企業とNGO/NPO
難民から教えてもらったレシピが1冊の本に
難民支援協会が『海を渡った故郷の味Flavours Without Borders』を出版2012年、日本への難民申請者数が過去最多の2,545人となった。彼らが自立した生活を送れるよう支援しているのが特定非営利活動法人難民支援協会。このほど難民たちから聞き取った故国の味を1冊の本にまとめた。難民たちの故郷への思いや彼らの日本での生活に理解を深めてほしいという願いが込められている。
15の国・地域から45種類の料理が
「キュウリとヨーグルトのサラダ(クルド)」「ココナッツミルクとカーシュナッツのマイルドカレー(スリランカ)」「イエローライスの冷たいデザート(イラン)」…。B5判100ページを超える冊子には、アジア、中東、アフリカなど15の国・地域出身の難民たちから寄せられた45種類もの料理とそのレシピが並ぶ。フルカラーだから見た目も美しく、興味をそそる仕上がりだ。
この冊子が企画されたのはおよそ3年前。「もう少しハードルを下げて、難民たちの暮らしの一面を知ってもらったら…」という声がきっかけだった。その後、マッコリ―・グループ・ジャパンから資金提供と制作協力があり、企画が始動した。多くの制作協力者から力を得て、足掛け3年を要しこのほどようやく出版にこぎつけた。
一つひとつの料理になつかしい思い出が
表紙は民族衣装を着た女性が料理を盛りつける姿となっている。だが彼女の顔は写らない。表紙を開くと彼女が着る民族衣装は、エチオピアに住む母親から送られてきたものであることがわかる。
「母のドレスを送ってもらっています。『洗わずに送って』と必ず伝えます」とあるからだ。服に残ったかすかな母の残り香から、母のこと故郷のことを彼女は思い出しているのだ。
この表紙を撮影したのは、父親がフランス人、母親がベトナム人の写真家・アンソニー・トランさん。彼自身も5歳のときにフランスに渡った経験を持ち、現在は日本で活躍する。
各ページには料理のレシピ作成に関わった一人ひとりの難民のみなさんの思いなどがコラムの形で記載されている。ある難民は離ればなれに暮らす故国の母親や妻からレシピを聞いたと語る。
巻末には国境のない世界地図があり、そこにレシピ作成に関わった難民たちの出身国・地域が記されている。トルコやイラクにまたがるクルドは民族であっても国家はない。そうした事情に配慮したものだ。
こうした配慮と手づくり感でこの本の価値は一層高まっている。
『海を渡った故郷の味 Flavours Without Borders』 http://www.flavours-without-borders.jp/ |