CSRフラッシュ

児童養護施設の子どもたちに“学び、成長する”機会を

~企業とNGO/NPOの協働~

子どもと親を対象に体験活動や教育支援活動を展開するNPO法人キッズドア。このほど企業のCSR担当者などを集め、「子ども支援の現状を知る!語る!企業のためのCSRセミナー」を開催しました。セミナーでは児童養護施設で暮らす子どもたちの厳しい現状が報告されるとともに、進学支援に取り組むゴールドマン・サックスなどの活動が語られました。


Part 1.困難を抱え、児童養護施設で暮らす子どもたちが増えています

東京ボランティア・市民活動センター所長 山崎美貴子
(神奈川県立保健福祉大学顧問)

山崎美貴子さん

児童相談所が扱う児童虐待の件数は平成23年度で5万件を突破しました。1990年に厚生労働省が全国の児童相談所で一斉調査を行った際は1,101件でしたから、この20年間で約50倍にも増えたことになります。親の死や行方不明などによって保護者がいなくなった児童や、親からの虐待やネグレクト(育児や養育の放棄の意)等の不当な扱いを受けたり、経済的な理由や親の病気などによって養育困難となった子どもたちのうち、約3万人が児童養護施設で暮らしています。

子どもたちの虐待死を防止しようと神奈川県などが全戸乳児訪問事業を始め、近隣からの通報により気になる家庭の早期支援に取り組んだものの、児童虐待防止法が施行された平成12年は施行前の前年度と比べると3.8倍も増加しています。要保護児童数の増加に伴い、児童養護施設への入所児童数は1.13倍に増えています。

児童養護施設に入所する児童の半数は被虐待児童です。単に身体的、心理的、性的な虐待だけでなく、不適切な養育の状態を含めると大半の子どもたちが問題のある養育環境に置かれ、児童養護施設の中で“育てなおし” “育ちなおし”が必要な状況となっています。

障がいを抱えて入所する子どもたちも増える傾向にあります。4分の1の子どもがなんらかの障がいをもって入所してきます。また、養育になんらかの困難を抱えていると判断された子どもの入所も増えています。

いま、家庭で何が起きているのか

経済状況の悪化で家庭の貧困、就労の不安が広がっています。また、周りに子育て支援の仕組みがなく、相談できる人もいない“孤立した家庭”も増える傾向にあります。虐待、ネグレクト、餓死といった被虐待件数は増加の一途をたどっています。

要因には子育て環境の変化があります。離婚、転職、育児不安の連鎖で子どもと向きあうゆとりのない家庭が増えています。なかには“できちゃった婚”の増加という問題もあります。子育てができない、分からない、やりたくないといった子育て放棄も珍しいことではありません。

進学、就職――自立への道

児童養護施設の子どもたちも91%が高校進学をしています。ただ、やむなく中途退学したり、不登校になる子も少なくありません。厚労省の調査では高校を卒業した児童養護施設の子どもたちで専修学校への進学率が10.1%、大学への進学率が13.0%となっています。この数字は一般の子どもたちの専修学校進学率23.0%や大学進学率54.3%に比べるとかなり低い比率です。

せっかく進学しても、途中で挫折するケースも少なくありません。そうなると、結果的には“家なし、親なし、学力なし”となってしまいます。

いま、児童養護施設の子どもたちにも自立できる支援策が求められています。児童福祉法では、児童は18歳未満と定義されていますが、児童養護施設や里親については必要な場合、20歳未満まで措置延長できるとされています。就職または進学で施設から退所しなければならなくなった子どもたちにも自立を見守る何らかの支援策が必要となっています。企業の社会貢献活動に期待をつないでいるところです。

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