国内企業最前線

エナジーグリーン株式会社の取組み電気を選べない、電力会社も選べない。それっておかしくない⁉

グリーン電力証書「えねぱそ」発売1周年トークショーから

トークショー

II. いまこそ原発依存から抜け出そう

鎌仲ひとみさん(映画監督)×吉原毅さん(城南信用金庫理事長)×竹村英明さん(エナジーグリーン副社長)

それぞれの思いを語り合うトークショー(右から城南信用金庫理事長の吉原毅さん、映画監督の鎌仲ひとみさん、エナジーグリーン副社長の竹村英明さん)

社会に変化を起こす受け皿づくりを

鎌仲:昨年、私も「えねぱそ」を買いました。でも、先ほどのお話では、今年も買わないといけないということでしたね。私は映画『ミツバチの羽音と地球の回転』を2009年に完成させてから各地で上映会を開催してきました。上映会の参加者からは、「私たちはなにができるのですか」という質問が毎回のように寄せられます。原発を減らすために何ができるのかと問われたとき、「えねぱそ」はいかがと説明したりもするのですが、説得は難しいのです。

竹村:少しだけ電力の自由化は進みましたが、依然とし10の電力会社から電気を買うという仕組みです。送電線も電力会社のものです。「えねぱそ」を使ってもただちに電気代が安くなるわけでもありません。

鎌仲:私の故郷は富山県ですが、立山の雪解け水を使った小水力発電が有望な地域です。ただ、私が生まれた氷見市というところは、立山の流域から外れています。この前、富山県小水力発電協議会の会長さんを呼んでワークショップをしたところ、氷見には溜池がたくさんあって、砂防ダムがあって、そこから落ちてくる水で発電できることが分かりました。発電に適した場所も見つかりました。地域的な電力供給に俄然やる気が出てきました。

竹村:小規模発電なら地域特性にあったものができるはずです。

鎌仲:「あいのりくん」というのもやっています。こちらは長野県上田市ですが、太陽光パネルを置くときに、上田は日照時間が少ないので、大きな屋根に通常の2倍のパネルを置いてもらい、屋根のオーナーとパネルのオーナーが協力する形にしました。それが「あいのりくん」です。ここに10万円出資しました。

竹村:いろいろチャレンジされていますね。

鎌仲:2012年5月に飯田哲也さんと共著で出版した『今こそエネルギーシフト』が売れて、200万円の印税が入りました。印税の半分は「祝島自然エネルギー100%プロジェクト」に行き、残りの半分は福島の避難所で太陽光パネルを設置するのに使いました。社会に変化を起こす受け皿にと考えています。

竹村:発送電とも電力会社が握っている現状では小さな風穴をコツコツ開けるしかありません。

吉原:お二人の話を聞いていて、「えねぱそ」の試みは時代の先端を行くものだと実感しました。私自身、原発事故が起きるまでは、電気は電力会社がつくるものだと思い込んでいました。私の知らないところで、新しい動きが始まっていたのだと灌漑深いものを感じました。

「えねぱそ」で日本を変える力を育てよう

吉原:「えねぱそ」は、自然エネルギーをつくろうとされる方たちへの援助もされているのですか。

竹村:大きな意味ではそのとおりです。自然エネルギーをサポートする仕組みも徐々に拡充されつつあります。たとえば、市民出資。これで大きな発電所ができます。出資したお金で発電をし、事業が順調にいけば出資者に帰ってくる仕組みもあります。

鎌仲:でも投資にはリスクが伴いますよね。

竹村:2〜3%の利益配分が行われるケースもあります。10万円とか50万円といった大きな投資が前提ですが…。それに対して「えねぱそ」は5,000円からできる個人向けの自然エネルギー支援策です。自然エネルギーの「環境価値」が分かっている方には、応援しているという実感が伝わってくるはずです。「えねぱそ」を買うということは、自然エネルギー育成の保険代を払っているようなものです。掛け捨て保険に近いものかもしれませんが…。

鎌仲:社会の役に立っているというマークがポンポン付く仕組みにしないと。

吉原:わずかなお金で環境に寄与し、社会運動に貢献できるわけですね。

竹村:自然エネルギーを応援することに関わりたい方には、一番手軽に実感できる方法です。長野のおひさま発電所やさいたま市の小水力発電など全国8カ所の発電所と提携しています。

鎌仲:立山・アルプス小水力発電プロジェクトは、全体で11億円掛かりました。個人は1口50万円ですが、水力発電所はどれくらい持つのかと聞くと、「100年」という答えが返ってきました。

竹村:小水力は長持ちします。風車は高いですけど、それでも1基5億円から6億円で建てられます。私たちの場合、市民出資で10億円を集めた実績があります。風車4つくらいで20億円ですが、日本を変える力になるはずです。

吉原:出資で新しい発電所をつくる人と、「えねぱそ」でそれをバックアップしていく人がいるわけですね。それが両輪になっているわけですね。

原発がなくてもやっていける

鎌仲:日本では自然エネルギーが不当におとしめられてきました。「あんなものは役に立たないとか」「あんなちっぽけなものをつくっても原発にはかないっこない」と言われてきました。また、風力発電でつくられた電気は質が悪いといった話もあります。こうした誤解を解くことも「えねぱそ」の役割ではないでしょうか。

竹村:送電線と絡んだ問題です。どういう電気を受け入れるか、電力会社が決められることになっています。風力は送電線の6%くらいしか受け入れません。ところがスペインでは国が供給している電気の60%が風力になりました。ベース電源が風力なのです。一基の風力では不安定な部分もありますが、たくさんの風力なら安定したものになります。日本の電力会社も頭を切り替えてほしいものです。

吉原:私の場合、原発を止めたいというのがきっかけでした。3.11の後、東京をはじめ関東全域が高濃度の放射能汚染を免れることができませんでした。まだ新しい健康被害が出てくる可能性があります。年配者はともかく子供たちを見守る必要があります。

竹村:まだまだ明らかになっていない問題もありそうですね。

吉原:電力会社とその周辺にいるマスコミや学者の皆さんを含め、巨額なお金の前で常識が通用しない仕組みになっていたことが分かります。日本はこんな仕組みの国だったのかと、ぞっとします。

竹村:吉原さんのような方が、アクションを起こされただけでも大きな前進だと思います。

吉原:私たちはCSR経営の一環として、原発に頼らない社会の実現を目指すということで、メッセージをホームページに掲げました。また、金融機関としてできることはなにかと考え、融資活動やお客様への情報提供をとおして、原発に頼らない社会の実現を目指そうとしています。

竹村:原発を止めたら日本は大変なことになるというPRが始まっていますが、経営者の立場からはどのような判断をされましたか。

吉原:節電と節電をバックアップする製品に融資をとおして支援を始めました。また、東京ガスやNTTファシリティーズなどと連携し、電気はPPSに切り替えました。

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