被災地から国・自治体への緊急提案

復興への”土台創り”は地元の技術と雇用で解決する

――塩害・ヘドロ処理物・ガレキの環境改善と地盤沈下への対応

東日本大震災にともなう津波の浸水による土地の“塩害”対策が急務だ。自然の猛威がもたらした被害の大きさに“復興への時間の目途がつかない”と思いがちだが、実は世間に広く知られていないが“すぐにでも大地を復興できる中小企業の最先端の環境技術は既に存在する”。農地の11%が浸水した宮城県から国・自治体への働きかけを行っている公益社団法人日本技術士会メンバーで環境コンサルタント技術士の今井宏信氏に、具体的な提案内容について聞いた。

震災復興には健全な大地の回復が大前提

Q.震災で海水につかった田畑は推定で青森79ヘクタール、岩手1,838ヘクタール、宮城1万5,002ヘクタール、福島5,923ヘクタール(河北新報調べ)と言われます。

今井宏信 氏

今井:今回の震災による農地を含めた大地(土地)への影響は大きく4つあります。
①浸水による塩害
②河口・沿岸付近の汚泥(自然由来重金属含有土砂の可能性)   
③家屋・工場の崩壊による廃液・化学物質・油、などの汚染土砂   
④廃鉱堆積場の流出土砂
“塩害”はもちろん②~④の“ヘドロ処理物(汚泥)”など有害物質による影響、それによる健康被害も懸念されます。

 私の自宅は仙台市太白区内ですが、すぐ近くの名取市閖上港の生々しい現状も見ています。また4月には仙台市荒井地区で実際に塩害に合われた市内最大規模の仙台イーストカントリーさん(経営面積64ヘクタールのうち約2/3が浸水)も直接訪ね、未だにガレキが散乱し、“農家が個々に何とかできる”状況ではないことも確認しています。

 これから夏場に向けて風の向きが海からの内陸部へと変化すると、さらに有害物質を含んだ粉塵や悪臭が悪化することが懸念されます。農業再建のためはもちろん、健康被害をくいとめるためにも汚染土壌を早急に改善しなければなりません。

震災による浸水面積
*宮城県327 km2、青森・岩手・宮城・福島・茨城・千葉県トータル561 km2
*浸水した土地では膨大な汚泥(ヘドロ)やガレキが発生
*「海水の塩分濃度は約3%に対して、水田の塩分濃度が0.4%を上回ると稲の生育に確実に支障を来し、0.1%程度でも影響は避けられない(東北大大学院 佐藤准教授/河北新報)」と言われている。

 さらには、地震による地震による“地盤沈下”で、海抜0メートル以下の地域が仙台平野の沿岸部で従来と比較して5.3倍に拡大し、更なる浸水被害の恐れが懸念されます。農地だけでなく、街には、公共・民間施設が破壊されたガレキや破損コンクリート等の膨大な廃棄物が発生していますし、さらには上下水道の破損による汚泥処理の回復等も急務です。

地盤沈下の現状
・海抜0m以下の範囲:地震前3 Km2→16 Km2
・地盤沈下:概ね25cm~50cm。
(仙台~山元町:66 Km調査:新聞報道)

 いま震災復興に向けて各業界・団体が取組まれていますが、国の復興プラン等によって経済を活性化するにしても “まずは健全な大地の回復”が大前提です。土地が回復しなければ、その上に何も創ることはできません、大地の回復が今の最優先テーマなのです。あらゆる有効な技術を駆使して、スピード感を持って、環境改善を実行しなければなりません。

 “塩害”や“地盤沈下”というと一般的に回復に数年かかるイメージがあるようですが、実は、既に地元宮城県で「既に開発されている技術」を活用することで、短期間に環境改善し、地盤沈下への埋戻しとしてリサイクル資源化することが可能です。しかし、その技術が国や多くの自治体には知られていません。

 “復興への手立ては存在する”、そのことを国・自治体に知ってもらい、“全ての復興プロセスの基盤となる大地を早急に地元の技術力で再生しよう”、そう考え、公益社団法人日本技術士会(日本技術士会推進センター等)として、今回の企画提案書を作成しました。

●震災後の状態が続く現状

 

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