CSRフラッシュ

世界の食糧難、カエルで解決します!

“かえるくん”がつくりたい未来の世界

ロシアのウクライナ侵攻で世界の食糧危機が叫ばれています。さてこちらは、“かえるくん”こと橘木良祐さんが、カエルで食料不足を変えるという、ちょっといいお話です。東京都が主催する「400文字から世界を変えるスタートアップコンテスト」のセミファイナリストの物語です。[2022年6月26日公開]

カエルを手にする“かえるくん”こと橘木良祐さん

“かえるくん”がカエルと出会うまで

異常気象が続く日本にも梅雨入りの知らせが各地から届いています。梅雨空といえばカエルの季節ですが、あなたは最近、カエルを見ましたか? 実はカエルの脚肉の栄養価は、鶏ささみ肉と同じくらい低カロリーで高タンパクです。

中国やフランス、東南アジアなど多くの国で食べられています。そんな食用ガエルの養殖で世界の食糧危機を救いたいと考え、行動に移したのが今回紹介する通称“かえるくん”こと橘木良祐(たちばなき・りょうすけ)さんです。

カエル研究→海外放浪→飲食店店主→キャビア養殖→カンボジアでコオロギ養殖拠点の立ち上げ→カエル養殖という自由奔放な生きざまで「世の中すべての人々が栄養のあるものを食べられる社会」を実現しようとしています。


宮崎でチョウザメ養殖に携わり、養殖の面白さに気づく

かつて宮崎県の小さな村で、チョウザメ養殖とキャビア加工の仕事をしていた橘木さん。そこでの経験が養殖の奥深さに目覚めさせてくれました。チョウザメの養殖は、幼魚が成長して世界三大珍味とされる「キャビア」となるまでに8年から10年もかかります。オスメスの見分けが困難なため、出荷量のコントロールが難しく、養殖には高いリスクが伴います。

「簡単にできないところが面白い、だからこそやる意味がある」と、この難しい養殖に興味をもった橘木さんは、自宅の空き部屋でカエルを飼い始めます。

チョウザメ養殖に携わる橘木さん(写真提供 橘木さん)

アカガエルやアマガエルなど、つかまえたカエルを衣装ケースの中で育て、ある日、さばいて食べてみました。

「アカガエルの方が、アマガエルより、深みがあって美味しい」

学生時代は研究対象で、いわば「相棒」だったカエルが、「養殖」の対象へとつながった瞬間でした。

カンボジアのカエル養殖場にて(写真提供 橘木さん)

お金に困って、カエルを食べる

橘木さんはなぜカエルを食べたのでしょうか。そこには、ある原体験がありました。 学生時代、カエルの跳躍を研究していた橘木さんは、卒業後、友人がオーナーの飲食店の店長として働きますが、オーナーが代わり失業します。

未払い賃金を残したまま友人とは連絡が取れなくなり、お金に困った橘木さんは、東南アジアのタイを旅行したときに見た食用ガエルを思い出し、近くでカエルをつかまえて、さばいて焼いて食べてみたのです。

橘木さんお手製のカエルの串焼き(橘木さんのTwitterより)

「カエルが、こんなにも美味しいものだったのか」

かつて「相棒」だったカエルを食べることで、橘木さんの命の危機も救われました。 この原体験とチョウザメ養殖業の上司から教えられた「養殖は二度殺すな」の言葉が重なって、橘木さんはカエル養殖の道を追い求めることにしました。

「養殖業は、育てた生き物を加工してお客さんに届けます。このときに命を奪うので一度殺すことになります。もし、まずいものをつくったら、誰にも食べられず捨てられてしまう、それは二度目の殺しになってしまうのです。殺すのは一度だけ。そう理解して育てるからには美味しく、安全に、喜んで食べてもらえるのかも……」と語ります。


異世界だった「TOKYO STARTUP GATEWAY」への挑戦

橘木さんは、東京都が主催した2021年の「TOKYO STARTUP GATEWAY」に、「『未来をカエル』カエル養殖による食糧危機の解決」というプランで応募し、セミファイナリストに選ばれました。橘木さんは、このイベントへの参加を「異世界に転生した気持ちになれる場所」と振り返ります。

「かつて僕が住んでいたのは、人口1,000人、鹿5,000頭、チョウザメ7,000匹の村でした。人より鹿に会うことが多い村から、オンラインで違う世界に行く。実績のないアイデア段階でも、参加者のみんなが僕に、いや僕のカエルの帽子に、ほんの数秒でも興味をもって話を聞いてくれるのが、嬉しかった。自分のモヤモヤを話して、みんなにブラッシュアップしてもらって、自分を深く理解できました」(2021年の「TOKYO STARTUP GATEWAY」は、コロナ禍のため、オンラインで実施しました。)


ただいま、カンボジアでカエル養殖に挑戦中

養殖業が自分の天職だと気づいた橘木さん。今はカンボジアにいます。Twitterで、コオロギ養殖に取り組むエコロギー株式会社代表の葦刈(あしかり)さんの「カンボジアで働くスタッフ募集」というツイートを見てダイレクトメールを送りました。

「葦刈さんは、『TOKYO STARTUP GATEWAY2016』のファイナリストなので、先輩だと思ってフォローしました。コオロギ養殖に関心あったし、カンボジアならカエル養殖もやってそう!」がきっかけでした。

さっそく下見に行ったカンボジアで、カエル養殖農家を発見し、2022年5月、カンボジアに移住し、コオロギ養殖の実験・加工場の管理人に着任します。

今は、平日はコオロギ養殖に専念し、週末はカエル農家のもとで養殖を学んでいます。 「2、3カ月学んだら、自分で池をつくってカエル養殖を始めます。その後は土地を借りて規模を拡大して、1年後には出荷したいですね。僕にとってもカエルにとっても、カンボジアは良いところです。暖かいのでカエルが早く成長します。」

「カンボジアでは4カ月1サイクルでカエルが育てられます。日本だと1年1サイクルです。最終的には、生き物全部の養殖に挑戦して、美味しい、安全なものをつくりたい。だから成果が早く出る今の環境はいいですね」と語ります。

カンボジアのカエル養殖農家さんと橘木さん

TOKYO STARTUP GATEWAY事務局(特定非営利活動法人ETIC.)からお知らせ

東京都主催の400文字から世界を変えるスタートアップコンテスト
「TOKYO STARTUP GATEWAY 2022」は、7月3日までエントリー受付中です。

詳細は下のWEBサイトをご覧ください。
https://tokyo-startup.jp/


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