CSRフラッシュ

仙台市「企業とボランティアの協働フォーラム」東北で生きる~企業の現場から見た東日本大震災

震災当事者の目線で継続する復興への取り組み、CSR活動 

3.専門性を発揮する“本業を活かした支援”

日本アイ・ビー・エム株式会社

迅速な初動体制とIBMならではの支援

震災当日、日本IBMの対応は実に素早かった。地震発生後、わずか4分で東京本社の災害対策本部が動きだし、仙台事業所及び全国の拠点を結んで情報収集を開始、翌日には救援物資や、納品先への補修部品の供給を始めた。

こうした物的支援と併せて活用されたのがクラウド・コンピューティング。IBMのスマート・ビジネス・クラウド環境を利用して、被災した行政や公共性の高い活動を行うNPOに対して、3か月間無償で仮想サーバを提供するもので、発災後2日目にはその提供を始めた。

その後の避難所への支援活動でも、2004年のスマトラ沖地震の際に開発された「Sahana(サハナ)」という災害時の救援情報共有システムをオープンソース・コミュニティと共に急ピッチで日本語化し、住民の被災状況やニーズの把握、物資の支援状況の情報を電子化、その後の支援に結び付ける仕組みを提供した。正にIT企業IBMならではの支援だった。

本業を軸にした支援──

全てのインフラが絶たれ混乱を極めた現地で、待った無しの緊急性が必要とされる時に、企業は何ができるのか? IBMの答えは本業と一体化した支援だった。

社会貢献プログラム・マネージャーの藤井恵子さんは言う。「専門性を活かした社会貢献(=プロボノ活動)こそが大事」。企業が大きくなればなる程、ステークホルダーへの説得は難しくなっていく。株主や取引先、従業員に対して利益還元できる筈の資金を社会貢献に使う事をどうやって納得していただくのか。その鍵は、「本業を活かす」事であると。

IBMの創業者が唱える「良き企業市民であるため」には、IBMが本業とする高度なITノウハウを活用して社会の課題を解決していく事が必要だ。そしてこの事こそが、社会から信頼され、自らの価値をも高めていく事になるのだ。IBMは沿岸部の市町村へ社員のボランティア派遣も行い、がれき撤去や清掃活動も行った。しかしこうした人的活動と並行して力を入れた「本業を活かした支援」は、甚大な被害のある今回の震災に於いて、継続的な支援をするための方策である事を示してくれた。

今後の課題

こうした被災地支援をしながら、IBMは今後の課題への解決策も模索している。本社を東京に於きながら、いかにして被害の大きかった三陸沿岸部との距離感を縮めるか、加えて、時間と共に薄れていく人々の関心・・・。単に一企業の問題と言うには大きすぎる課題ではあるが、「地域社会と連携しながら解決策を見出していきたい」と藤井さんは考えている。

◎IBMの「CSRの取組み」についてはコチラ

http://www-06.ibm.com/ibm/jp/responsibility/index.html

◆フォーラムを通じて見えてきた課題とヒント

今回報告された企業は、皆大手。故に社会的責任も大きいし、簡単にCSR活動もできる、と思われる向きもいるかもしれない。しかし大手ならではの課題もある。大企業だけに説得しなければならない相手が多く、実行までに多くの調整が必要だ。一方、活動に必要な地域コミュニティとの繋がりは、地元中小企業ほど無いかもしれない。今回のフォーラムでは、そうした課題も含め、今後のCSR活動の有り方も提唱された。

ステークホルダーとの関わり

CSR活動を行うには、株主や取引先、従業員の理解が必要だ。時にはプロジェクトを通すために、社内で上司を説得する必要もあるかもしれない。人・もの・資金、これらの企業財産を費やす事が、その後の企業価値を上げる事を十分に説明しなければならない。

本業を活かした継続的な活動

緊急性の有る無しに関わらず、社会貢献活動は継続的でなければならない。そのためには、無理の無い支援が必要になってくる。無理をして一度の大きな寄付をするより、何年にも亘って支援を続ける事が大事なのだ。そしてこの継続的支援を支えるのは、紛れもなく本業だ。本業が活性化する事により支援が成り立つしくみを作る事こそが、継続的な活動の基礎となる。

日頃からの準備

いざという時に行動を起こすには、日頃の社員のマインド作りや、社内の組織体制、地域団体との繋がりが不可欠だ。「普段やっている事はできる、やっていない事はできない」これまで様々な企業からの支援とともに復旧・復興活動を行ってきた主催者の仙台市社会福祉協議会の報告で語られた言葉だ。災害対応には地域側にも受け入れる準備や心構えが必要であり、企業も専門的な人材の育成や、平時からの地域との繋がりが無ければ難しい。仙台では、地域に根差した活動を続けている若手経営者の団体 青年会議所が市と災害連携協定を結んでいたお蔭で情報が錯綜した混乱の中でも迅速な対応ができたという。こうした団体と連携することで企業の支援が更に効率的に行われることを期待したい。

CSR活動をPRする事

今回の震災では、多くの企業や団体が震災復興に尽力してくれた。しかしどれだけの活動が人々に認知されているだろう? 宮城大学の野村尚克氏によれば、多くの企業がCSR活動をPRする事で偽善的だと批判される事を恐れ、自社のホームページなどで控えめに報告が行われた程度だという。この事に対し野村氏は「良い活動や良い企業が評価されなければ、結局支援は続けられない。恥ずかしがらず広報し、社会の理解を得る事は継続への鍵にもなる。加えて、活動を報告する事で、まだその問題が解決されていない事を社会に気づかせる事もできる」と主張する。企業には是非恐れずに広報をして頂きたいと思う。

今回のフォーラムでは、地元に居ながらこれまで知らなかった企業の復興支援事例を聞く事ができた。こうして被災地のために知恵を絞り、力を尽くしてくれる人たちを見て、どれだけの東北人が勇気をもらった事だろう。こうした動きを参考に、社会全体で被災地を支える活動の輪が広がってくれたら、と願わざるを得ない。(2013年3月)

<関連記事>

就業時間、製品、株式の1%を社会貢献に
未来の街を、電気自動車で走ろう~日産わくわくエコスクール
タニタ社員食堂が出前健康セミナー
廃食油を東京の資源に  TOKYO油田(株式会社ユーズ)
子供たちに‟いきいきした放課後”を  京王電鉄                     
熱中症の季節が終わっても、水分補給は忘れずに  大塚製薬
昼の太陽エネルギーを蓄え、夜のコミュニティを照らす 風憩セコロ 
一人でも多くの命を救うために ファーマライズホールディングス
資源循環型企産業に活路 DOWAホールディングス

トップへ
TOPへ戻る