識者に聞く

電気を選べる時代がやってくる<前半>

個人向けグリーン電力証書の普及を進める エナジーグリーンの竹村英明副社長に聞く

東京・自由が丘でオーガニックコットンの専門ブランド「メイド・イン・アース」を運営する(株)チーム・オースリー(前田剛代表)は、「コットン(5・10)デー」を記念してコットンの種まきや多彩なゲストを招いた「アースコットン・デー スペシャルイベント」を開催しました。イベントの1つとして行われた、エナジーグリーンの竹村英明副社長と前田剛代表のトークセッションをお届けします。

メイド・イン・アース代表 前田剛さん(左)と竹村英明さん

●識者に聞く「電気を選べる時代がやってくる<後半>」

前田 「コットン(5・10)デー」を記念して、今年もスペシャルイベントを計画しました。竹村英明さんをご紹介します。竹村さんは原発問題に取り組んで30年、自然エネルギーの普及に15年、グリーン電力証書の普及に10年というすごい方です。本日は、エネルギーシフト(原子力や化石燃料から、風力や太陽光などの自然エネルギーへ転換すること)の実現に貢献してきた竹村英明さんをお迎えし、電力の自由化はどこまで可能なのか、一般家庭でグリーン電力を使うにはどうしたらいいのか、グリーン電力証書とは何か、などについて聞いてみましょう。

グリーン電力を取り巻く最新事情

前田 私は太陽光や風力など自然がもたらすエネルギーに前々から興味をもっていました。実は、2007年にメイド・イン・アースのお店が自由が丘にでき、自由が丘の駅に内照式の案内看板を出すことになったのですが、LED電球を使うなどして環境への配慮はしたものの、昼間から電気を使うことに抵抗がありました。どうせ電気を使わなければならないのであれば、自然エネルギーによる電力を使えないかと考え、グリーン電力証書を始めていたエナジーグリーン(当時の自然エネルギードットコム)に相談し、オフィスと直営店舗にグリーン電力を導入しました。

グリーン電力証書を買う場合、何kWhの電気を買うか、買う電気の量を申告しなければなりません。どれくらい必要かを調べてすべてをグリーン電力で賄うようにしました。

私たちはオーガニックコットの製品をつくっていますが、製品づくりの部分もグリーン電力にしたかったのですが、ベビー用品からタオル、靴下、衣類とありますが、工場が数十社にまたがっています。メイド・イン・アースの製品をつくる分だけの電力消費量を算出するのが難しいため一時は断念しました。

そんな折に東日本大震災が起き、原発は嫌だなあと改めて思いました。もともと降り注ぐ太陽光や自然に吹く風力で電気を賄えたら、オーガニックコットンでつくる製品もさらに気持ちのよいものになると思っていたので、協力工場にもお願いして、メイド・イン・アースの製品をつくるのに必要な電力の概算をお願いし、すべてをエナジーグリーンさんから購入することになりました。

しかし、グリーン電力証書とは何か、グリーン電力とはどのようなものか、まだまだ一般には馴染みがありません。本日は、そのあたりの疑問にもお答えいただきたいと思います。

 

10年間で 太陽光は10倍 風力は18倍に

竹村 自然エネルギーの状況から話を始めたいと思います。 自然エネルギーにはいろいろな種類があります。太陽光、風力、水力、地熱発電、バイオマス(生物資源)、潮力、波力……世界各地でさまざまな実用化に向けた取り組みが始まっています。

駅の改札を大勢の人間が通過しますが、人間が踏み歩く力で電気を起こせないかといった実験もあります。仕組みそのものは開発されていて発電もできるのですが、めちゃくちゃ高いので、いまのところ実用化に至っていません。そうしたものが実用化されると自然エネルギーの幅は格段に広がるはずです。いま、大きな力を発揮しているのは太陽光と風力です。この10年間の年間伸び率を見ると、太陽光は10倍、風力は18倍に伸びました。一方、原子力は3.11が起きる前の2009年から伸び率がゼロを下回るようになっています。原子力が衰退し、自然エネルギーが伸びる中で、世界の投資マネーも自然エネルギーに向かっています。

この10年間の自然エネルギーへの投資額は、2002年で2兆円だったものが2010年には22兆円と11倍になっています。おそらく2010年には50兆円を超え、今世紀の末には100兆円を超えるかもしれません。

いま、自動車産業が100兆円産業です。今世紀中に自動車産業を上回る可能性があります。さて、雇用ですが、ILO(国際労働機関)の統計によると、ドイツで2010年に37万人、2020年に50万人の雇用を生み出すとされています。風力が盛んなスペインでは、19万人の雇用が行われています。アメリカは、直接・間接合わせて44万人、中国は94万人で太陽光だけで60万人と爆発的に伸びています。ブラジルはバイオエタノールで50万人となっています。

ILOの統計に日本は入っていません。政策的にやっていないので、日本の統計そのものがありません。関西のあるNPOの試算では115万人の雇用創出となっています。これからの10年くらいで100万人の雇用を生み出すのはそれほど難しいことではないでしょう。

 

広がる自然エネルギーの可能性

竹村 環境省のポテンシャル調査では、風力で年間4兆kWhをつくれるとあります。日本の年間の電力消費量は年間で1兆kWhです。その4倍のパワーを風力だけでつくれるというのです。少し現実的に考えると、風力であれば景観の問題や騒音・低周波の問題もありますから、住宅からどれくらい離れていたらよいかなどの配慮が必要です。送電線の付き方についても配慮しなければなりません。もろもろの条件を加味した導入可能量では、設備容量4億kWで年間発電量8千400億kWhという数字が出ています。かなり現実的な数字です。しかし、こんなに電気は要りません。日本が必要とする年間1兆kWhも、省エネを進めれば8千億 kWh以下で十分でしょう。

太陽光ですが、孫正義さんの「電田プロジェクト」では、2.7億kWとなっています。そして、環境省の調査では1.5億kWとなっています。年間発電量でいうと孫さんの方で2千700億kWhです。風力と太陽光を合わせると年間1兆kWhを超えますから、これだけで日本の電気は十分賄えます。それくらい自然エネルギーには秘められた力があるということです。

いま日本の電力はどうなっているのでしょうか。5月5日に日本の原子力発電所(以下原発)がすべてストップしました。私たちは原発ゼロの電気を使っているわけですが、火力発電が動いているためにCO2を一杯出していることも事実です。現在、日本の電力の発電能力は水力が4,800万kWh、火力で1億8,170万kWh、電力会社以外の事業者で3,000万kWhとなります。これだけで過去最大ピークを超えていますから、原発で5,000万kWhくらいありますが、原発を使わなくても大丈夫なのです。

過去最大ピークは1兆8億kWhですが、これは経済の低迷を考えると二度と来ないでしょう。電気が足りないというのは、年がら年中ではなくて、ピーク時に対応できる発電所があるのかないのかです。なかったら停電もありうるわけですが、実際はピーク以上に余力があります。また、自然エネルギーをちゃんと開発していければ、石油、石炭、天然ガスを使わなくてもやっていけるわけです。

東京電力管内の話をすると、過去の最大ピークは2001年4月24日で6,430万kWhでした。おととしの猛暑はどうだったかというと5,999万kWh、昨年は震災後の節電でピーク時の20%も下がって4,922万kWhでしたから、水力と火力と、電源開発㈱などの他社や、新日鉄など企業の自家発電を活用すれば全部賄えます。

 

トップへ
TOPへ戻る