識者に聞く

再生可能エネルギー普及のカギを握るスマートグリッド国際標準化の動き

「未来型ECOシステム」の実証実験

IEEE P2030で私が何を提案しているか、次にご紹介します。これは総務省の予算をいただいて私が関係する慶應義塾大学グリーン社会ICTライフインフラ研究センターなどが、平成21年度以降長崎県五島市で行った標準化に向けた実証実験です。今年は文部科学省から予算をいただいて宮城県栗原市でもコミュニティーグリッドに拡張して実験を行うことになっています。

総務省の実証実現は、技術規格に対する検証でした。ここでスマートグリッドの実験をし、その内容を標準化に持っていきなさいという課題で、それに応える取り組みをしました。検証には①技術規格に関する検証②地域実証環境としてのICT基盤に関する検証③CO2削減に関する検証がありましたが、CO2削減では10%削減の数値目標に対し、それを上回る成果も出ています。

場所は五島市の福江港の港湾ターミナルビルです、ここのビルの中の空調を管理することが1つ。ここには太陽光パネルもあります。そこには電気自動車の充電スタンドを置き、ネットワークを組みました。慶應義塾大学と日立製作所が標準化検討委員会の事務局となり、わが国を代表する企業様数社にも協力をいただきました。

スマートグリッドはエネルギーの地産地消といわれていますが、情報の地産地消も含まれています。そのためローカルの制御は地元で行い、大きな制御は慶應義塾大学で行うことにしました。

スマートメーターは、パナソニック電工に協力いただきました。RFID空調制御システムは日立情報通信エンジニアリングのものを活用し、RFIDに書き込まれている入退出情報をRFIDリーダーが読み取ると、携帯網を使ってリソース管理サーバーに情報が送られ、材室時のみ空調機が動くように制御しました。

12kW級太陽光発電システムは、三菱重工にお願いしました。駐車場で発電した電力はターミナルビルに供給しました。年間、約3775㎏-CO2削減効果が見込まれます。エネルギー制御システムは、慶應義塾大学が担当し、各部屋の空調を制御しました。目的とするCO2削減率や電力の平準化を達成した上で、最も快適な空間を創り出します。

今回の地域実証では9社以上の日本を代表するメーカーが参加し、すでに製品化にこぎつけているところもあります。

スマートグリッドの国際標準化では、特定の機器やシステムが幅を利かすのではなく、通信網、通信QoS、セキュリティ、情報家電、スマートグリッド、ITS/EV、電力網などの規格から横断的に利活用するための共通プラットフォームが不可欠となります。それによってスマートグリッドは電力、情報、通信技術を統合したサービス提供とアプリケーションの構築が大きく進む可能があります。

※この記事は、IEEEが記者向けに開催したプレスセミナーにおける井上恒一氏の発言を当編集部で編集したものです。文責は当編集部にあります。

 〔関連記事〕
識者に聞く「環境保全団体WWFジャパン中間報告」はコチラ↓
http://csr-magazine.com/2011/09/02/analysts-wwf/

 識者に聞く「ただいま、節電奮闘中!」はコチラ↓
http://csr-magazine.com/2011/08/06/analysts-tokyosetsuden/

 特別寄稿「温暖化で海に沈む島」はコチラ↓
http://csr-magazine.com/archives/analysts/mycsr_rep04_01.html

海外最前線レポート「福島第一原発とチェルノブイリの違いとは?」はコチラ↓
http://csr-magazine.com/2011/04/13/international-fukushima-chernobyl/

トップへ
TOPへ戻る