントなどの社員が非営利団体のお手伝いをする、いわゆる「プロボノ(Pro bono):職業の専門知識・スキルを活かした社会貢献」活動も増えています。

丸野:例えば東日本大震災後の後には、仮設住宅の皆さんの様子を見守るツールとしてChatterを活用いただきました。また、以前から障がい者雇用と農業担い手育成をつなぐ試みとして農場を経営するつくばアグリチャレンジさん(茨城県つくば市)の「ごきげんファーム」の活動を支援しておりましたが、震災後には福島県・茨城県の農産物を販売するECサイトを急遽立ち上げるために当社社員がサポートさせていただきました。

Q. あえて伺うのですが、本業の製品とスキルを無償提供することで、企業が得るメリットとは何でしょうか?

長野:一般企業も非営利団体も業務効率化の悩みは同じです。さらに非営利団体が共通して抱える悩みがあります、それは経済的な問題です。

非営利団体とのウィンウィン(win-win)の良好な関係を構築できた一例として、米国セールスフォース・ドットコムと「人身取引(ヒューマントラフィッキング)」の削減に取り組む米国NPOポラリスプロジェクトがあります。非営利団体の多くはお金も人手も不足しています。ポラリスプロジェクトも同様で広報活動や社会への十分な情報提供ができず、そのため社会的に意義ある活動が広く知られていませんでした。米国セールスフォース・ドットコムは以前からポラリスプロジェクトを製品の無償提供等を通じて支援し、ポラリスプロジェクトは徐々に社会とのコミュニケーションを活発化、結果的に寄付金を集めやすくなりました。活動資金が生まれることで、新たな人材を雇用することができ、さらに活動を広げられているそうです。

一方、当社サイドは、製品を無償提供いたしますが、11ライセンス以上はディスカウント価格で購入いただいています。非営利団体が成長されること、イコール社会的に意義ある活動が広がると同時に、当社の製品をディスカウント価格で購入いただくお客様となる、利益という形で還元いただけ、当社は更に新しい別の団体へ、寄贈、助成が出来るようになるわけです。社会貢献を通じて非営利団体等の皆さまとも長い目でウィン-ウィンの関係になるサイクルを築き、社会を変えていく、これがセールスフォース・ドットコムの“ビジネスを統合した社会貢献”が目指すところです。

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