識者に聞く

環境保全団体WWFジャパン中間報告──①脱炭素社会、“決め手”は省エネルギー!(前半)

株式会社システム技術研究所所長 槌屋治紀さんに聞く

WWFジャパンのシナリオ

きょうの報告の前提は、「省エネルギーにより、効率を上げて必要なエネルギー需要を小さくする」シナリオといえます。これが100%再生可能エネルギーにつながる理由は、省エネルギーが進んで需要が小さくなれば、環境に与える影響が小さくなると同時に、再生可能エネルギーで供給することがそれだけ容易になるからです。そうしたエネルギーシナリオをベースに、2050年頃を目標に日本で必要となるエネルギーのすべてを再生可能エネルギーで供給するシナリオを研究するというものです。

私は石油ショックが起きた1973年にいろいろな論文を調べました。そのときに考えたのが省エネルギーを進めてエネルギー需要を小さくすれば、将来、日本でも再生可能エネルギーでエネルギーの100%供給が可能になるというものでした。

30年ほど前に『エネルギー耕作型文明』という本を東洋経済新報社から出しました。1万年前の人類は動物を狩猟して食料を手に入れていました。いつしかそれが枯渇すると地上で太陽のエネルギーを受け止めて食料を耕作するようになりました。同じことがいまエネルギーでも起きています。地下から掘っていた化石燃料を掘りつくすと、人間は地上で太陽エネルギーを受け止め、農業のように再生可能エネルギーを使うしかなくなる時代が来るというものでした。

参考となるBAUシナリオ

WWFジャパンのシナリオを研究するにあたってBAUとなる公開されているシナリオをいくつか調べてみました。目標としてあがってきたシナリオが2つあります。1つは国立環境研究所が作成した「脱温暖化2050」というプロジェクトでした。2005年と2050年の民生エネルギー消費量とCO2排出量を比較したものですが、民生エネルギー消費量は大体6割くらいに縮小しています。CO2排出量は、6対1くらいに小さくなります。

もう1つは日本エネルギー経済研究所が作成した「アジア/世界エネルギーアウトルック」という調査です。これは最終用途エネルギー別に出ていまして、最終用途は2008年と2050年を比べると2割程度縮小することになっています。日本の人口は2050年に現在の7割程度と見られています。産業もエネルギーを大量に消費する重厚長大型から情報やサービスを中心としたものに移っていきますから、GDPは1.5倍とか1.8倍になってもエネルギー消費はそれほど増えないだろうと予測されています。この2つをBAUシナリオにしようということになりました。

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