企業とNGO/NPO

東北復興リーダーを企業と連携して支える企業リソースを自立的復興に活かせ(2)

みちのく復興事業パートナーズとETICの取り組み 〔後半〕

東日本大震災から2年。いま被災地の復興には、意欲ある有能なリーダーの存在と、それを支援する外部の力がますます重要になっています。このほど復興事業に取り組むNPO法人ETIC.と企業5社からなる「みちのく復興事業パートナーズ」の関係者らが集まり、活動報告会が開かれました。2回目は復興事業を支援する企業の皆さんの取り組みを聞きました。

みちのく復興事業パートナーズとETICの取り組み〔前半〕
~地域リーダーたちの取り組み

みちのく復興事業パートナーズに参加する企業の皆さん。左から味の素の小口桂子さん、花王の嶋田実名子さん、損害保険ジャパンの酒井香世子さん、電通の中村優子さん、ベネッセホールディングスの龍千恵さん

復興に向けて企業が取り組むべきこと

  1. 食と語らいをとおして、“心と体の健康づくりを応援する”/味の素株式会社
  2. 現地のニーズに寄り添った活動に向けて/花王株式会社
  3. 被災地での経験が、人材を育てるきっかけに/株式会社損害保険ジャパン
  4. コミュニケーション力で「伝えるコツ」を伝える/株式会社電通
  5. 東北の未来を担うこどもたちを応援したい/株式会社ベネッセホールディングス
  6. 被災地には“イノベーションとモチベーション”の手がかりが/日本経済新聞社

食と語らいをとおして、“心と体の健康づくりを応援する”

味の素株式会社 CSR部 小口 桂子

味の素グループは“食”と“健康”に関わる企業として2点の柱で復興支援活動を行ってきました。1つは食と語らいを通じて“心と体の健康づくりを応援する”、もう1つは“地場産業の支援をする”ということ。
私たちは、参加型の調理会である「健康・栄養セミナー」を被災地各地で開いています。現地では仮設住宅を中心にコミュニティが崩壊していたりしますので、移動式調理台を仮設住宅の集会所等に持ち込んで、“一緒に調理をし、食べ、そして語らう”ということをやってきました。メニューのポイントとしては、簡単にできる、地域の食材を使う、栄養バランスがよいというところを心がけています。

運営体制ですが、行政、社会福祉協議会、食生活改善推進員連絡協議会、NPOなど80を超える団体と一緒に行っています。NPO法人ETIC.さんに紹介いただいたところもあり、看護師、保健師、栄養士との新たな連携のモデルも生まれてきています。この活動を通じて築かれたネットワークは、味の素グループにとっても貴重な財産だと考えています。

セミナーの内容は地域によって課題がさまざまですので、たとえば「男の料理教室」という男性向けのセミナーや「親子料理教室」、また高血圧対策として減塩メニューや運動も取り入れたセミナーの実施も数多く実施しています。また、グループのリソースを活かすという意味で、AGFコーヒー教室や美容教室も行っています。

参加者の方々からは、「食事を作るのも億劫になっていたけれど、皆で作って食べるとやっぱりおいしい」「こんなに笑ったのは久しぶり」「狭い仮設住宅だけれど、習ったメニューを作ってみたい」といった声を多数いただいています。

現地のパートナーの方からは、「仮設住宅のイベントの中では最も参加者が多い」「食はみんなを元気にすると実感した」などの声をいただきました。

これまでにこの「健康・栄養セミナー」を24市町村で約300回開催し、5,000名以上の方に参加いただきました。従業員も600名が関わりました。ボランティアに参加した従業員からは、「人を元気にすることができる“食”を通じたこのような活動を、地道に継続しているこの会社で働いていてよかったと改めて感じた」という声も数多く寄せられています。

今後の復興支援については、グループ従業員を継続的に巻き込みながら、復興住宅への移転が完了するまで地域に寄り添って、“心と体の健康づくり”を応援し、元気な地域社会づくりに貢献し続けていきたいと考えています。

現地のニーズに寄り添った活動に向けて

花王株式会社 コーポレートコミュニケーション部門
サステナビリティ推進部長(兼)社会貢献部長 嶋田 実名子

花王グループは震災直後に生活必需品をできるだけ多くの被災された方々にお送りすることから支援を始めました。仮設住宅が設置されてからは、夏と冬の2回にわたり被災3県の仮設住宅全戸に洗剤やシャンプーなどの詰め合わせを配布しました。また、今回の震災はとても大きかったのでグループ全体で取り組みました。

一方、私ども社会貢献部では災害弱者に焦点を当てて、災害物資が届きにくい外国人妻たちのコミュニティや障害のある方の施設への生活物資配布、女性特有の災害によるストレス回避のための活動などを行う、NGO/NPOと協力して、物資による支援活動をしました。

復旧から復興に向けて、なにをするか社内でも議論がありました。グループ全体で行う活動としては、福島、宮城、岩手3県の地元新聞社と一緒にヒマワリの花を咲かせ、東北に笑顔を届ける「スマイルとうほくプロジェクト」を行っています。

いま産業復興が大事なのだと聞きます。花王の業態ですとそこに参画するのはなかなか難しいわけです。ETIC.さんと若者の起業家支援を3年前から行っていることから、長く支援をするには一つの企業だけの支援ではなく、いくつか企業が集まって、みんなで東北を応援するというスキームができないだろうかと考えて、「みちのく復興事業パートナーズ」をつくることになりました。

この枠組みの中で、花王の事業領域で現地の実質的な復興のお役に立てることはなんだろうと考えました。グループの中に花王プロフェッショナル・サービスという会社があります。施設や食堂、スーパーの厨房などの事業者に衛生管理のコンサルティングをするとともに、業務用の製品を販売しています。感染症や食中毒予防などの講習会も行っていますので、ETIC.さんにお願いして南三陸で衛生管理の講習会を行いました。

被災者でお弁当屋さんやカフェを始められる方も多い中で、喜んでもらいました。ソリューションの力が現地に活かせるということで、今後も続けていきたいと思います。

阪神・淡路大震災以降、経団連の中にある社会貢献担当者懇談会という企業の社会貢献実務者達でつくる会合で、企業の被災地支援をテーマに研究してきました。企業の連携とNGO/NPOとの連携がテーマでした。そろそろ志を持った企業同士が自主的に集まって支援に関わるということがあってもよいと思いました。そのひとつの試みが、「みちのく復興事業パートナーズ」です。数社で支えているというのも被災者には心強いのではないかと思いました。被災地支援の進化形にしたいと思っています。

トップへ
TOPへ戻る