国内企業最前線

就業時間、製品、株式の1%を社会貢献に

セールスフォース・ドットコムの「1/1/1」モデル

“Customer Company”という考え方

Q. 先ほどからのお話を伺うと、「1/1/1モデル」は社員のボランティア活動、製品・スキルの提供、会社からの助成、3つがバラバラではなく、相互に連動するのですね?

長野:社会貢献というのは、会社としてどこかに助成して終わりではなく、本当に様々な関わり方があると思います。一つの団体に助成し、製品や社員のスキルを使っていただき、さらに社員がボランティア活動にもかかわる、そうした包括的、且つ継続的な支援が理想です。

一方で、助成という資金援助が単年度では十分ではない、複数年度にわたって必要だというケースもあります。いずれにしても寄付して終わりではなく、プロジェクトごとに評価させていただき、本当に私どもが支援すべき先かを常に確認する必要はあります。

丸野:当社が包括的に支援する一例として(社)シャンティ国際ボランティア会との取組みがあります。シャンティさんは長年カンボジア等の難民キャンプに絵本を届ける活動を続けられていますが、震災後、津波で学校が流された岩手県沿岸地域で「いわてを走る移動図書館プロジェクト」をスタートされました。シャンティさんに対しては社員からの発案を契機に、助成による寄付、当社製品の活用、社員ボランティアも行っています。

●いわてを走る移動図書館プロジェクト

http://sva.or.jp/iwate/

(社)シャンティが運営する同プロジェクトでは、岩手県の沿岸部(陸前高田市、大船渡市、大槌町、山田町の仮設住宅を2週間に1度の割合で巡回している。
セールスフォース・ドットコムでは、以前から難民キャンプに絵本を届ける活動に社員がボランティアで参加、クラウドCMS(コンテンツ管理システム)を無償提供して活動を応援してきたが、移動図書館プロジェクトでは、エコバッグが足りないことを聞いた社員が会社に助成申請を行い、エコバッグのアイロンプリントやブックカバーかけなども自ら行った。

Q.ソーシャルビジネスが注目され、社会貢献を仕事にしたい若者も増えています。

丸野:Salesforce.com Foundationは、社会貢献専門の部署、非営利団体等とビジネスをつなぐ役割ですので、学生の皆さんも興味を持ってくださっているようです。

長野:当社の採用面接時に社会的活動にかかわることを期待しているとおっしゃる方も多いそうです。また、先日も米国フォーチュン誌では、“最も働きたい会社”19位に米国セールスフォース・ドットコムがランクされました。理由として、Salesforce.com Foundationの存在を挙げた方も多かったようです。

経験から申し上げると、非営利団体で職員が通常業務に忙殺されてしまうと本来の活動が滞ります。ですから、様々な単純作業を担ってくださるボランティアの皆さんが絶対的に必要です。一方で、企業である程度の年月を経験しないと学べないプロのスキルがあり、ITスキルなどをプロボノという形で提供する事は大きな支援になります。単純作業の手と専門的なスキル、両方が非営利団体には必要で、バランスかなと思います。

Q.貴社の経営トップは“Customer Company(カスタマー・カンパニー)もキーワードに掲げています。

丸野:当社は本業では、企業向けクラウドコンピューティングをベースに、ソーシャルやモバイルといった新たな技術を連携させたソリューションを提供し、顧客企業が新たな形で、そのお客様とより緊密に繋がる(=Customer Companyとなる)ことを支援しています。私どもの部署、Salesforce.com Foundationにとっては非営利団体の皆さんがいわばお客様であり、同様に問題解決に向けてクラウドやソーシャル技術を提供・活用しています。

長野:冒頭にも申し上げましたが、Salesforce.com Foundationは後から出来た部署ではなく、セールスフォース・ドットコムが生まれると同時に存在していました。(近年、クラウドやソーシャルメディアが急速に利用拡大していますが、創業当時から)社会貢献活動が収益活動と両軸であり、相互が連携して一つのビジネスモデル、企業文化とした点が当社の特徴だと思います。

丸野:企業はコミュニティとともに成長していく、その事を無視して企業は成長できない、そのことを経営トップが強く意識した結果が、今のSalesforce.com Foundationの活動につながっているのだと思います。(2013年2月)

株式会社セールスフォース・ドットコムの社会貢献活動について
http://www.salesforce.com/jp/company/foundation/

<関連記事>

未来の街を、電気自動車で走ろう~日産わくわくエコスクール
タニタ社員食堂が出前健康セミナー
廃食油を東京の資源に  TOKYO油田(株式会社ユーズ)
子供たちに‟いきいきした放課後”を  京王電鉄                     
熱中症の季節が終わっても、水分補給は忘れずに  大塚製薬
昼の太陽エネルギーを蓄え、夜のコミュニティを照らす 風憩セコロ 
一人でも多くの命を救うために ファーマライズホールディングス
資源循環型企産業に活路 DOWAホールディングス

TOPへ戻る