企業とNGO/NPO

震災から1年半、今こそ企業とNGO/NPOは連携を[第1回] 2つの大震災から見えてくるもの

ダイバーシティ研究所代表理事/つなプロ代表幹事/復興庁上席政策調査官 田村 太郎

これからの復興と企業の役割:マルチステークホルダープロセス

被災地の産業構造ですが、福島、宮城、岩手の3県のデータをつくってみました。沿岸部は農業や漁業の割合は高いのですが、全体では第三次産業の占める割合はかなり大きいのです。こういうデータをもとに被災地で必要な仕事は何か、検討していく必要があります。第三次産業の雇用開発が課題となっています。

海にも復興のつち音が

災害支援や震災復興は「マルチステークホルダープロセス」で臨みませんかというのが私の提案です。寄付先の選定や企業の物資や資金の送り先をどのような意思決定の仕方で行うのか、ほかの支援とどう違うのか、皆さんの企業で説明できるでしょうか。いままでは日本赤十字だったので今後も日本赤十字でよいのでしょうか。

これからは現場をよく知り、被災者のニーズを予測できる団体との連携が必要です。中長期のマルチステークホルダーとの関わりでは寄付付き商品の販売などの例があり、市民の評価にも非常に高いものがあります。消費者や一般市民も企業の活動にもっと参加したがっています。そのように仕組みをつくり、企業のリソースを企業だけで使うのではなく、企業の周りにいるステークホルダーと一緒に力を合わせて、テコの原理を働かせて被災地に届けていく、災害救援に臨むことが大切です。

被災で神戸は10年先の街づくりができた

それがマルチステークホルダー型だと考えています。被災地と関わるのは、決してその被災地が弱くて、助けが必要だからではありません。視点を変えてほしいと思います。神戸は阪神・淡路大震災で街づくりが10年遅れると言われました。それは違うと私たちは言いました。神戸は大震災で10年先の世界を掘り出したのです。

いずれ日本のどこの地域に住んでも人口は縮小し、行政の役割も縮小します。ボランティアの役割が増してきます。福祉も民間が担う時代がやってくるかもしれません。市民がNGO/NPOという形の法人格を得て関わらざるを得ない時代がやってきます。行政とNGO/NPOがパートナーシップを組む時代が必ずやってきます。

東日本大震災の被災地も神戸と同じです。10年先の自分たちの街を先取りして、被災地で様々な活動に取り組んでほしいと思います。これは企業でいえば10年先のマーケットをつかむということ、NGO/NPOでいえば10年先の社会を予測することです。つまり課題を先取りできる可能性があります。むしろ積極的に投資をし、積極的に関わって、そこで得られた知見を日常の活動や本業にフィードバックしていけるのではないかと考えています。

もうすぐ平均40歳を超える消防団

各地に消防団があります。その年齢構成を見ると平成5年の段階で平均30歳代でした。40歳未満が7割を占めていました。平成23年には40歳未満が6割を切っています。30代の後半は第二次のベビーブーマの世代ですが、あと数年で彼らも40代になると、日本の消防団員の半数以上が40歳以上になります。

40歳を超えると四十肩です。肩やら腰が痛いと言い始めます。様々な場所で“絆”とか“コミュニティー”という言葉が使われていますが、これまでのやり方ではそろそろ限界です。女性や高齢者や外国人も消防団に入って、地域の防災活動に臨まないと地域の防災を担うことができません。

避難所の多くは地元の小学校ですが、統廃合で小学校もどんどん減っています。地域の身近な場所に避難しようとしても学校がないというケースもあります。阪神・淡路大震災が起きたおよそ15年前と、いまでは日本の力は全然違います。日本全体が高齢化し、地域のインフラそのものが収縮していく中で東日本大震災が起きました。これから先の5年〜10年後はもっと厳しくなっていきます。

行政に出来ない支援:企業のリソースを前面に

地域にそこそこの防災力があって、企業やNGO/NPOがそれを支援しますよという発想は、どうやらもう終わりかもしれません。これからは企業が持っているリソースや知識を総動員してカバーしないといけない状況かもしれません。こういう視点に立たないと次の災害への対処は本当に厳しくなります。たとえば避難所の救援物資の配布のあり方1つを見ても、全国から毛布や水がどかどか届きます。体力自慢がいないと仕分けることも容易ではありません。これまでの災害のように全国から若い人が支援に来てくれるという前提そのものが成り立たなくなる可能性があります。

最初にお話ししたように、行政にはできない支援にこそ、企業の役割です。行政は公平・平等を重んじなければなりません。スピードも遅い傾向があります。それに対し独自性や専門性を発揮した迅速な支援をできるのが企業でありNGO/NPOです。企業の本来の活動を通じて被災地の支援ができるような体制づくりをつくってください。ぜひ被災地に関わる視点をもう一度見直してください。災害支援とは、未来に関わりに行くということ、そのような視点で本業をとおした支援、行政にできない支援をお願いしたいと思います。

[第2回] 「顔の見える関係づくりを」はコチラ

※この記事は10月17日に日本財団ビルで行われた「民間防災および被災地支援ネットワーク」における田村太郎氏の講演と当日の手元資料を参考にまとめたものです。文責は当編集部にあります。なお、震災被災地におけるボランティアの活動の写真は、当日の事務局を構成した一般社団法人ピースボート災害ボランティアセンターからお借りしました。

<関連記事>

電気自動車が切り拓く自動車の次の100年

なぜ、高速ツアーバス事故はなくならないのか

自転車をもっと暮らしの中に

新しい働き方をつくろうよ !

東北の女性をつなぐ「福島のお母さん達と行く石巻」プロジェクト

震災を乗り越えて未来へ

トップへ
TOPへ戻る