CSRフラッシユ

かしこい電気の選び方・作り方

こがねい市民発電と一緒に考える

電力自由化1
4月から始まる電力自由化。庶民の暮らしにどのような選択肢があるのだろうか。NPO法人こがねい市民発電が開いた「かしこい電気の選び方・つくり方」の講演会からお伝えしたい。


電気を選ぶことは、世界の未来を選ぶこと

みんな電力株式会社 大石英司代表取締役に聞く

http://corp.minden.co.jp/

 “ソーシャル・エネルギー・カンパニー”みんな電力(株)代表取締役の大石英司さん


“ソーシャル・エネルギー・カンパニー”
みんな電力(株)代表取締役の大石英司さん

安い電気を選ぶということ

私はこの近所の住人です。今日はみんな電力の代表というよりも、近所に住んでいる一人の市民として話をさせていただくということでお邪魔しました。

電気の自由化では電気の価格が安くなるかどうかが最大の関心事となっています。その意味では私たちがやっている「みんな電力」は必ずしもお勧めではないかもしれません。安さを売りにしていないからです。

いま4月の電力自由化に向けて、全国で210社が新たに申請を進めています。しかし、その9割は安さを売りにしたものです。

安い電気を届けるといわれる電力会社の電源の多くは、石炭・石油・原子力などです。石炭や石油で発電をしたり、原子力発電所を再稼働させるというのは東日本大震災前と変わりません。昨年末、パリでCOP21 (地球の温暖化阻止に向けてパリ協定を採択)の合意がなされましたが、世界が低炭素社会に大きく舵を切ろうとしている中で、日本はなにも変わらないということになりかねません。

実はいまの“お得競争”では、月々1万5千円以上電気代を支払っている方はかなりお得感が出てきます。ところが節電を心掛けているお客様だとせいぜい数百円の差しか生じないといわれています。生活上の理由から、または経営上の理由から安い電気を選ぶということを否定しているのではなく、わずか数百円の差なら、環境にやさしい再生可能エネルギーでつくった電気を選びたいと思いませんか。そういうお客様はきっと大勢いるはずです。

みんな電力の“売り”は顔の見える電力

電力自由化というのは、本来なら自分の意思で電気代を払う電力会社を選べたり、応援したい電気のつくり方を選べるというものでなければなりません。ところが、現実は必ずしもそのようになっていません。応援したい電力会社にどこまで届いているのかが見えにくくなっています。

みんな電力は、「顔の見える電力小売りサービス」をコンセプトにしています。皆さんが野菜を買う際には、どこのだれがつくった野菜か気になります。生産者の顔が見える野菜だと安心ですよね。それと同じことが電気でもできないかと私たちは考えました。

この3月末までに首都圏で33か所の市民発電所と契約しました。6月末には100か所、来年度中には200か所にそれを増やす計画です。もちろん、そのどれもが太陽光や木質バイオマスなどを使った再生可能エネルギーです。

さらに1つひとつの電源を明示し、電力購入者が応援したい発電所を選べるようにしました。皆さんが分かりやすく選べるよう、タレント応援型、地産地消型、復興支援型、企業応援型、顔見知り型、ふるさと貢献型、環境貢献型、社会貢献型などの選択肢をそろえ、選ぶことも楽しめるようにしました。

みんな電力では月に1回、応援したい発電所が選べるような仕組みになっています。私たちのホームパソコン上で発電所を選ぶと、月の基本料金830円の一部がその会社に直接支払われる仕組みです。ふるさと納税みたいなものかもしれません。電気は最終的に送電線に入って混じって皆様の手元に届くのですが、電気代は応援したいところに払いたいなと考えたのです。

電源責任が問われる社会に

アップルやグーグル、あるいはウォールマートといった会社があります。こうした会社は世界に向けて「持続可能な社会に貢献する」と宣言しています。地球環境にやさしい電源を選ぶ「電源責任」という考えが浸透しつつあるのです。

たとえばアップルの場合、カリフォルニア州の太陽光発電会社と長期契約を結びました。当社のパートナーでセールスフォースというITの仕組みをつくる会社では、テキサス州の風力発電会社を選んで買うと宣言しています。アップルにティム・クックというCEOがいますが、彼は「考慮する時間は終わった。実行に移すときだ」と明言しています。

電気に安さだけを求めると極論すれば新しい資源争奪を生みます。再生可能エネルギーを求めれば、循環型社会の一歩が踏み出せます。つまり、電気を選ぶということは、世界の未来を選ぶということなのです。


世代を超えた交流の場にコミュニティ発電所をつくる

こがねい市民発電の取り組みから

http://ja-jp.facebook.com/kogaden

「また明日」は子どもからお年寄りまでが集う場、毎日、新しい出会いと交流が

「また明日」は子どもからお年寄りまでが集う場、毎日、新しい出会いと交流が


この建物の屋上に太陽光パネルが設置される

この建物の屋上に太陽光パネルが設置される

講演会を企画したNPO法人こがねい市民発電が進めるのは、発電容量7キロワットの小規模太陽光発電システムです。

小金井市貫井南町には、子どもからお年寄りまで幅広い世代を超えた交流ができる地域のより合い所があります。2階建てアパートの1階部分5戸分の壁を取り払ってつくられた広い部屋には、地域開放スペース「寄り合い所」、子ども食堂「みんなの居場所 また明日」、認知症専門通所介護施設「また明日デイホーム」認可保育所「また明日保育園」、認可外保育施設「虹のおうち」の4つが併設され、高齢者と幼児たちや地域の方々や子どもたちが仲良く過ごしています。

この施設の運営を行うNPO法人「地域の寄り合い所 また明日」の森田真希さんはこがねい市民発電の理念や事業の趣旨に共鳴。こがねい市民発電の太陽光パネルはこのアパートの屋上に取り付けられます。

通常時の日中は、地域イベントの電源供給に役立てるほか、子どもたちへの環境教育や自然エネルギーワークショップなどに利用されます。また、停電時には、蓄電池により施設の照明などを確保するとともに、子どもとお年寄りの安全確保につなげます。

森田さんが期待するのは、災害時の非常電源で、「災害時には蓄電池による余剰電力で、地域の方々に携帯電話などの充電や、避難所に行くまでの緊急的な避難場所などに役立ててもらいたい」と語っています。先の東日本大震災では、携帯電話の電源確保などが大きな社会的ニーズとなったからです。

こがねい市民発電では、約200万円を目標に1口3,000円の寄付を広く市民から集め、5月を目標に小金井市初となる市民発電所の稼働を目指しています。


自然エネルギーを売電・蓄電する

こがねい発電を支援した藤野電力の小田嶋 哲也さんに聞く

http://fujinodenryoku.jimdo.com/

藤野電力 エネルギー戦略企画室室長 小田嶋哲也さん

藤野電力 エネルギー戦略企画室
室長 小田嶋哲也さん

2011年3月11日の震災とその後の福島第一原子力発電所の事故を経て、私たちの地域にも電気が来ない時期がありました。それまでは当たり前だと思っていた常識がほころび始めたのです。

毎日の暮らしには電気が必要です。エネルギーを誰かにまかせるのではなく、住民自らが参加できる自立分散型に移行したいということで太陽光発電や蓄電池の仕組みをつくりました。

いま藤野地域では、個人宅や施設の新築またはリフォームを問わずオフグリッド(グリッドは電力会社の送電網のこと。それをオフするということは電力会社とつながらない独立の仕組みを意味する)発電設備を施工して地域の電源を賄っています。

現在、そうしたノウハウを活かして、「お祭りやイベントの再生エネルギーによる電源供給」「再生可能エネルギーシステムの組立ワークショップ」「個人宅や事務所へ再生可能エネルギー発電設備の施工」「市民発電所の建設」「効果的なエネルギーの使い方の研究と共有」などを社会に広めています。

こがねい市民発電には、NPO法人「地域の寄り合い所 また明日」における太陽光パネルによる発電とバッテリーによる蓄電設備を設計・施工しました。

自立型の電気を届けるには、施主との話し合いが非常に大切になります。こがねい市民発電の場合は、非常時に何をどう動かすかが議論されました。停電になっても高齢者の痰の吸引、インターネット、電話、小さな電灯程度なら賄えるようにしました。

私たちが手掛けた自立型の電源の場合、通常であれば送電網と切り離して設置されます。コンセントなどは通常のものとは別の配置となります。ただし、今回は売電も行うということで、送電網ともつながっています。日常の余った電気は売電もできる仕組みです。

電気の系統を2種類に分けるという着眼点はなかなか面白い発想です。売電用の太陽光発電システムと、畜電システムを併用することで、緊急時にも活かせる仕組みがつくられたわけです。(2016年3月)

※この記事は3月13日に小金井市で行われた催しを当編集部の責任でまとめました。文責は当編集部にあります。


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