「科学技術は環境(エコ)の基本」シリーズ

【第3回】科学技術を学ぼう①

~公式テキストから~「地球環境の現状と科学技術」「環境問題とその側面」「地球環境問題への対策技術」

科学技術の面白さと重要性を知っていただく「科学技術は環境(エコ)の基本」シリーズ、第3回から第7回までは、『科学技術を学ぼう』と題して、5回に分けてエコリーダー公式テキスト<科学技術>の内容について、(社)日本技術士会「持続可能な社会推進センター」会員の大熊正信氏(株式会社 福田水文センター 常務取締役)がご紹介します。

これまでの「科学技術はエコの基本」シリーズはコチラから

1.地球環境の現状と科学技術

大熊正信氏

大熊: この章では、地球環境の今を考え、環境問題に対する科学技術の役割について学習します。
環境問題は①地球温暖化、②オゾン層破壊、③酸性雨、④生物多様性の減退、⑤森林破壊・砂漠化、⑥海洋汚染、⑦化学物質・有害廃棄物の越境移動など、多種多様に分類されますが、そのほとんどが私たちの生活に密接に関わっているものばかりです。

発展途上国の経済成長で加速化するCO2排出量

一例として温室効果ガスの約9割を占める二酸化炭素(CO2)の国別総排出量と人口一人当りの排出量(図-1)を見ると、人口比ではアメリカ合衆国や我が国などの先進国が大きくなっていますが、今後は人口の多い中国やロシア、ブラジル、インドなどの発展途上国の成長とともに、二酸化炭素排出量も増加してくると考えられます。

図-1 CO2排出量

このような温室効果ガス排出を抑制するためには、地球サミットや京都議定書などの国際会議での地球規模的な協力が不可欠です。そのため、多くの国際条約が締結されていますが、各国の利害が絡み合うため、その遵守は人類に課せられた最も重要かつ至難な課題といえるでしょう。

世界の発電エネルギー構成から、未来の日本を考える

2004年の世界統計による主要国の発電エネルギー構成を見ると、最も発電量の多いアメリカ合衆国や世界第2のCO2排出国である中国で化石燃料である石炭による割合が高くなっています。それに比べてフランスではほとんどが原子力による発電となっています。我が国の2004年統計では電源の多様化が進んで比較的バランスの取れた電源構成となっていますが、2011年の東日本大震災による原子力発電所事故を受けてほとんどの原子力発電所が停止している現状から、現在は火力発電が最も多い発電量となっています。

図-2 世界の発電エネルギー(世界の統計2004)

東日本大震災はまた、科学技術に対する国民の信頼を震災前と後では84%から41%(文部科学省意識調査)まで失墜させました。原子力では安全神話が崩壊し、ライフライン、津波予想、情報通信等でも国民の期待を満足させられなかったことに依ります。しかし、震災を復興するのも科学技術であり、60%以上の国民が科学技術の今後の発展に期待を寄せているのです。

人類は「豊かさ」と「便利さ」を得るために技術革新を繰り返し、その結果、化石燃料の消費、大量生産・大量消費による大量廃棄物の発生、フロンやDDTなどの化学生成物の使用などが顕著になり、環境破壊の原因の一つとされています。
 科学技術は人類の生活を豊かにしてきましたが、結果として有害物質の排出や資源の枯渇を招いてきました。これからは、科学技術の功罪を理解し、持続可能な社会を実現するため、未来志向の独創的・先端的な科学技術開発が必要なのです。

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