識者に聞く

電気自動車が切り拓く自動車の次の100年

三菱自動車工業株式会社常務執行役員社長補佐 CSR推進本部長環境担当役員 大道 正夫

更なる発展に向けて

大道:2010年に経済産業省が出した「次世代自動車戦略2010」によれば、2020年で従来車が50〜80%なのに対し、次世代自動車は20〜50%。2030年で従来車が30〜50%なのに対し、次世代自動車は50〜70%となっています。次世代自動車には、ハイブリッド自動車、電気自動車(プラグインハイブリッドを含む)、燃料電池自動車、クリーンディーゼル自動車が含まれています。

日本のメーカーが開発し圧倒的な世界シェアを獲得したものに、半導体のDRAM、液晶パネル、DVDプレイヤー、太陽発電セル、カーナビなどがありますが、現在いずれも世界シェアを落としています。

●電気自動車が産業の未来をけん引する

大道:自動車の国際シェアを維持していくためには、電気自動車やプラグインハイブリッド車の普及がカギを握っています。主要先進国でもそれぞれ普及目標が設定されており、2020年までにフランスで200万台、ドイツで100万台、オランダで22万台、2015年までに米国で100万台とされています。中国は2012年までに50万台、2020年までに新車に占める環境対応車の比率を50%にするとしています。

電気自動車の普及には電池の技術がもっとも重要です。ただ、日本の自動車メーカーはこれに各社ばらばらで対応してきました。電池の最大のライバルはおそらく韓国になるでしょう。韓国の場合、LGとサムソンの2社に絞られています。私どもにも韓国のメーカーからものすごい売り込みがあります。これが安いのです。性能に差があるかといえば、ほとんど差はありません。

電池はいまのところ日本が先行していますが、来年もそうだという保証は全くありません。

わが国は、今年の7月に国家戦略会議が行われ、日本再生戦略の中に電気自動車も位置づけられました。2020年までにリチウムイオン電池の研究開発を進め電気自動車の航続距離を約2倍に向上させるとか、「走る電源」としてピークカット・非常用電源機能や情報技術との融合による安全性・利便性など新たな高付加価値を創造したいとしています。

三菱自動車は、電気自動車の優位を維持するため、プラグインハイブリッド車の開発を進めています。目標性能は、電気走行だけで50 km以上、航続距離800 km以上、複合燃料消費で60 km/L以上です。

自動車保有台数は、今後も世界で伸び続けます。脱化石燃料、CO2排出抑制のためにも新世代型自動車の普及が不可欠となっています。先ほどからお話ししたように、電気自動車には輸送手段としての役割に加え、さまざまな付加価値が期待されています。日本の優位を維持するためにもインホイールモータ、ワイヤレス充電、スマートグリッドなどの可能性にも挑戦していきます。(2012年8月取材)

※この記事は「豊かな成熟した日本を考える会」における大道正夫氏の講演をまとめたものです。当日の内容を一般の方にも分かるようかなり要約しています。あくまでも編集責任は当編集部にあります。

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