[被災地復興に向けて力を結集]

「命をつなぐ」ために、いま何ができるのか。日本ユニバ震災対策チームの孤立被災地支援。

今回の東日本大震災では自治体の建物自体が被災・消滅し、震災後も自治体の支援が届かない孤立被災地を数多く生み出した。阪神淡路大震災等で培った震災支援ノウハウはもちろん、行政やNPO、そして個人・法人などの民間力を結集した支援が必要となっている。震災直後の1本の連絡から孤立被災地支援に取り組む日本ユニバ震災対策チームの上野清彦氏に話を聞いた。

1本のSOSの電話から始まった孤立被災地支援

Q 日本ユニバ震災対策チームのサイトを拝見すると、上野さんも所属されている日本ユニバーサルデザイン研究機構のサイト下にありますが、今回、初めて日本ユニバ震災対策チームを立ち上げた経緯から教えてください。

日本ユニバ震災対策チーム 上野清彦氏

上野:特定非営利活動法人(NPO法人)の日本ユニバーサルデザイン研究機構は、製造や建築など、主として“モノをつくりだす”企業の方々を対象に、講座を受講いただきユニバーサルデザインコーディネータという資格認定書を発行する団体です。つまり人材育成が本来の仕事で、結果的に従来から、さまざまな分野の方たちとのネットワークがありました。

今回の震災支援は、震災翌日の12日に、ネットワークのお一人である、全国に複数の医療福祉施設を保有する代表の方からSOSの呼びかけが入ったことがきっかけでした。気仙沼の老人介護施設が孤立したらしく連絡が取れない。相当悲惨な状況かもしれない、現地で入ってなんとかしたい、ヘリコプターを手配するツテがないかと。
早速、テレビ局の方や自衛隊関係者等々に打診するなか、ようやくボランティアでヘリコプターを出していただく手配がつき、施設の代表の方、私ともう一人の3名で現地に到着したのが13日の午後3時でした。実際にその施設に到着してみると、鉄筋コンクリートの3階建ての建物に施設の入所者と職員150名、地域住民150名、計300名がいらっしゃいました。いわば、自然発生的に避難所になっていたのです。

Q 緊急の救援物資を届けるだけでなく、今後についてのアドバイス、コーディネートもされたということですが。

上野: 短期的にどのようなものがどれだけ必要か、在庫の管理が必要であること、そして(自治体との連絡がついた後も)自分たちが必要なものを、全てはっきりと必要であることを伝える必要がることもお話しました。

なぜなら避難所の皆さんは、常に遠慮深いというか、要求が控えめになるからです。とりあえずの水と食糧が届けられたといっても何日持つかわかりません。さらには、人間が命をつなぐ、本来生活するためには水と米以外にもたくさんの生活必需品がある、健康やストレスの問題も出てきます。必要だと思われる支援すべてをきちんと要求しなければなりません。そういうことを、その場でミーティングを開き、お伝えしました。

日本ユニバ震災対策チームが支援した被災地域

Q その施設から他の孤立被災地への緊急支援につながったわけですね?

上野:  施設代表の方は気仙沼以外にも東北地方に施設をお持ちでした。ヘリが山形で給油する予定でしたが、その日に戻れなかったため、帰りは陸路で、複数の施設に立ち寄りながら21時間かけて東京へ戻りました。 既に“行き”のヘリで上空から被災状況が想像以上であることを確認していましたが、“帰り”の行程でも、いずれの施設も避難所化し、多くの道路が寸断されている状況を把握しました。

最初に伺った医療法人グループの施設の場合は、その後山形から物資を投入するルートができました。しかし、被害の実態を目の当たりにしていましたので、同じような孤立被災地は数多くあるはずです。「これは、何かしないといけない」、出来る限り多くの方の「命をつなぎたい」という思いで、孤立被災地(自治体の支援が届かない被災地)の支援に特化すべく、急遽立ち上げたのが、日本ユニバ震災対策チームです。

突然ですので、もちろん日本ユニバ震災対策チーム自体はNPO法人資格を取得しているわけではありません。ウエブサイトをご覧になると、日本ユニバーサルデザイン研究機構の一活動と見えるのですが、短い期間にも関わらず多くのボランテイアの方の協力を得て、すでに母体(日本ユニバーサルデザイン研究機構よりも遥かに大きな組織となり、今や完全に別団体の活動ととらえていただいた方が良いと思います。

日本ユニバ震災対策チームの主な活動
http://www.ud-web.com/oshirase3.htm
孤立被災地の支援に特化することをテーマに、以下の活動を行っている。
◆被災地状況の確認
東京から2000箇所以上にのぼる避難所に、ボランティア30名体制で電話。緊急支援が必要と判明した孤立被災地へ、当日から翌日中に何らかのアクションを起こす
◆今、必要となる物資を集めて発送
随時、ネット上に現在必要な物資情報を開示、東京、埼玉、千葉など複数の倉庫で物資を回収して送付。
◆現地に赴いたドライバーがさらに現地の情報を収集
単に物資を届けるだけでなく、避難所にいる地域住民、市役所など自治体・地元NPO・自衛隊関係者など現地にいる人々から情報収集を行い、孤立被災地となっている可能性のある地域や緊急に必要とされている支援ニーズを把握する。
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