国内企業最前線

就業時間、製品、株式の1%を社会貢献に

セールスフォース・ドットコムの「1/1/1」モデル

クラウド・ソーシャル・モバイルにより、新しい形で顧客とつながる“Customer Company”(カスタマー・カンパニー)の実現をテーマに、企業向けクラウドコンピューティングで世界を牽引するセールスフォース・ドットコム。同社のユニークさは、事業活動と社会貢献活動を統合したビジネスモデルにある。社会貢献専門部署であるセールスフォース・ドットコム ファンデーションのNonprofit Product Manager 長野りえさん、コミュニティ プログラム コーディネーター 丸野遥香さんに独自の包括的な社会貢献活動について話を聞いた。

セールスフォース・ドットコム ファンデーションのNonprofit Product Manager 長野りえさん(右)と、コミュニティ プログラム コーディネーター 丸野遥香さん(左)

創業時からビジネスとCSRを両軸に

Q. セールスフォース・ドットコムは極めてユニークな社会貢献活動をされていますが、まずはグループ全体をご紹介いただけますか?

長野:セールスフォース・ドットコムは1999年に米国で現会長兼CEOマーク・ベニオフが設立しました。世界で最初に企業向けクラウドコンピューティングを提供した企業であり、主要製品の一つがクラウド型CRM(Customer Relationship Management/企業の営業支援に向けた顧客管理システム)ソリューション「Salesforce」です。現在、世界で10万社以上にサービスを提供し、8,000人以上の従業員がおります。(2013年1月末現在)。

日本では2000年4月に当社、株式会社セールスフォース・ドットコムが設立され、日本郵政グループ、三菱UFJフィナンシャル・グループ、日立グループなどをはじめ、業種・規模にかかわらず数多くのお客様に、営業支援やカスタマーサービス、マーケティング、コラボレーション、クラウドプラットフォーム等のソリューションを提供しています。

書籍「世界を変えるビジネス―戦略的な社会貢献活動を実践する20人の経営者たち(ダイヤモンド社)」にはマーク・ベニオフCEOによる事業活動と社会貢献活動を統合したビジネスモデル、その根底にある企業と社会が相互に貢献しあうことで、多大なる還元を受けるという考え方が紹介されている。

Q.お二人が所属するセールスフォース・ドットコム・ファンデーション(Salesforce.com
Foundation)は、会社全体の社会貢献活動の専門部署という位置づけでよろしいですか?

長野:Salesforce.com Foundationは世界各国の当社グループ会社にあり、米国本社のSalesforce.com Foundationは非営利団体格で活動しておりますが、日本ではNPO格を取得しておりません。いずれにしても、Salesforce.com Foundationが一般的な企業のCSR部門と異なるのは、創業時からビジネスモデルに組み込まれたDNAであるという点です。

一般的にはある程度の収益をあげてから社会貢献を考えると思いますが、セールスフォース・ドットコムはスタート時から会社資源を活用して社会に貢献し、最終的に収益として還元を受ける仕組みを考えました。そのための軸となるのがSalesforce.com Foundationです。具体的な役割は、セールスフォース・ドットコムが創業時から提唱する基本理念「1/1/1モデル」の実践です。

Q. 就業時間の1%、製品の1%、株式の1%を社会貢献活動に向けようというのが「1/1/1/モデル」ですね?

長野:考え方は非常にシンプルで“セールスフォース・ドットコムが有するリソース(会社資源)の1%を提供して、世界をより良くしよう“ということです。その際、当社が直接に社会の受益者に何かするのももちろんですが、社会のために良い活動をしている団体を媒介として貢献する、具体的には非営利団体などを支援する、つまり社会貢献のプロの方々とチームとなって社会を変えていこうという考え方です。

「1/1/1モデル」は、簡単に申し上げると、株式の1%程度の金額を社会貢献活動に助成する、各従業員に就業時間の1%程度を社会貢献活動に使うことを推奨する、製品の1%程度を非営利団体等に無償提供等を行うというものです。

創業当時は実際に資本金の1%を社会貢献活動に助成することを目標にすることから始まりましたが、おかげさまで当社の売上高が順調に推移するなか社会貢献活動自体も広がっており、現在は「1%」はあくまでも一つの目安です。現在までに、Salesforce.com Foundationの助成金総額は世界で4000万USドル以上に達しました。

●セールスフォース・ドットコムの「1/1/1モデル」

http://www.salesforce.com/jp/company/foundation/

●就業時間の1%:
社員に対して年6日(20時間以上)の社会貢献休暇を推奨し、会社として様々なサポートを実施している。
●製品の1%:
非営利団体等へのSalesforce製品の無償提供(11ライセンス以上はディスカウント提供)等を行い、活動の効率化を支援。
●株式の1%:
株式の1%程度を助成金とし、非営利団体に直接交付するとともに、社員のボランティア活動を助成することで非営利団体支援へとつなげている。
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