自転車のルール もう一度、学びませんか?

健康志向の高まりや環境への配慮から、場広い年齢層で自転車の利用が広がっている。
一方、自転車が加害者や被害者になる人身事故も増えている。このほど川崎市高津区で「自転車ルール指導者研修会」が開かれた。これを機会に自転車の正しい乗り方をおさらいするために、本レポートをご覧いただきたい。

講師の高橋大一郎さん

講師の高橋大一郎さん

自転車が絡む人身交通事故は27%

この日「自転車ルール指導者研修会」が開かれたのは、150万都市川崎市の行政区の一つである川崎市高津区。区内の人身交通事故はこの1年で427件、昨年に比べると142件減少したものの、うち116件が自転車の絡む人身事故とのこと。その比率は27%に及びます。

市民への自転車ルールの徹底が必要との認識から、この日の講習会は高津区役所と持続可能な地域交通を考える会 (略称SLTc)が共催したもの。区内の学校の父兄や企業関係者ら約50名が参加して行われました。

今回の講師は、日本中を自転車で走るのが趣味と語る高橋大一郎さん。現役の指定自動車教習所指導員でもある高橋さんが監修した『自転車ルール教本』をテキストに約2時間の講習が行われました。以下はその一部です。

講習会風景

講習会風景


司会を務めた主催団体の1つ高津区役所危機管理・地域安全担当の窪田健吾さん

司会を務めた主催団体の1つ高津区役所危機管理・地域安全担当の窪田健吾さん

正しいルールの再確認

高橋さんによれば、自転車で安全に走るポイントは、「車道左側を走る」「クルマとコミュニケーションをする」「クルマもルールを守る」の3つなのだそうです。

Point1「車道左側を走る」

道路交通法では、自転車も車両です。車道の左側を走らなければなりません。わが国では例外的に歩道を通ることが許される場合があるものの、本来、歩道は歩行者の通行帯空間ですから、自転車は徐行(ゆっくり通ること)が義務づけられています。そこを走って事故になれば100%自転車の側の責任になります。

高橋さんによれば、歩道を走る自転車はクルマからは見えにくく、交差点などでの自動車との接触事故につながりやすいとのこと。むしろ、車道の左側を走る方が自動車の注意喚起につながり、事故のリスクは格段に小さくなるとの指摘でした。

なお、やむを得ず歩道など歩行者の側を走る場合は、「安全な間隔を空ける」「すぐに止まれる速さで徐行する」ことが義務づけられています。

Point2「クルマとコミュニケーションをする」

車道を走ったことがある人ならお気づきだと思いますが、車道を走る場合、駐車する自動車をいかに避けるかが一番悩ましい問題です。

高橋さんによれば、その際には「しっかり周りを見て」「自分が先に行くのか待つのかを周りにしっかり知らせ」「もう一度確認してから行動する」ことが大切だと話していました。

駐車車両がある場合は、急にドアが開いたり、人が飛びだしたり、急に発進する危険もあるので、車両との間隔を空け、速度は控えめにして追い越すことが大切だそうです。

全国を自転車で旅することの多い高橋さんは、クルマとコミュニケーションを取ることで、車道左側を安全に走ることができたそうです。

Point3「クルマもルールを守る」

高橋さんは、自動車の側にもルールの徹底を呼び掛けています。違法駐車が自転車の走行を邪魔したり、無理な追い越しが自転車との接触事故につながりやすいからです。自動車が衝突した場合、速度の2乗×自動車の重量が衝突された相手側のダメージになります。速くて大きい車両ほど大事故になりやすいわけです。

道路交通法では、歩行者や自転車に道を譲らせる目的でクラクションを鳴らすと罰則が科せられるとのお話も。

道路交通法では、歩行者や自転車に道を譲らせる目的でクラクションを鳴らすと罰則が科せられるとのお話も。

リスクを避けるコツ

私たち日本人の多くは、自転車は歩道を走るのが常識だと思ってきました。実は自転車が歩道を走るようになったのは1970年代からで、自動車が激増したために、自転車の利用者を守るために例外的に取られたルールにすぎません。

わが国では1960年代までは、自転車は車道を走っていました。2011年の警察庁の通達では、改めて「自転車は車道」となり、やむを得ない場合のみ歩道を徐行で通ることを認めています。

自転車で車道を走っていて、一番困るのは大型の自動車との付き合い方かもしれません。特に定期的にバス停に止まる路線バスは、子どもからお年寄りまでが乗る乗り物だけに、保護しなければならない対象です。

路線バスなどの大型車には運転手から見えなくなる死角もあるだけに、「離れて走る」「左から抜かない」「飛びださない」といったルールは必ず守りたいものです。

川崎自転車講習会5

先進事例を知る

自転車の走行空間の整備はわが国でも始まっています。本誌でも紹介した埼玉県戸田市ではあえて自動車のセンターラインを消して道路の両脇に自転車レーンを設けています。クルマの速度を落とさせる効果があるそうです。

栃木県宇都宮市は、自転車レーンがネットワーク状に充実している先進都市だそうです。

川崎自転車講習会6

金沢市と港区の事例

金沢市と港区の事例

長野県松本市は、いち早くカラー舗装の自転車レーンを設けたそうです。また、金沢市では、自転車とクルマの通行空間を分離して、自転車だけが走れる専用レーンを設けるとともに、自転車レーンを設けることができない狭い道にも、クルマの速度を落とし、無理な追い抜きをしないといった“共存”を求める路面標示を行っています。自転車への配慮を優先させた取り組みです。

この日の講習会では、参加者たちが路上に出たつもりで自転車の正しい走り方を考えるワークショップも行われました。ふだん、なにげなく使っている自転車を、さらに正しく使うことで、安全で便利な乗り物・自転車の普及につなげたいと思いました。(2015年12月)

●主催

川崎市高津区役所危機管理・地域安全担当
持続可能な地域交通を考える会 (SLTc) http://sltc.jp/

川崎自転車講習会8

※『自転車ルール教本』最新版(2015年8月改訂版)ができました。新たに「路線バスとの付き合い方」を掲載。Amazon.co.jpでも取扱開始。
Amazon専用3冊セットは送料込みで450円です。
●詳しくはホームページをご覧ください。⇒ http://sltc.jp/rulebook


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