CSRフラッシュ

ムハマド・ユヌス氏が提唱するソーシャル・ビジネスとは?

革新の技術と創造力が経済の枠組みを変える

利潤追求ゼロの発想から社会を変える新しい創造力が生まれる

ユヌス:一例を挙げましょう。私が始めたマイクロファイナンスクレジットでは担保をとりません。従来の銀行融資では無担保はありえませんでした。担保がないと考えると様々な仕組みが不必要となりました。担保をとるための法的書類が不要となり、銀行では多分初めて弁護士のかかわりが不要となりました。

重要なのは、担保ゼロ(利益追求ゼロ)に焦点を当てたことです。100ドルの融資に対して1ドルの担保であっても、法的には様々な法的書類や弁護士の仕事が必要となります。(配当金が1%でも駄目、ゼロである必要も同じ理由です。既存の仕組みを1%でも残せば、既存のリーガルワークやルールを排除し、新たな枠組みを創ることはできません。)

ビジネスは非常に大きな力を持っています。技術を開発する創造力です。
そして技術は問題解決のための大きな力です。今、時代は、技術を駆使して社会問題を解決するソーシャル・ビジネスの創造力に、大きく門戸を開いています。

毎年、我々はグローバルソーシャル・ビジネスサミットを開催し、今年は11月にウイーンで行われます。会社CEO、若手幹部、NGO/NPO、政府職員、様々な人間が一同に会してソーシャル・ビジネスの可能性を話し合う機会です。日本では九州大学のユヌス&椎木ソーシャル・ビジネス研究センター(SBRC)では産学協働で様々な取り組みを模索しています。ダボスの経済フォーラムでもお目にかかる機会もあると思います。これらの機会に皆さまにも是非ご参加いただき、世界の問題解決に向けてソーシャル・ビジネスの可能性を広げることができればと思います。

ユヌス氏へのQ&A

Q1. 日本の株式会社制度では、配当について総会決議が必要です。(一部の弊害もありつつ、一方で)株主の厳しい目は企業活動を健全化する、ある種の牽制機能となってきました。(ユヌスさんのようなカリスマ性がある方がいればともかく、配当を含めて株主の権利が及ばない部分が広がると)一般的なソーシャル・ビジネスを運営する企業において、コーポレートガバナンスが甘くなる恐れはないのでしょうか?

ユヌス:現実には、ソーシャル・ビジネスを成り立たせることは非常に厳しいものです。ビジネスを通じて社会問題を解決する際には、通常のビジネス以上に透明性が求められ、例えば環境への配慮も現実的に求められます。全ての局面において非常にシリアスであることが要求されるのです。通常のビジネスであれば(社会に良いことをしたかしないかではなく)ボトムラインの利益を上げれば株式市場から一定の評価を得ることができますが、ソーシャル・ビジネスではそうではありません。株主たちは、社会の問題解決に向けて実際に何をして、どれだけの効果をあげることが出来たかどうかだけを見ます。
ソーシャル・ビジネスにおける株主リターンは自分の投資によって、社会の問題がどれだけ現実的に解決したか、それがリターンとなります。(むしろ通常の企業よりも厳しい目で監視されることになります。)

シリウス・インステュート株式会社 舩橋晴雄代表取締役(左)、九州大学 ユヌス&椎木ソーシャル・ビジネス研究センター(SBRC)エグゼクテイブ・ディレクター岡田昌治教授(右)との討論も行われた。

Q2. ソーシャル・ビジネスの仕組みを確認させてください。投資家は投資した原資以上の配当金を1%も期待してはいけないとのことですが、融資した銀行が利息、材料を提供する企業が原価にマージンを上乗せしてもいけないのでしょうか?そうした仕組みだとしたら、ビジネスが持続しないのでは?

ユヌス:ソーシャルビジネスがビジネスである限り、持続する仕組みであることが第一条件です。株主はリターンを目的に投資しないということであって、通常のビジネスと同様にバランスシートを見せて銀行融資を受けますし、ソーシャル・ビジネスとして得た利益は実際の費用に使われるわけです。(もちろん銀行融資には利子を払うし、材料を提供する企業にもマージンを支払います。)例えば、先ほど申し上げた太陽光発電事業では、太陽光パネルを日本企業から購入しています。無料で入手しているわけではありません。利益を上げて費用を支払います。

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