企業とNGO/NPO新春対談
“面白い”と“共感”でわが街に本物の復興を !
ISHINOMAKI 2.0代表理事 松村豪太 × ジャスト・ギビング・ジャパン代表理事 佐藤大吾ある出会いが大きなきっかけに
佐藤:ISHINOMAKI 2.0の活動に共通する背骨はデザインの良さですね。デザインにこだわり、企業のサポートもうまく巻き込んでいますね。
松村: “復興”というキーワードがありますが、“一生懸命”にやるとか、“絆”だとかだけではやがて行き詰ってしまいます。
また、今回は東北の広域が被災しているので、みんなと同じようにやっていると埋没してしまいます。その中で若い人たちにも注目してもらうためにデザインに力を注ぎました。
佐藤:内部に専門家がいたということでしょうか。
松村:ISHINOMAKI 2.0という組織には被災地を支援する企業など専門的なスキルをもったさまざまな方たちが参加してくれました。チームの構成メンバーの一人に当時ワイデンアンドケネディという世界的な広告代理店の社員だった方がいます。彼は青森の八戸出身でたまたま石巻にボランティアに来ました。まだ電気も水道も通っていないときに彼と出会い、あれこれ語り合いました。その彼が東京のオフィスに戻って「ISHINOMAKI 2.0六本木屯所」という部屋を会社の中に勝手につくってしまいました(笑い)。
佐藤:すごい行動力ですね。
松村:彼の後輩のデザイナーなんかも捲き込んで、いろいろ提案してくれました。後輩たちも面白がって協力してくれたのです。いまでは会社をあげて支援してくれています。
“面白い”と“共感”に加えてデザイン性を
佐藤:米国の家具メーカーであるハーマンミラーとの協力も目にしましたが……。
松村:いま思うと、キーワードは“面白い”あるいは“共感”ということでした。頑張っているからというだけで応援しようということではなかったのです。私たちの思いは被災地から新しいものを発信しようということでしたから、そのあたりに共感していただいたのではと考えています。
ハーマンミラーは社会貢献において先進的な企業で、インドネシアの津波の際にも支援を送り、被災した町に社内の職人さんを派遣するという活動を行いました。私たちの活動にも着目し、イギリス、カナダ、アメリカ、オーストラリアから20名くらいの職人が派遣されてきました。彼らは石巻に2週間滞在しましたが、ハーマンミラージャパンの社長自らが先頭に立って行動を共にしてくれました。
佐藤:企業がどこか特定の場所や団体に支援を行うにはそれなりの理由が必要だと思うのですが、いかがですか。また、利益団体である以上、なにか明確なメリットがないと動けないのではないかと思うのです。企業というのは株主からお金を預かっているわけですから、適当に寄付をするわけにはいきません。
松村:彼らとは継続的なお付き合いができ、反響もたくさんいただきました。現地でボランティアをされた方なら実体験として分かると思うのですが、ボランティア活動から会社に戻ると土産話で周囲も盛り上がります。企業の現場が活性化するということです。
佐藤:意味のある社会的活動で、企業そのものも元気になれるというわけですか。
松村:素晴らしい活動を行うことで企業のブランド力が高まるというメリットはあるかもしれません。支援してくださった企業にはなにか戻さないといけないと思います。
私たちのところでは「石巻工房」をつくりました。この組織はISHINOMAKI 2.0とは双子的な存在ですが、そこではメンバーがデザインしたベンチやスツール、ソファーを商品として販売しています。実はその商品はハーマンミラーの販売店にもおいてあります。ハーマンミラーも販売すれば利益が出る仕組みです。
石巻工房 ishinomaki-lab.org 地域が自立復興するきっかけをつくり、復興後も長期に存続できる「地域のものづくりのための場」をつくろうと、建築やプロダクトにかかわるデザイナーをはじめとする関係者が集まって生まれた。オリジナルの家具やバッグをつくって販売。同時に、さまざまなワークショップも行い、ものづくりの楽しさを広めている。 |
石巻工房工房長 千葉隆博 所在地 石巻市中央二丁目 問い合わせ ishinomakilab@gmail.com |