企業とNGO/NPO

社会を変える“明日のリーダー”を育てる

アメリカン・エキスプレスのNGO/NPOとの連携

社会貢献活動に「明日のリーダー育成」を掲げるアメリカン・エキスプレスは、日本におけるリーダーシップ/サービス・アカデミーの卒業生らを招いてアカデミー発足5周年記念イベントを開催。来日したアメリカン・エキスプレス財団トップへのインタビューと先頃行われた第3回「アメリカン・エキスプレス・サービス・アカデミー」の模様をお伝えします。

  1. Part 1: アメリカン・エキスプレス財団代表 ティモシー・マックリモンさんに聞く
  2. Part 2: 第3回「アメリカン・エキスプレス・サービス・アカデミー」
  3. PART1:パートナーシップの基本は信頼、尊敬、正直さ

    アメリカン・エキスプレス財団代表 ティモシー・マックリモンさんに聞く

    アメリカン・エキスプレス財団代表ティモシー・マックリモンさん

    Q1 3つのテーマ「多様な文化遺産の保護・修復」「地域社会への貢献」「明日のリーダー育成」で社会貢献活動を展開されていますが、どのような基準の下、何を目標に生まれたものでしょうか。

    マックリモン:私どもアメリカン・エキスプレスは金融ビジネスを展開すると同時にカード会員の旅行の手配をするなど観光や旅行ビジネスとも深い関わりを持っていますが、自らを「サービス・カンパニー」と捉えています。

    1つめのテーマである「多様な文化遺産の保護・修復」は、観光や旅行と深い関わりがあります。私どもは1974年にギリシアでアクロポリスの修復に関わり、その後アメリカでも自由の女神の修復を支援するなど、世界各地で歴史的な場所・遺産の保護・修復に力を注いできました。このような活動を通して、カード会員に世界の素晴らしい歴史・文化遺産を訪れてほしいという想いがあります。

    2つめの「地域社会への貢献」も私どもの事業と深く関わっています。NPOや地域の人々と連携し、公園の清掃活動などからスタートし、最近では社会的弱者に対する保護・支援活動に広げています。こうした地域における活動では、社員が持つ独自のスキルを活かすことも奨励しています。こちらも50年くらいの実績があります。

    3つめの「明日のリーダー育成」は、一番新しいテーマです。私どもが世界のNGO/NPOを見ていて気づいたのは、活動の大義名分や情熱はあっても効果的なリーダーシップを見いだせていないというものでした。私どもはそのニーズを満たしていこうと考えました。若い皆さんが育ち、しっかりしたリーダーになれば、社会により大きなインパクトを与えることができます。

    Q2 今回の来日は、リーダーシップ育成プログラム「アメリカン・エキスプレス・アカデミー」の5周年記念イベントに参加するためだそうですが、日本でのこれまでの歩みは満足のいくものだったでしょうか。

    マックリモン:日本では「NPOの次世代リーダー育成」を目的したアメリカン・エキスプレス・リーダーシップ・アカデミーがこの5年間で114名、「若手社会起業家の育成」を目的としたアメリカン・エキスプレス・サービス・アカデミーがこの3年間で90名、それぞれ卒業生を出しました。

    リーダーシップ・アカデミーは、主にリーダーに求められるマインドセットやスキルを学ぶプログラムです。サービス・アカデミーは、NPOや社会起業家が日常の取り組みではなかなか思いつかないような「お客様へのサービス」をテーマに掲げています。こうした試みによって、アメリカン・エキスプレスも、若い皆さんのサービスに対する斬新な発想を知ることができます。

    参加者からは、「自分の考え方が180度変わるような素晴らしいプログラムでした」とか、「これからの仕事に活かすことができる」といううれしい反響をいただいています。

    こうした成果を踏まえ、私どもにはNGO/NPOセクターのリーダー育成に向けた多くの要望が寄せられていますが、フェーストゥーフェースのリーダー育成研修プログラムに加えて、オンラインの活用なども模索しています

    Q3 NPOなどの人材育成には日本企業もなかなか踏み切れていません。CSRの専門家としてこのあたりをどのように見ていますか。

    マックリモン:日本とアメリカとの違いでいえば、アメリカには大学でNPOのマネジメントに関するコースなどが設けられています。学部生や大学院生がそこで学べるようになっています。NPOセクターで早くからトレーニングも受けられるのです。ただし、NPOに入った後、継続的にNPOリーダーを育てていこうというプログラムはアメリカにもありません。私どもがNPOなどのリーダー育成に長期に渡って力を注ぐのには、そうした背景があります。

    実は、こうしたプログラムの成果を具体的に計ることはなかなか難しいのです。日本企業がこのようなプログラムを実施していない理由はそうしたところにあるかもしれません。社内で承認を取って予算化するのはそう簡単ではないでしょう。

    Q4 明日、先の東日本大震災で被害を受けた千葉県香取市佐原地区の町家の修復の視察にも出かけるとうかがいました。

    マックリモン:「多様な文化遺産の保護・修復」の取り組みにおける私どものパートナーにワールド・モニュメント財団があります。世界各地の歴史的な場所・建造物を保存しようというテーマのもと、緊急性のある場所・建造物のウォッチリストを作成しています。アメリカン・エキスプレス財団が設立スポンサーとなっている「ワールド・モニュメント・ウォッチ」というプログラムを共同で実施していますが、昨年は佐原の歴史的町並みが選ばれ、その修復・保存活動に20万米ドルを支援しました。

    佐原の町家は、先の大震災で瓦や壁や塀が崩れるなどの被害を受けましたが、壊滅的な被害は免れました。私どもが修復作業のお手伝いをすれば元通りの美しい街並みに戻すことができると確信したうえでの支援でした。

    千葉県香取市の佐原地区を視察する

    Q5 NPOや社会起業家など日本の意欲ある若者たちにメッセージをお願いします。

    マックリモン:若い皆さんからは、「企業と良好な関係を築いていくにはどうしたらよいのでしょうか」という質問をしばしば受けます。私の答えは、「良好な関係を築いていくには、信頼があって、尊敬があって、さらには正直さが必要です」というもの。

    企業が求めているのは本当の意味のパートナーシップです。NPOの皆さんも、企業から何をもらえるかだけではなく、自分たちもその企業に何ができるかを考えていただくことが大切です。互いに有益な関係であれば、連携も長続きします。

    ●ティモシー・マックリモン (Timothy J. McClimon)

    アメリカン・エキスプレス財団代表。アメリカン・エキスプレス・カンパニーのコーポレート・アフェアーズ・アンド・コミュニケーションズ部門にてCSR統括副社長を兼務。アメリカン・エキスプレスの世界中の社会貢献活動および社員向けのコミュニティ・プログラムを統括しています。

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