華やかな都市生活に埋もれた健康格差の是正に目を向けよう

WHO健康開発総合研究センター(WHO神戸センター)所長 アレックス・ロス氏に聞く

日本ができる多様な貢献に期待

Q 日本はかつてODAなどに資金を提供し、アジアやアフリカでさまざまな活動を続けてきましたが、いまは国家財政の悪化から、ODAの予算も先細りの状況です

ロス 日本は、保健分野でODAを通じて重要な役割を果たされ、今後も続けられることと思います。その中には、他国へに直接的な支援もあれば、WHOなどの国際機関を通じたものもあり、また、世界エイズ・結核・マラリア対策基金やワクチンと予防接種のための世界同盟のような国際イニシアチブへの支援もあります。また、先ほどお話をしたインフルエンザパンデミック対策における世界銀行/国際通貨基金との協働のように、様々な協働に参加されていて、国際貢献に大きな役割を果たしていると思います。

また、日本の市民の方がNGOなどを通じても世界の各地でさまざまな貢献を担っています。こうしたスキームは多様なツールの1つにすぎませんが、世界から見れば極めて有意義な活動です。日本がパイオニアとして行った貢献の1つに、IFFI「予防接種のための国際金融ファシリティ」のため、国際金融市場において、債権(ワクチン債)を発行するという創造的手法で世界的予防接種の普及を支援したことがあります。

日本を含め、各国が地球規模の公衆衛生の向上のため行う財政的貢献が、持続的で、長期的に予測可能なものであることが大切です。日本は訓練や能力開発の分野でも貢献を果たしています。

日本は医療技術が進んでいるので、医療技術を伝えるという分野でも貢献できるはずです。また、ビジネスの分野でも博愛的な精神で大きな貢献ができるはずです。

ビジネスの目的は利潤を上げることで、ビジネス上の動機と社会的責任とが衝突する可能性があり、いかにしてそれに透明性を持ちつつ対処するかが、グローバルな課題の1つだと思っています。すべての参加者がWIN-WINの形で協力してやっていけることが大切です。この点は、CSRマガジンの読者の皆さんも大いに関心のあるところだと思います。

いま、日本はほかの国々と同じように常に自国における公的資金調達法の向上に努めておられます。特に保健分野でそれが課題になっています。私たちは国連のミレニアム開発目標の達成に向けて、ともに連携しなければなりません。WHOはいろいろな参加者と協力してこのゴールに向かってまい進しています。私個人はどのような問題であっても必ず解決法があるという哲学をもっています。

最後になりましたが、改めて先の東日本大震災の被災者の皆様に心よりお見舞い申し上げます。東北地方で苦しんでいる皆様と私たちの心は常に1つです。皆様の1日も早い復興をお祈りいたします。(2011年12月取材)

アレックス・ロス氏の略歴
2011年10月にWHO神戸センター所長に就任。以前は、WHOのパートナーシップ・国連改革部長として、地球規模での公衆衛生向上に他のさまざまな部門と提携し、民間部門を引き込みつつ保健パートナーシップに関する戦略的政策の助言をWHO全体に対して行ってきた。また、WHOと他の国連機関、民間セクター、非政府機関、地域内政府間組織、および各国の議員連合との関係構築と拡大の責任を併せ担ってきた。
カリフォルニア大学ロサンゼルス校で公衆衛生学修士、理学士号を取得。国籍は米国。これまでにカナダ、英国、フランスで居住経験があり、フランス語も堪能。家族は、妻と子供2人。

お問い合わせ
WHO健康開発総合研究センター(WHO神戸センター)
〒651-0073神戸市中央区脇浜海岸通1-5-1 I.H.D. センタービル 9階
電話(代表): 078-230-3100
電子メール:wkc@wkc.who.int
ウェブ:http://www.who.or.jp/

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