シリーズ「突破力---女性と社会」

日本人が知らない「人身取引(ヒューマン・トラフィッキング)」

~11/8(火)に日本初の国際シンポジウムを開催

私たちは「人身取引(ヒューマン・トラフィッキング)」と聞いて何を想像するだろうか?若い女性や子どもたちを性産業に強制労働させる「人身取引(ヒューマントラフィッキング)」において、日本は最大の受入国として海外各国から非難されているが、多くの日本人は知らないでいる。11月8日(火)に日本で初めて世界各国の専門家を呼んで大規模の人身取引に関する国際シンポジウムを開催する特定非営利活動法人ポラリスプロジェクト・ジャパンの藤原 志帆子さんに話を聞いた。

 ●国際シンポジウム「変化を遂げる現代の人身取引対策-各国の成功と課題から」↓
http://www.polarisproject.jp/news

世界有数の「人身取引(ヒューマン・トラフィッキング)大国」日本

Q.①性的目的の人身取引 ②児童ポルノ ③違法労働目的の大きく3つに分かれる「人身取引(ヒューマン・トラフィッキング)」は、国内での被害者が約5万4千人と伺い驚きました。

ポラリスプロジェクト ジャパン 藤原志帆子さん

藤原:「人身取引(ヒューマン・トラフィッキング)」というと何か大げさですが、普通に街ですれ違うアジア各国の女性たちが、実は騙されて日本に連れてこられて自分の意思に反してアダルト産業に従事しているケースは本当に良くあります。この問題は “古くて新しい問題”であり、1970年代から生じています。しかし、欧米だけでなく、台湾や韓国などのアジア各国が政府と民間が一丸となって「人身取引(ヒューマン・トラフィッキング)」の問題解決や被害者保護の体制を整備してきたのに比べて、いまだに日本は人身売買大国、米国務省の2011年人身売買報告書でも日本政府の対応が不十分であると特に指摘されているほどです。

海外女性の被害相談として多いのは、フィリピン、韓国、ルーマニアなどの国。ここ数年、日本では無店舗型などの風俗産業が増えているのに気づきませんか?本当に韓国女性からの相談は多いです。一つ申し上げたいのは、私たちのところに相談に来る女性たちは、「まさか、自分が日本で“1日に3人以上の本番行為がノルマ”などという仕事をするとは夢にも思っていなかった」人ばかりだということです。韓国できちんと大学を出て普通に働いていた女性もいました。ただ現代社会では、どの国でもTVなどのマスコミ情報を通じて“経済的により良い生活”に憧れる、10代の若者や女性たちを煽る傾向がありますよね。日本で日本語学校や大学に通いながら就職し、韓国に戻って少しでも良い生活ができたら。そんな夢を見てブローカーに騙されて人身取引の被害にあった海外女性がたくさんいます。

Q.騙されたと気づいてもパスポートをとられて、という話も聞いたことがあります。

藤原:ブローカーサイドも、パスポートをとると警察から人身取引と悟られてしまうため、最近は経済的に束縛するケースが多いです。日本で5-6人が一つのアパートの部屋に住まわされるケースが多いですが、言われた通りのことをしなければ、ご飯も食べさせてもらえない、アパートの部屋にも入れてもらえない。または給料20万円と言っておいて、10万円が家賃、5万円が食費、残り5万円を彼女の名義で貯金するからといって貯金通帳だけ見せて現金は全く持たせない。言われたとおりにしなければ契約違反で給料も出ないよと脅迫して、結果的に、3ケ月、6ケ月、12ケ月と働かせられて泣き寝入りで本国に帰ることになる。

大人の女性だけでなく、子どもたちが犠牲になっているケースも本当に多いです。私たちが関わったケースでは、コロンビアの15歳ほどの女の子が日本中のストリップ劇場を連れまわされて、1回15分の本番行為を強要され続けていたこともあります。

「人身取引(ヒューマン・トラフィッキング)」は現代の奴隷制度と言われます。昔の奴隷貿易とは見た目も違って分かりにくい、さまざまな手段を使って人を支配し、何年にもわたって搾取していく犯罪です。昔からある問題だと言われますが、さらに近年、物凄いスピードで成長を続けている犯罪産業であり、その被害者は圧倒的に女性と子どもです。

暴力団ややくざ、海外のマフィアといった組織に限らず、多くの普通の人たちもかかわっています。例えばバイト感覚で、本国に帰るたび空港から女の子たちの付き添いで日本に連れてくる人もいます。

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