ただいま、節電奮闘中!

節電・省エネルギー対策に取り組む 東京都環境局長 大野輝之さんに聞く

世界的な環境保全団体の国内組織であるWWFジャパンが『脱炭素社会に向けたエネルギーシナリオ提案の中間報告〈省エネルギー〉』を発表した。2050年に2008年比でエネルギー需要を約半分にする可能性を明らかにしたもの。本誌でも追って詳報するが、今号では同報告会で過度の電力依存社会からの脱却を訴えた東京都環境局長大野輝之さんの報告からお伝えしよう。

東京電力管内で7月1日から新たな電力制限が始まりました。9月22日まで続く予定です。今日は、1つは5月30日に東京都が出した「電力対策緊急プログラム」の概要とそれに基づいてどのような取り組みが行われているか。2つめは今年の夏の経験を活かして、低炭素で安全・安心な電力システムの構築にどのようなことが考えられるかお話します。

東京都環境局長 大野輝之さん

 

計画停電から電力対策緊急プログラムへ

震災直後の対応

3月11日に東日本大震災が起き、3月13日の夜に政府と東電から計画停電の発表がありました。私たちも13日の日曜日の夜に会議を招集しました。東京都の場合、上下水道、地下鉄のほか、消防・警察もありますから、電力が制限されると非常に大きな影響があります。

14日から計画停電が始まりました。鉄道や病院などの社会的インフラが機能できないという問題が発生しました。工場は停電時間が2時間だとしても、開始前と開始後の数時間に影響が出ます。地域的にも停電のある地域とない地域では不平等だという指摘がされました。週末の3月18日の金曜日に国に宛てて「計画停電はやめて電気事業法による使用制限に移行すべきである」という緊急要望を行いました。

政府は難しいということでしたが、問題点が明らかになるに従って、計画停電は原則不実施となりました。そのあと1都3県で共同提案をし、5月30日にこれからお話しする緊急プログラムの策定を行いました。6月3日には「東京都電力需給対策自治体会議」を開催し、それ以降都内の経済団体、自治体などと連携してさまざまな取り組みを行っています。

都内の電力消費の内訳 

中身に入る前に都内の電力消費の内訳についてお話します。都内では、電気事業法第27条の義務的措置の対象となる500kW以上の電力を使う産業系と業務系を併せて34%。残りの2/3は義務的措置の対象外となります。私たちとしては、規制の掛からない家庭(31%)や中小規模事業所など(35%)をいかに巻き込んでいくかに気を配りました。

 

東京都の取り組みの特徴は、これまで取り組んできた気候変動対策の蓄積や成果を活かすということ。東京都は2007年に気候変動対策戦略をつくり、大規模事業所に対するキャップ&トレード制度、総量削減義務制度の導入、中小規模事業所対策などを進めてきました。

東京都にも、事業者にも、いろいろなノウハウが蓄積されています。また、都内の企業・経済団体とのネットワークも生まれています。それらを活用するということです。活動そのものは今年の夏の緊急対策ですが、今年の先の「低炭素・高度防災都市」の実現に標準を合わせているともいえます。

500kW以上の大規模事業所対策

都内の大規模事業所1,300に総量削減義務が掛かっています。たとえばトップレベル事業所の削減義務は6~8%ですが、削減の取り組みが前倒しで進んでいるところに対しては、削減義務数値を半分にするという制度があります。

この評価基準が228項目。かなり細かいチェック項目です。この中で新しい設備投資をしなくても運用対策で効果の出る「節電重点10対策」を提示して対策に取り組んでもらっています。

●「節電重点10対策」についてはコチラ↓
www.kankyo.metro.tokyo.jp/climate/large_scale/setsuden-10.pdf

都内には業務部門が多く、テナントオフィスがかなりの比重を占めています。ここには削減義務はオーナーに掛かるが、実際にエネルギーを使うのはテナントであるため、削減は難しいという話が前々からありました。しかし、すべてのテナントに削減の努力義務を課し、かつ床面積が5千㎡以上のテナントには、削減計画書をつくってもらうことになりました。それを受けてテナントビルごとにテナント協議会がつくられました。ほぼすべてのビルにでき、今回の節電対策でかなり機能し、削減対策が進んでいます。

特定テナントと呼ばれる大規模なテナントは都内で774あります。ここには「省エネカルテ」を送っています。「平均的な電気やエネルギーの使用量はこんなところだが、あなたのところはこんなところですよ」というもの。あるいは74の対策をリストアップし、「平均的にはこのような対策が行われているが、あなたのビルではこの対策がやられていません」ということもお知らせしています。

特定テナント等地球温暖化対策計画書(平成23年度用)はコチラ↓
http://www.kankyo.metro.tokyo.jp/climate/large_scale/cap_and_trade/documents/23.htm

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