識者に聞く

電気自動車が切り拓く自動車の次の100年

三菱自動車工業株式会社常務執行役員社長補佐 CSR推進本部長環境担当役員 大道 正夫

震災後、電気自動車への注目と期待が高まっている。ガソリン車が担ってきた自動車の国際競争力を電気自動車でも持続できるのか。わが国の産業や雇用を占ううえで重要な課題になりそうだ。三菱自動車の大道正夫氏に自動車の「次の100年」について聞いた。

自動車が普及して100年

大道:三菱自動車は、2009年に電気自動車を世界に先駆けて商品化しました。実は東日本大震災の後、電気自動車を取り巻く状況もかなり変わってきました。ガソリンがないから電気自動車をという声もありますが、エネルギーシステムの一環としての電気自動車に注目が寄せられています。

本日は、「電気自動車が切り拓く自動車の次の100年」という演題です。なぜ「次の100年」なのか。実は自動車は本格普及して100年なのです。厳密に言えば、最初に発明されたときから勘定するともう少し長いのですが、自動車が普及するのはアメリカでT型フォードが誕生してからです。1908年のことです。これがアメリカで広がり、世界のモータリゼーションの広がりに火をつけたわけです。

ガソリンだけで動くクルマの時代が100年あったわけですが、「次の100年」はエネルギーの制約もありますし、環境問題もありますから、電気で動くという仕組みを取り入れたクルマを普及させたいと考えています。

2011年に東京モーターショーがありました。2年に一回開かれるものですが、どのメーカーも電動化車両を出してきました。将来の可能性として、新しい自動車を出していかないといけないというのが自動車メーカーの共通認識です。

なぜ電気自動車なのか

大道:世界の四輪車の普及状況を見ると、人口1,000人当たりの台数は、アメリカの776台を筆頭に、イタリアの694台、フランスの599台、日本の593台、イギリスの573台、ドイツの554台と続きます。世界平均が147台ですから、ブラジルや中国やインドなどでまだまだモータリゼーションが進みます。メーカーとしては、比較的安い価格帯でそれなりに走るクルマをそうした市場に売り出そうとしています。

自動車市場を見ると、先進国はほぼ横ばいです。唯一アメリカだけが一時横ばいだったものが少し上向いています。日本やEUは下がってきています。中国やインドは伸びています。この瞬間で見ると世界で一番クルマが売れているのは中国です。世界のエネルギー需要の見通しからすれば、中国などでエネルギーの需要が拡大していけば、石油資源の枯渇という問題に至ると言われています。もう1つはCO2の排出の問題ですが、運輸部門から出てくるCO2は世界全体で22%、日本単独で19%です。この大半が自動車関連ですから、この部分のCO2の削減が課題であることは間違いありません。

次世代自動車がなぜ必要かと言えば、化石燃料が有限であるということに加え、地球温暖化に対応しなければいかないという2点にあります。次世代エネルギー車には、電気自動車、プラグインハイブリッド車、燃料電池車、バイオエタノールなどに対応したフレックス燃料車などがあります。

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