国内企業最前線

SDGs(持続可能な開発目標)と環境・社会を考える

エコプロダクツ2018の会場から

エコプロダクツ2018」が2018年12月6日(木)~8日(金)東京ビッグサイトで開催された。20回目を数える今年のテーマは“SDGs時代の環境と社会、そして未来へ”。企業、自治体、NPO、大学など約538社・団体が出展し、3日間で162,217人(主催者発表)の来場者を数えた。[2018年12月24日公開]

鉄のリサイクル率を参加者にアピール(新日鐵住金グループのブースで)

鉄のリサイクル率を参加者にアピール
(新日鐵住金グループのブースで)

地球はひとつ、互いを思いやる未来へ

日本を代表する環境総合展示会として持続可能(サステナブル)な社会の実現を提案してきた「エコプロダクツ展」が、12月6日(木)~8日(土)の3日間、東京ビッグサイトで開催されました。20回目を迎える今年のエコプロは“SDGs時代の環境と社会、そして未来へ”がテーマ。多くの企業・団体ブースでSDGsの視点から新素材、環境配慮型製品などの展示に意欲的な取り組みが見られました。「エコプロ2018」の見どころをダイジェストで紹介しましょう。

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パナソニックは昨年発表した「環境ビジョン2050」で目指す、「使う」<「創る」エネルギーの考え方を訴求。「Energy Travel」をコンセプトに、エコでスマートな生活空間、エコでスマートな移動・輸送を、プロジェクションマッピングなどを交えて展示しました。世界の無電化地域に住む11億人にソーラーランタンでAKARIを届ける取り組みが注目を集めました。

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三菱電機グループは「大気・大地・水のために、私たちができること、三菱電機のエコチェンジ」をテーマに、「宇宙」から地球を俯瞰し、「大気」「大地」「水」とあわせた4つのステージで環境問題への取り組みを紹介。子どもたちは手動で発電する装置に興味津々でした。

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太平洋セメントはパネル展示や映像を通して廃棄物や産業副産物などがセメントとしてリサイクルされていることや、セメントが出来る仕組みについて紹介していました。ブースを「SDGs/脱CO2の取組み」「リサイクル技術の紹介」「セメント工場の紹介」「環境事業紹介」「手作りセメント工作教室」の5つのコーナーに分け、子どもたちが参加して学べるようにしていました。

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積水化学工業は「Safe and Sound:安心・安全で、環境にやさしく、サステナブルなまち」のコンセプトのもと、同社工場跡地(埼玉県朝霞市)に分譲戸建 住宅、商業施設、集合住宅などを複合したまちづくり「SEKISUI Safe and Sound Project」を進めています。また、同社と東京書籍が連携して開設したSDGsの学びサイト「EduTown SDGs」が印象に残りました。

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【TOPICS①】

産官学民で進展する SDGs・食品ロス削減への取り組み

クリーンエネルギーの実現、資源や商品の生産・消費、気候変動対策といった世界共通の17の目標であるSDGs。国の施策や地方創生につながる持続可能な地域の取り組みなど、産官学民それぞれの立場からSDGsを事業と結び付けて紹介していました。

日本郵政グループは、JP子どもの森づくり運動など次世代への環境整備や地域社会の活性化に向けた自社の取り組みを紹介。独自の『SDGs BOOK』を発行して、社会・環境・従業員に向けた課題とゴールを開示していました。

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また、インター・ドメインの「体力発電」は人々の運動エネルギーで電力を生み出し可視化・共有化、健康と環境貢献の両立やフィットネス事業とのビジネス連携も提案。関西SDGsプラットフォームは関西地域の企業や団体が推進するSDGsへの取り組みを紹介。あわせて使用済小型家電から東京オリンピック・パラリンピック 2020大会のメダルを製作する「都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト」にも参加し、会期中ブースに携帯電話・スマホの回収ボックスを設置しました。

■SDGs×地方創生の取り組み

環境問題や超高齢化等の課題解決に向けて取り組む環境モデル都市・環境未来都市、官民連携の場として設立した地方創生 SDGs官民連携プラットフォームのメンバーが、地方創生を切り口に先進的な取り組みを展示やステージで紹介。SDGs未来都市に選定された北海道札幌市、神奈川県、静岡県静岡市、福岡県北九州市をはじめとする13団体・企業が展示やステージで各地域の動向を紹介しました。

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■食品ロス削減の取り組み

日本では年間646万トンが、まだ食べられるのに廃棄される「食品ロス」になっています。国民一人当たりに換算すると毎日茶碗 1杯分(約139 グラム)を捨てていることになり、これは世界中の飢餓で苦しむ人々に向けた世界の年間食料援助量である320万トン(平成26年)の約2倍に相当します(消費者庁ホー ムページ「食べ物のムダをなくそうプロジェクト」より)。

本コーナーでは、食品ロス削減に取り組む自治体や企業、団体とともに、食品ロスの現状や対策、生活者が連携してできることを紹介。野菜長持ちツイスターロックは、ねじるだけで簡単に使用できる鮮度保持袋を紹介しました。(協力:極 洋、食品ロス・リボーンセンター、ニコニコのり、防災バンク、ヤマサ醤油)

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NECは食品ロスの課題である「需要と供給のミスマッチ」に着目した製造から販売までの需給最適化プラットフォームを紹介。本コーナーのアンケートに回答いただいた来場者には、もれなく食品ロス削減につながる商品(食品)をプレゼントしていました。

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【TOPICS②】

植物由来の新素材“セルロースナノファイバー”の最前線

軽さと強度を併せ持つ、植物由来の新素材“セルロースナノファイバー(CNF)”に関する特別展「第3回ナノセルロース展」をエコプロ展と同時に開催。CNFは量産効果による自動車や住宅分野などへの用途拡大により、2030年には国内1兆円の関連市場が期待されています。本展には25 社・機関が出展し、研究開発から事業化、製造技術から用途開発までをわかりやすく紹介しました。また展示会場内のステージでは『ナノセルロース研究最前線』『加速するナノセルロースビジネス』などのセミナーも実施されました。

本誌でも紹介したプラスチックゴミによる海洋汚染を解消する製品が王子ホールディングスで展示されていました。「生分解性プラスチック」です。現在プラスチックが主に使用されている包装材料の機能を紙製品に置き換えた代替バリヤー性素材を用いたものです。

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三菱ケミカルホールディングスは「KAITEKI Value for Tomorrow」をスローガンに KAITEKI 実現に貢献する製品・材料を提供。本展では植物由来の原料を使用する生分解性プラスチック「BioPBS」や、「強度は鉄の10倍、重さは4分の1」といわれる炭素繊維など、日常生活の中にある身近な「KAITEKI」を感じられる展示を行っていました。


【TOPICS③】

NTTデータ経営研究所の「My SDGsダーツ」に脱帽!

20回目を数えた「エコプロ2018」を取材し、特に秀逸だと思ったブースがあります。㈱NTTデータ経営研究所がSDGsの普及と調査を目的に開発した「My SDGsダーツ」です。

参加者が、SDGsの17のゴールを射的対象にしたダーツに挑戦し、自らが当てた各ゴールのテーマにどんな取り組みをしたいかのメッセージを書き込むというもの。会場のブースではたくさんの参加者が書き込んだ、メッセージが貼られていました。未来を担う子どもたちが地球の課題を自分事として考える機会を提供する試みでした。

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