識者に聞く

再生可能エネルギー普及のカギを握るスマートグリッド国際標準化の動き

スマートグリッドの概念モデル

それではNISTが定めたといわれるスマートグリッドの概念モデルを見てみましょう。

ポイントが2つあります。1つめは、3つの標準化団体が参考にするほど、優れた概念モデルかどうか。2つめは、「再生可能エネルギーの利用につながる」とか、「情報通信技術の活用が進む」だとか、われわれが日本国内で一般的に持っているスマートグリッドのイメージがどれだけ重なるのかという2点です。

 この概念モデルをしっかり読んでみると、それなりに興味深いものです。この中ではスマートグリッドを「マーケット(市場:電力市場に参加する事業)」「オペレーション(電力システムの管理者)」「サービスプロバイダー(末端利用者にサービスを提供する事業者)」「発電(発電および蓄電)」「送電(長距離の送電および蓄電)」「配電(末端利用者に電力を供給する事業者)」「顧客(電力を利用する末端利用者)」という7つのドメインに分けています。特に興味深いのは、すでに「マーケット」や「サービスプロバイダー」というところが上位概念に入っているところです。

NISTの概念モデルでは、項目ごとにかなり詳細なところまで検討が進んでいます。ここでは一般の方が関心のある「顧客」の部分だけご紹介します。

 顧客

電力を利用する末端利用者は「ビル/ホームオートメーション」「産業オートメーション」に加えて「小規模発電」も顧客に位置づけられています。

ビル/ホームオートメーションは、照明や室温制御など、建物内の各機能を制御するシステムです。産業オートメーションは、工場や倉庫の各工程を制御するシステムです。そして小規模発電は、小規模の太陽光発電、風力発電、水力発電で、おそらく遠隔監視、遠隔制御が可能となります。

私はこれを見て、わが国の経済産業省がまとめているメーカー寄りの標準化の方向の議論よりは面白いと思いました。どこにどういう産業が生まれてくるのかという可能性が見て取れます。スマートグリットはあくまでもプラットフォームであり、いろいろなサービスが刺さるものがよいと見ています。アメリカは今後の20年でスマートグリッドを30兆ドルのビジネスにしようとしています。 

ITUTにおけるスマートグリッドの取り組み

ITU-Tは、無線通信と電気通信分野の標準化を行う国際電気通信連合の電気通信標準化部門です。2010年2月にFG Smart(Focus Group on Smart Grid)を立ち上げ、スマートグリッド関連標準化における課題を整理、検討。ユースケース、要求条件、アーキテクチャーの3つのワーキンググループを設置し、それぞれのワーキンググループで成果文書を作成中です。2011年12月に最終版をまとめる予定です。

IECにおけるスマートグリッドの取り組み

IECは、電気・電子関連の技術を扱う国際電気標準化団体。2008年11月にSG3(Strategic Group on Smart Grid)を設置し、スマートグリッド関連の標準化規格に取り組んでいます。スマートグリッドの実現に向けて、今後のIECにおける標準化のロードマップが紹介されています。

 IEEEにおけるスマートグリッドの取り組み

2008年よりIEEEならびにIEEE-SAにてスマートグリッドに関する取り組みを開始。これまでに100以上の規格をスマートグリッド向けに拡張する作業を行っています。スマートグリッドの相互運用性に関するガイドラインIEEE P2030を2011年末に発表する予定です。再生可能エネルギー利用のための分散型電源とスマートグリッドの相互接続に関する規格であるIEEE 1547の拡張にも取り組んでいます。ロゼッタストーンとなるガイドラインを作成中というわけです。

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