企業とNGO/NPO

震災から1年半、今こそ企業とNGO/NPOは連携を[第2回] 顔の見える関係づくりを

寄付仲介サイトと連携し寄付金募集に貢献

新日鉄住金エンジニアリング㈱ 戦略企画センター経営企画部CSR室長 折笠光子さん

新日鉄住金エンジニアリングの折笠光子さん

折笠:10月に新日鉄と住友金属が一緒になりました。鉄鋼会社のエンジニアリング部門ということで、産業プラント設備だとか土木建築の仕事がメインの会社です。CSRに取り組んで3年目です。

山本:大成さんやブリヂストンさんの場合は、肉体を使ったボランティア活動でしたが、新日鉄住金エンジニアリングさんの取り組みはちょっと違いますね。

折笠:エンジニアリング会社ですので、震災の直後は過去に納めたインフラ設備である水道・ガス・電力の復旧に努めました。現地にある釜石製鉄所が被災しており、釜石市には医療センターを寄付しました。社会貢献を行うタスクフォースチームが2年前にできていまして、業務がかなり忙しいのでボランティアはできないけど募金ならできると決めていました。

従業員は全国各地、あるいは海外にもいますので、どこにいても募金をできる仕組みはありました。それはジャスト・ギビング(英国に本部がある世界最大の寄付仲介サイト)さんの仕組みです。そことの連携で募金活動を始めました。iPS細胞の山中教授が京都マラソンを走って募金をされた話がありますが、社員が何かにチャレンジし、それに賛同して募金を行う方法で、指定したNGO/NPOに寄付金が行くという仕組みです。

震災の直後に社長に提案し、まず社長からお願いしたところ、「1万くらいか」、「いえ10万円です」というように寄付を募りました。その後、役員も10万円ずつ入れてくれました。海外からの場合はクレジットカードやネットバンキングで決済もできます。コメントも入れられます。「日本は

大変だね、頑張れ」とか「ぼくは釜石に昔いたのです。ぜひ早く復興して」といメッセージと共に募金が集まりました。数カ月で2,500万円を超えることになりました。

そのほか、当社の役員が釜石までの531 km相当の距離を歩きますという挑戦で累計で1,800万円を集めています。「なにかできないか」という思いがくすぶっていた中で、募金という形の貢献ができてよかったとみんなも思っています。

山本:チャレンジに対して寄付を集めるということですが、みなさんのチャレンジに対する反響があったということですね。

折笠:震災直後、社長が「みんなで日本を元気にしよう」と声を掛けただけでかなり反響はありました。社長はダイエットに挑戦しましたし、役員の一人は釜石を応援する歌をつくりました。さらにチャリティーイベントも行って、そこで復興商品の販売も行い、その収益も寄付しました。

山本:社員の方が現地にいくのは難しいということですが、社員の現地に対する声はいかがでしたか。

折笠:社員の派遣もバス3台で行いました。参加者の口コミで反響もありました。私どもはインフラ整備をやっている会社ですから、もともと風土的に何かをやりたいという思いはあったようです。

今後に向けた一人ひとりの思いを聞く

山本:3人の方に今回の経験を踏まえ、今後の災害時に向けた取り組みについてもお聞かせ願えませんか。

丹下:ゼネコンには自治体との防災協定があってかなり縛られています。いざというときは建設機械や人間を持ってこいということになっています。表ではそのようになっていますので、ボランティアマインドをもった人たちが中心となって裏で取り組んでいくことになると思います。本業とのバランスを取りながらやっていくということですね。

斎藤:義捐金とか寄付の内規を見直して、より迅速に動けるようにしたいと考えています。ボランティアというところでは、労務的にボランティアなのか業務なのかという線引きが難しい面もあったので、次はどこまでやるのかきちんと整理したいと思っています。本業に関連してタイヤを寄付してほしいという依頼が多く寄せられました。ただ、被災地にはタイヤを販売し生計を立てている販売店もあり、その方たちの商売の妨げになることで復興の足を引っ張ることも心配しました。今後の課題のひとつです。

折笠:一番苦労したのは支援先の選定でした。それも場所の選定です。どこのNGO/NPOと連携するのか、赤十字さんや共同募金だとみんな納得するのですが、そこは資金が集まっているので他のところと考えたときに、企業としては何か理屈付けが必要です。すごく悩むところでした。普段からどういうNGO/NPOがどのような活動をしているのか、把握することが大事だと思いました。私どもは釜石に拠点があるのに、何で石巻なのかというのもありました。災害時には即断即決しなければならない場合も多いので、普段から備えておくことが重要だと思いました。

[第1回] 「2つの大震災から見えてくるもの」はコチラ

※この記事は10月17日に日本財団ビルで行われた「民間防災および被災地支援ネットワーク」における報告を基にまとめました。文責は当編集部にあります。なお、震災被災地におけるボランティアの活動の写真は、当日の事務局を構成した一般社団法人ピースボート災害ボランティアセンターからお借りしました。

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