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地中熱の活用で自然エネルギーのベストミックスへ

特定非営利活動法人地中熱利用促進協会に聞く

私たちの足下にも使える熱エネルギーがあるとご存知でしたか。それが地中熱。1年を通して温度が安定しており、夏の冷房、冬の暖房に高効率で対応し、とりわけ電気が不足しがちな真夏の日中におけるピークカットに威力を発揮します。NPO法人地中熱利用促進協会の笹田政克理事長に話をうかがいました。

地面の下の熱を利用する

Q なかなかイメージがわきにくいのですが、地中熱とはどのようなものでしょうか。

笹田政克理事長

笹田:自然界にある熱エネルギーというと皆さんは太陽熱をまず思い浮かべると思います。実は太陽熱以外にも利用できる身近なエネルギーが私たちの足下、地面の下にあります。それが地中熱です。

地面の下だとそんなに温度は高くないと思われるでしょう。確かに温泉などと違って、私たちの足下の温度はそんなに高くはないのですが、一年を通してほとんど温度変化がないという特徴があります。

そのため、外気温が30度を超える夏はひんやり冷たく感じますし、冬は暖かく感じるわけです。地面の温度が変わったわけではなく、地上の温度の変化でそのように感じるわけです。これをうまく使っていくのが“地中熱の利用”です。

Q 家庭やオフィスはエアコンで空調していますが、それと地中熱の利用はどこが違うのですか。

笹田:自転車のチューブに空気を入れた経験のある方ならお分かりになると思いますが、気体をぎゅうぎゅう押しもうとすると熱くなります。この原理を応用して、温度を上げたいときは気体に圧力をかけ、温度を下げたいときは気体の圧力を下げて、冬は暖房、夏は冷房に活用しているのがエアコンです。こうした気体の圧縮・膨張と熱交換を組み合わせた原理をヒートポンプとも呼んでいます。

実は、地中熱を利用したヒートポンプもエアコンと原理は同じなのですが、エアコンと違うのは、最初に外から送られてくる液体そのものの温度が、夏は冷たく、冬は暖かいために、非常に効率のよい空調ができる点にあります。地中熱ヒートポンプは、エアコンのような大きな電気を使う必要がないので、省エネでCO2(二酸化炭素)の排出量もぐっと小さくてすみます。

またエアコンでは、排熱により外気温が高まるヒートアイランド現象が問題となっていますが、外気に排熱しない地中熱利用ではヒートアイランド現象を緩和する役割も期待されています。

自らのビルで実証を

Q 笹田さんがお住まいのビルは都心で初めて地中熱を実用化した建物だと聞きました。これまでの利用は満足のゆくものですか。

笹田:私のビルではそれまで使っていたエアコン(空気熱源ヒートポンプ)の更新時期だった2008年に地中熱ヒートポンプを導入しました。RC造り5階建てのビルですが、現在1階から3階までのテナント用のオフィスフロアー(303平米)の空調はすべて地中熱ヒートポンプで賄われています。

導入にあたっては、303平米を冬夏とも効率よく冷暖房できるように熱エネルギーをいかに採取するかということで、いろいろ計算した結果、車2台分の駐車スペース(6m×5m)に深さ75mのボーリングを8本行い、総延長600mの地中熱交換器を埋設しています。

深さ75メートルの地中熱交換井が8本埋められた駐車場の上で

地中熱交換器と屋上のヒートポンプの間を行き来する水の温度を測定する温度計

ヒートポンプは空気熱源との切り替えが可能なハイブリッド型の空水冷式ヒートポンプで、冷房能力が58kW、暖房能力が65kWあります。このシステムには電力計のほか高精度の流量計、温度計が取り付けられており、消費電力のほかに地中熱の利用熱量が計測できるようになっています。

また、建物の入口部分には、2008年以来の運転データおよび環境データが一目で分かるようなモニター機器も取り付けられています。これまでのところ冷暖房の効率を示す成績係数(COP:消費電力1kWあたりの冷房・暖房能力を示す。冷房機器の場合「冷房COP = 冷房能力(kW)÷冷房消費電力(kW)」で表される)は高く、特に冷房の熱負荷が最大となる7月から8月にかけては、成績係数が8を超える高い値がしばしば記録されています。

このビルではどれくらいの熱量が地中から運びだされたかが一目で分かるよう、お風呂のお湯のもつ熱量換算して表示しています。今日(1月18日)は朝の9時から夕方の5時までにお風呂25杯分に相当する熱が利用されました。

地中熱による冷暖房にかかる電力消費を更新前の空気熱源の実績データと比較すると、1年間を通して約半分(省エネ率49%)になっています。意外かもしれませんが、冬場よりも夏場の冷房時の省エネ効果が高く、夏季の省エネ率は69%にもなっています。

運転データおよび環境データが一目で分かるようなモニターも

空気熱源ヒートポンプと地中熱源ヒートポンプの電力消費量比較

電力会社は、真夏の電力消費のピーク時に合わせて膨大な設備を増設してきましたが、地中熱の活用でピークカットも可能であるということが実証されつつあります。

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