企業とNGO/NPO

東北復興リーダーを企業と連携して支える企業リソースを自立的復興に活かせ(1)

みちのく復興事業パートナーズとETICの取り組み 〔前半〕

東日本大震災から2年。いま被災地の復興には、意欲ある有能なリーダーの存在と、それを支援する外部の力がますます重要になっています。このほど復興事業に取り組むNPO法人ETICと企業5社からなる「みちのく復興事業パートナーズ」の関係者らが集まり、活動報告会が開かれました。1回目は被災地で復興事業を進める地域のリーダーたちの取り組みを聞きました。

みちのく復興事業パートナーズとETICの取り組み 〔後半〕
~企業の取り組み

演壇に並んだ復興事業のリーダーたち。右から福島復興ソーラー・アグリ体験交流の会 半谷 栄寿さん、株式会社長谷川建設 長谷川 順一さん、一般社団法人ふらっとーほく 松島 宏佑さん、司会のNPO法人ETICの山内幸司さん

復興事業に取り組むリーダーたちの思い

ボランティア活動をとおして地域のファンを育てたい

一般社団法人ふらっとーほく
代表 松島 宏佑さん

1986年、宮城県白石市生まれ。大学卒業後、まちづくり最先端の島、島根県隠岐郡の㈱巡の環(めぐりのわ)に入社。震災を機に実家のある宮城県に戻り、亘理郡亘理町で「ふらっとーほくー温泉宿に泊まってボランティアー」を実施し、述べ800人以上のボランティアを集める。2012年1月に「一般社団法人ふらっとーほく」を設立し、市民主導の防潮林と農地を中心とした沿岸部の復興事業「わたりグリーンベルトジェクト」事務局長を担う。
●亘理町グリーンベルトプロジェクト
http://michinokushigoto.jp/archives/2941

(社)ふらっとーほく代表 松島 宏佑さん

亘理(わたり)町は宮城県南部に位置する沿岸の町。緑豊かな田園地帯でイチゴ栽培がさかんに行われ、年間40億円ほどの売上がありましたが、100haの農地のうち96haが津波の被害を受けました。

現地には幅300メートルほどの防潮林があり、住宅や農地を守ってきましたが、それも大きな被害を受けました。私たちは町の復興未来プロジェクトに基づき、町民や専門家と協力して防潮林予定地の計画策定を行い、津波に負けずに生き残った樹々から種を取って苗木を育て、市民とボランティアの手で数十万本の植樹を実施して100年生きる森の再生を目指しています。

震災復興には、地域コミュニティー主体の自立的な動きがなによりも必要で、住民自らがつくった復興計画マスタープランを大切にしています。ただ、現地では地域の人口減少が進んでおり、交流人口を増やしながら、地域のファンづくりを行い、持続的な広がりを育てていきたいと考えています。

自分たちの町づくりにふさわしいソフトを磨く

株式会社長谷川建設 代表取締役社長/
なつかしい未来創造株式会社取締役
長谷川 順一さん

1980年陸前高田市生まれ。震災で社屋や機材を流失、大切な社員も失う。瓦礫処理など復旧作業に加え、仮設市庁舎や再建をかける企業の社屋建設などを担う。市内全仮設住宅の管理業務も担うなか「復興は建物を建てることではなく、人の心を立てること」であると実感。住民との対話を重ねながら、ともに復興に向けて歩んでいる。
●なつかしい未来創造株式会社
http://www.natsu-mi.jp/

なつかしい未来創造㈱ 取締役 長谷川順一さん

創業53年の建設会社が本業です。なつかしい未来創造株式会社は、震災後につくった復興のためのまちづくり会社です。そこで行われる自然資本タウン事業をとおしてバイオマス熱供給、木材のカスケード利用、市場創造などに取り組んでいます。

東日本大震災では、会社のすべてがなくなり、従業員も4人ほど犠牲になりました。なぜ、電気に関連した事業を始めようとしたかというと、震災直後からエネルギー問題に社会の関心が集まっていたからです。岩手県はこれまでも木質バイオマス利用の動きがあり、それを使った発電施設がつくれないかと考えました。

震災直後1か月後から全国の施設に視察に行き、そこで見えたのは、被災地が抱える条件は同じではないということでした。陸前高田らしい復興の仕方、エネルギーの新しい活用方法があるのではないかと考えました。

木質バイオマスというのはどうしても大規模な施設に傾きがちですが、個人レベルで見るとバイオマスという言葉だけが一人歩きして、市民一人ひとりは分かっていないという現状で、個人に直接働きかけることが必要でした。木質ペレットの事業を始めるきっかけとなりました。

建設業は街づくりの最前線に関わる仕事です。ただ、それはハードにすぎません。いま注目しているのはソフトの部分にいかに関わるかだと思います。

子供たちの明日につながる“場”をつくる

一般社団法人 福島復興ソーラー・アグリ体験交流の会
代表理事 半谷 栄寿さん

1953年福島県南相馬市生まれ。1978年に東京電力に入社。1991年に環境NPOオフィス町内会を設立し代表を務め、森林の健全化に取り組む。2008年より2010年まで東京電力執行役員。2011年9月に福島復興ソーラー株式会社代表取締役となる。2012年4月より一般社団法人福島復興ソーラー・アグリ体験交流の会の代表理事を兼務して現在に至る。
●南相馬ソーラ・アグリパーク
http://minamisoma-solaragripark.com/

(社)福島復興ソーラー・アグリ体験交流の会代表理事 半谷栄寿さん

2010年6月まで、東京電力で新規事業担当の執行役員を務めていました。皆さんにお詫びをするとともに私にも責任があると考えています。

私は南相馬市の出身で、どうしても地元の復興に役立ちたいということで、復興事業に取り組むことにしました。今年3月10日に南相馬市で500㎾の太陽光発電所と植物工場2棟が完成しました。500㎾の電気のうち100㎾は植物工場に利用し、地産地消の電気として活用します。

太陽光発電所は、私が兼務している福島復興ソーラ―株式会社が、植物工場は南相馬市が国の補助などを受けて建設しました。

太陽光発電所は、1ⅿ×1.5ⅿの太陽光パネルを約2000枚敷き詰めました。被災地における太陽光発電の先駆けになるとともに、子供たちの体験学習に活用してもらい、子供たちの成長支援と交流をとおして、将来の人材育成を目指します。

2つの施設は、子供向けの職業体験型テーマパークであるキッザニアの協力を得て、体験学習の場に活用します。この仕組みをグリーンアカデミーと呼ぶことにしました。子供たちも大人になったら社会の役に立ちたいと考えています。自ら考え、行動できる社会人の成長に結び付けたいと思います。

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