企業とNGO/NPO

震災から1年半、今こそ企業とNGO/NPOは連携を[第1回] 2つの大震災から見えてくるもの

ダイバーシティ研究所代表理事/つなプロ代表幹事/復興庁上席政策調査官 田村 太郎

ISO26000と企業の震災支援

2011年4月に東京証券市場上場会社(1,677社)を対象に、アンケート調査を行いました。7月までに251社から回答をいただきました。それによると東日本大震災に寄付をした企業は93%。これはこれで凄いことですが、寄付先を聞くと「赤十字関連」「自治体」「中央共同募金会」がトップ3です。寄付金の合計約350億円の半数がこのトップ3で占められています。これ自体は特に非難されることではありませんが、本日ご参加の皆様は企業のCSRのご担当者が中心ということですが、2010年11月にISO26000が発行されています。

あらゆる組織の社会責任に関する国際ガイドラインということですが、世界的に見ると東日本大震災はISO26000が発行されて最初の大震災です。これに日本企業がどのように対応したのか世界が注目しました。ISO26000では、社会の様々な課題に対してマルチステークホルダーとともに解決しなさいとあります。もっと具体的にいうと、日本企業がどのような意思決定の下で災害支援にあたったのか、ステークホルダーに説明責任を果たす内容であったのかどうか、これから検証されなければなりません。このアンケートでは市民の方にも同時にインターネットで投票を行っています。2万人の方が投票しました。どういう企業の行動に共感し支援をしたのかを聞いて分析しました。

Tell MEの時代~市民はその企業にしかできない支援を求めている

簡単にいうと経営理念を基に具体的なお役立ち活動をした企業が高い評価を受けています。公的機関への支援ではなく、それぞれの企業の本業を生かした支援が高い評価を受けています。裏返すと本業から離れた支援を市民はあまり評価していません。市民の皆さんは政府や赤十字にはできない支援を企業に求めているのです。考えてみれば当たり前ですね。政府や赤十字ができる支援をわざわざ別建てでやる必要はありません。公的機関にはできない、企業の本業を生かした支援に市民は期待をしているわけです。

津波でたまった泥をボランティアが清掃開始

さて、本日は〔ネットワーク〕や〔連携〕がキーワードです。CSRのご担当の方には釈迦に説法かもしれませんが、これまでは良い活動をしているのだから信用してくれという(Trust me)の時代でした。ところが最近は信用しろというなら証拠見せてよという時代になっています。情報開示(Show me)の時代です。

うちの会社はCSRをやっています、CO2を○○トン削減しました、女性の管理職がこれだけ増えています、といった「CSR報告書」が発行されています。それを読むと、市民の側に立つNGO/NPO 側は、この企業はこのような取り組みをしているが、ここが弱点だなあということが分かります。なかには企業にこのようなことに取り組みませんかとNGO/NPO 側が提案するケースも生まれています。コミュニケーション(Tell me)の時代に入ってきたのです。

Engage Me~企業とNGO/NPOが責任を分かち合う時代へ

ISO26000が発行されマルチステークホルダーエンゲージメントということが言われ始めると、社会責任というのは企業や行政だけがもっていてNGO/NPOや市民はそれを追及するというポジションではなくNGO/NPOや市民もともに責任を分かち合う(Engage me)時代になりつつあります。

マルチステークホルダーエンゲージメントの時代にふさわしい被災地への関わり方、緊急支援のあり方、復興への支援の関わり方が求められています。

これまでは行政や企業が主体で、NPO/NGOは補完的な立ち位置にありましたが、企業に要請したり、行政に物申すだけでなく、NPO/NGOもそれぞれの専門性の中で、それぞれの強みを生かし、復興のプロセスにおいてNPO/NGOだからこそできる支援を担う責任があります。

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