企業とNGO/NPO

東北復興リーダーを企業と連携して支える企業リソースを自立的復興に活かせ(2)

みちのく復興事業パートナーズとETICの取り組み 〔後半〕

被災地での経験が、人材を育てるきっかけに

株式会社損害保険ジャパン CSR部 リーダー 酒井 香世子

地震直後は地震保険のお支払いで社員3,000人が東北に入りまして、いち早い保険金のお支払いに取り組みました。震災から3か月経過した時点で業界全体でおよそ9割のお客様にお支払いすることができました。義援金募集やがれき撤去のボランティアにもたくさんの社員が参加しました。

継続的な被災地支援に企業のリソースを活用できないかと考えているときに、「みちのく復興事業パートナーズ」のお声掛けをいただきました。パートナーズの一員として私どもがやったことの1つに社員派遣プログラムがあります。業務の一環として社員を被災地に派遣するという試みです。

派遣先は、ETIC.が「右腕プロジェクト」でリーダーを派遣されていたキャンナスという団体で、7月〜9月の3か月間、約10日間ずつ計10名を送りました。募集にあたっては上司の許可をとってかならず応募するようにという条件を出しました。対象は主任クラス~課長代理クラスの若手中心の中堅社員としました。

キャンナスは訪問看護に取り組むNPOで、看護師の資格をもった方が地域の支援に入ってお年寄りの個別訪問などを行っています。大勢のナースがボランティアで参加しており、現場に出て一人でも多く被災者を支えたいという思いが強く、資料を整理したり、紙で保管されているカルテの整理に時間を割く余裕がない状況でした。そこで私たちは事務処理や経費管理のお手伝いをしました。

社員はピンクのTシャツを着て活動をしました。それが目立ったためか、銭湯の営業時間に遅れても特別に入れてもらえることもありました。社内で派遣報告会をしましたところ、役員も含めて100名ほどが参加しました。会社の名刺などは使わないわけですが、これまでの会社経験で培ってきたスキル・ノウハウを総動員して一人ひとりが自ら考え、行動し、大きく成長して戻ってきてくれたと感じました。今後、派遣社員がさまざまなポジションで活躍することで、組織に好循環の波及が生まれると期待しています。

訪問看護という保険とも近い分野で学ぶことも沢山あったようです。今後、新商品やサービスの提供に活かしたいと語っていました。NPOにふれる機会がなかった社員がほとんどでしたので、コミュニケーション力が上がったという声も出ていました。

パートナーズに参加して良かったなと感じることはETIC.さんのネットワークを通じてタイムリーに被災地のNPOや他社の取り組みが把握できるところです。今後は、パートナーズ参加企業同士の連携も進めていきたいと思っています。

コミュニケーション力で「伝えるコツ」を伝える

株式会社電通
社会貢献・環境推進部 専任部長 中村 優子

電通の社会貢献の基本方針は、“コミュニケーションの力を社会のために”。この方針を元に、自主プログラムを2つ(「伝えるコツ」「広告小学校」)、社員参加プログラムを2つ進めています。

社会貢献セクションの人数は少ないのですが、現場で活躍するクリエイターやプランナーなど専門スキルを持った社員に支えられていることで、ユニークなプログラムにつなげています。

今、被災地の現地では、NPOなどを中心にキャパシティビルディング(能力強化・向上)という言葉が盛んに語られるようになりました。私たちは3県で計11回、NPOさんに「伝えるコツ」プログラムを提供しました。嬉しかったのは、受けてくださった方からは電通の支援は上から目線のアドバイスではなく、自らの気づきを引き出してくれると評価されたことです。

宮古市では、子どもたちを対象に「広告小学校」を活用したプログラムを行いました。子どもたちが地元のホタテや伝統芸能を自分たちで紹介して継承することで、大人たちを励ましたいということを、このプログラムで支援しました。

南三陸町では、ETIC.「みちのく復興事業パートナーズ」を通して、明るく前向きで求心力のある入谷公民館の方と出会い、日本ユネスコ協会連盟と一緒に、「南三陸の森 希望のポストプロジェクト」を立ち上げました。私たちは以前から「ユネスコ世界寺子屋運動」の支援をしていました。これは書き損じたハガキを寄付することでアジアの識字教育を支援するもので、11枚の書き損じハガキで、カンボジアでは子どもが1か月学校に行くことができるのです。

現在は、南三陸の間伐材を活用したポストを当社のデザイナーとつくっているところです。これを全国のユネスコスクールなどに、企業や団体の支援をいただいて設置したいと考えています。間伐材を使うことで、南三陸町の資産を活用することになると同時に、アジアと南三陸町を結ぶプログラムということにもなります。皆さんにも、是非ご協力いただければと思っています。

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