企業とNGO/NPO

震災から1年半、今こそ企業とNGO/NPOは連携を[第1回] 2つの大震災から見えてくるもの

ダイバーシティ研究所代表理事/つなプロ代表幹事/復興庁上席政策調査官 田村 太郎

昔と異なる若者の絶対数~ボランティアへの影響

日本の人口動態が大きく変わろうとしています。少子高齢化です。阪神・淡路と東日本大震災では社会の前提に大きな違いが生まれていることに気づきました。阪神・淡路の頃は第二次ベビーブーマが学生でした。大勢の若者がボランティア活動に参加しました。

阪神・淡路大震災が起きた1995年の国勢調査と東日本大震災の前年の2010年に行われた国政調査のデータで見ると、18歳人口はこの15年で1/3も減っていることが分かってきます。この間、若者の非正規雇用の割合は、20.9%から34.9%に増えました。私はある大学で非常勤の講師をやっていますが、年々学生の就職活動が厳しくなっています。阪神・淡路の頃のように若者の数がそこそこ人数がいて、余裕もあって被災地にボランティアに出かけていました。

東日本大震災ではどうでしょう。被災地が遠いとか、原発事故があったということも多少は影響しているかもしれませんが、そもそも日本社会そのものが大きく変わりつつあります。この15年で75歳以上の人口が約717万人から約1,379万人とほぼ倍増しています。人口構造だけではありません。経済もかなり厳しくなっています。日経平均株価はほぼ半分ですし、金利は1/3に落ちています。

丸裸の復興予算

復興予算の使い方がニュースになっています。阪神・淡路のときに兵庫県と神戸市が8,800億円を出して復興基金を設立しました。当初年4.5%の金利が付きました。毎年300億から400億円増える計算です。途中で3%に下がります。新潟の中越地震でも6,000億円の基金が組まれました。これに2%の金利が付きました。今回の東日本大震災にも政府は基金を組みましたが、金利は付きません。原資を取り崩すしかないのです。阪神・淡路大震災や中越地震でできたことがいまではできない可能性があります。

人口構成から見ても、経済情勢から見ても、災害に立ち向かうのは非常に難しい状況が生まれています。それに前提に復興に取り組まないといけません。

間に合った団塊世代の活躍

ただ、今回は団塊の世代がまだ元気で、ぎりぎり人的リソースとして助け合いに参加してくれました。ボランティアツアーを組むと、被災地で活動をし、帰りに温泉に入って帰るというツアーが人気を博しました。しかし、5年後10年後はどうでしょうか。団塊の世代が75歳以上になったときにみんなが高倉建さんみたいに元気だという保証はありません。むしろ、彼らの方が要支援者に回ると思われます。

ボランティアの支援でようやく街に平穏が

ということは、今回はぎりぎりセーフだったが、次の災害ではこれまでと異なる災害時対応が必要だということです。これからは東日本大震災を超える災害救援の仕組みを早めに準備しないといけません。

しっかりした街づくりプランがないと本当の復興はできない

被災地の復興が遅いという話があります。緊急支援からいきなり復興支援に移れるのでしょうか。それが難しいのです。現在、被災地は緊急支援と復興支援の谷間にあたる「生活再建期」にあります。

復興支援に入るにはきちんとした復興計画がなければなりません。それをつくるには合意形成が必要です。時間がかかります。もうしばらく仮設住宅や仮設商店街での生活が続くことになります。この時期をいかに乗り越え、どう支え合うか、極めて重要なテーマです。

阪神・淡路大震災のときにもこの経験をしました。復興に向けた街づくりは早いほど良いのですが、拙速でいいかげんな街をつくってしまうと人口が戻りません。阪神・淡路では成功例もあるにはありますが、むしろ失敗の連続でした。同じことを繰り返さないためにも、この時期は自分たちの街づくりに向けた議論を進めていくことが大切です。

いま、被災地では雇用のミスマッチが起きています。終の住処も定まっていないのに、フルタイムの転職ができるのかという問題です。仕事を決めるのは物凄い勇気がいります。実は仮設期には仮設期にフィットした仕事があるのではないかと考えています。この時期にフィットした仕事とはどのようなものか。たとえば支援活動を地元民におろすということも1つかもしれません。ただ、仮設商店主は生き残らなければなりません。復興の街づくりができたときに果たしていくつの商店が残っているのか。仮設期のこの時期を乗り切ることがいかに難しく、重要な課題であるかが分かります。いまは踊り場の状況です。

孤独死をいかに減らすか

阪神・淡路大震災の経験をお話しすると仮設住宅で多くの孤独死がありました。最近、被災地ではお茶会がさかんになっています。孤立防止に有効だということで行われています。阪神・淡路大震災の際には仮設住宅で3年間に240人の孤独死を出しました。男性が170人、女性が70人。女性は高齢者の心血管疾患が多かったのですが、男性の場合は50代の肝疾患がトップでした。次が60代の心血管疾患でした。心血管疾患というのはお風呂上りに起きるためなかなか予測できないのですが、肝疾患は予測できます。「あそこの仮設のおじさんはなかなか外に出てこないね」「ボランティアの人が行くと、帰れ!と叫んで追い返すんだよ」。これが危険の兆候です。こうした方はお茶会には絶対来ません。お茶会に出てくる人は元気なおばあちゃんばかりです。孤独死に関係のない人たちです。

阪神・淡路ではすべてが手さぐりでした。被災者が仮設住宅に入ったとたんにボランティアが来なくなりました。オウム真理教の問題で大騒ぎになり、世の中の関心もそちらに向かいました。今回は仮設住宅にも沢山のボランティアが来てくれました。ただ、現在仮設で行われていることが、本当に必要とされているのかどうかについては、もう少し丁寧な検証が必要です。

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