企業とNGO/NPO

震災から1年半、今こそ企業とNGO/NPOは連携を[第2回] 顔の見える関係づくりを

東日本大震災から1年半が経過した10月17日、企業およびNGO/NPOなど40団体が集い、ボランティアの経験などを次の災害に生かそうと、「民間防災および被災地支援ネットワーク」の立ち上げが行われた。2回目の今回は、被災地支援に立ち上がった企業派遣ボランティアの取り組みについて報告します。

[第1回] 「2つの大震災から見えてくるもの」はコチラ

大空に復興を願って(女川で)

I. 次の災害に備えて企業との連携を探る

ピースボート災害ボランティアセンター代表理事 山本 隆

金銭的支援84%、ボランティア派遣29%

山本 隆さん

東日本大震災では企業の方々が現地にボランティアとして大勢参加しました。企業の社員ボランティア派遣はどのようなものであったのか、まず実態から報告します。

昨年9月のアンケート集計によれば、この震災で約9割の企業が何らかの支援を実施しました。うち金銭的な寄付をしたという企業が84%、人的派遣が29%、物資提供が55%となっています。これらは重なってもいます。

義捐金の支援や物資の提供もさることながら、今回の震災では社員の方が現地に出かけて、ボランティア活動などの人的支援を行ったという点が大きな特徴だといってよいでしょう。災害時の寄付についてはもともと想定していた企業もあり、大きな抵抗はなかったと考えられますが、企業の人的支援、ボランティア活動というのは、受け入れ先の問題もあって簡単に踏み出せなかった側面もあります。

初期の復旧に間に合わなかった人的派遣

私どもピースボートに人的支援の問い合わせがあった企業で、ボランティア活動に参加された企業は59%に及んでいます。相談はあったものの諸事情で派遣に至らなかった企業は41%でした。

震災後のボランティア派遣の推移ですが、地震発生直後の4月、5月、6月はそれほど多くありません。私どもからすれば初期のこの時期が一番人的リソースを必要とした時期だったわけですが、企業からの派遣は間に合わなかったといえます。企業ボランティアの1つ目のピークは7月でした。8月にやや下がり、9月に2つ目のピークを迎えました。秋以降はどんどん減っていったというのが実情です。

社員のボランティア活動に企業はどのような支援を行ったかを聞くと、「有給扱い」が63%、残りは「一部有給」や「無給」の扱いでした。活動経費については、負担しない企業がほとんどでした。ボランティア派遣という仕組みが事前に準備されていなかった事情もあり、経費を負担するという仕組みもできていなかったのが実情と思われます。

ボランティア休暇制度の普及はまだまだ

ボランティア休暇について聞いてみると、CSR(企業の社会的責任)が進む中でボランティア休暇を認める企業は増えているものの、制度があるかと聞くと、あるのは1/4程度でした。ボランティア休暇を導入している企業の多くは、震災以前からこの制度を持っており、震災後にこの制度に対する理解が広がったものではありません。

本業を通じた支援の取り組みに悩む

支援活動における課題を聞くと、本業を通した支援が重要だと認識しながらも、その中身に悩まれているとの答えが多く寄せられました。実際、現地の支援をどのような形で行うべきか、悩んでいるという答えも多くみられました。

人的派遣を重要な支援と考えている企業にとっては、派遣先の選定や予算の確保が大きな問題になっています。実際にボランティアを派遣した企業に聞くと、社員の安全面への配慮、安全をどうやって基準化していくか、といったルールづくりの問題やボランティアから帰った後の社内への周知と情報共有を課題としてあげるところも少なくありません。

顔の見える関係が構築できないか

私個人は企業とNGO/NPO、そして支援を受け入れる現地の受け入れ先の3者の間に“顔の見える関係”が構築できれば、まだまだ多くのボランティア派遣が可能であったと考えています。現状はボランティアに参加したいという方々の思いや力を100%活かし切るところまでは至っていないともいえます。

被災地で活躍するボランティア

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