識者に聞く

炭素固定比率1㎡あたり32㎏の準耐火パネルが認定を取得国産杉を使い低炭素社会に近づこう

一般社団法人日本WOOD.ALC協会 幹事長 稲田健太

戦後植えた国産杉が伐期を迎えている。だが外材との価格差に加えて、木材は火に弱いという常識が国産杉利用のカベとなって立ちはだかる。外壁・床材・内壁などにもっと利用を広げられないか。防耐火構造の認定が絶対条件であった。

国産材をもっと活用できないか

Q1.国内の山林には伐採時期を迎えた杉がかなりの数に及ぶそうですね。

(社)日本WOOD.ALC協会 幹事長 稲田健太氏

稲田 日本の国土の7割が山林です。わが国は先進工業国では珍しく、豊かな森林資源をもつ森林大国です。ところが森林というのは木を伐らずに放置しておけば緑が守られ、健康な森が維持されるわけではありません。木の成長に沿って適度に伐採し、利用してやることが、持続可能な森林資源の再生に不可欠なのです。もちろん、国産材を使うことで、林業家の森林経営も一息つけます。

わが国の人工林の多くは終戦後に植えられたものが大半を占めています。植林から40~50年経ち、そろそろ伐採と利用に本腰を入れないと、森林全体が光や風の入らない不健康な山になりかねません。

私たちは、戦後植えられた木の中でも最も森林面積の多い杉の木をなんとかしてもっと利用促進できないかと考え、WOOD.ALC(ウッドエーエルシー)という活用法にたどりつきました。

Q2.WOOD.ALCとはどのような意味でしょうか。

稲田 WOOD.ALCというのは、低炭素社会を達成させる(Attain Low Caobon Societyの省略)木質パネルの意味です。木材は、光合成によって空気中のCO2(二酸化炭素)を体内に吸収し、閉じ込めることから“CO2を固定化する”といいます。日本の森林が吸収するCO2は年間約1億トン。国内のすべての自家用車が排出するCO2の7割に相当するといわれています。私たちの調査では国産杉が1㎡あたりで吸収固定化するCO2の量は32㎏。国産杉を利用すれば利用するほどCO2の削減枠に貢献するのです。

ただし、国産杉の利用を拡大するには防耐火構造認定が何としても必要です。一定の厚みなどの規格をもつ部材が国土交通省の60分準耐火の性能評価試験にパスすることが絶対条件でした。

わが国では、長らく木材建築普及の課題に、構造上の強度の問題と並んで、耐火性能があげられてきました。幕末から明治の初期にわが国を訪れた外国人たちは、日本の住宅は“木と紙”でできていると旅行記などに書きましたが、“木と紙”でできた家屋だからこそ地震や火事にもろいと考えられてきました。

地域の林業家や工務店などが、地元で採れた無垢の木材でつくられた住宅をと考えても、これまでは建築基準で外壁などへの採用がかなわぬため、せいぜい腰壁やフローリング程度の利用が中心でした。

WOOD.ALCの実験利用施設

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