企業とNGO/NPO新春対談

“面白い”と“共感”でわが街に本物の復興を !

ISHINOMAKI 2.0代表理事 松村豪太 × ジャスト・ギビング・ジャパン代表理事 佐藤大吾

始まりは一人から

佐藤:非営利団体と企業がさまざまな活動を一緒に行う場合、“信頼と共感”が不可欠です。先ほどからお話しを聞いていると最初は一人のやる気ある社員さんとの関わりがきっかけですよね。その人を巻き込むことで、その人が所属する会社もぐっと協力的になっていくという印象ですが……。

松村:私たちは“ヒトの誘致”というキーワードも大切にしています。たとえば天才と呼ばれる人が街を歩くだけで素晴らしいアイデアを落としてくれます。
企業や行政と付き合う場合も血の通った一人の人間として、“面白い”とお互いの信頼が深まり、“共感”できる関係が生まれます。
また、その人物が決済できる範囲のことであればスピード感をもって決済が進みます。大きな金額を動かすとき、企業では上の方まで稟議をまわすようになっています。それでは時間がかかり、間に合わないということになりかねません。信頼関係ができた人間であれば、その人が決済できる10万円からスタートし、そこから成果を出すことでさらに波及させることも可能です。

佐藤:イギリスでCSRで顕著な実績を出している企業担当者と話す機会があり、非常に面白い取り組みを聞いたので紹介させていただきます。
ある企業では社内外に対して、来年1年間、企業として応援するNPOを公募するそうです。選ばれたNPOは「チャリティー・オブ・ザ・イヤー」と呼ばれ、その企業のホームページなどで年間寄付金額の目標とともに発表されます。たとえば、「わが社はこのNPOに来年1億円を寄付します。しかし、まだお金はありません。これから集めます」という感じです。
そこで企業はなにをするかというと、もし店舗をもっている企業であれば、全店舗に募金箱を設置します。商品をもっている企業は寄付金を上乗せした商品を企画し、コーズマーケティングを行います。従業員にも協力を呼び掛け、寄付を募ります。それでも目標に足りない場合は企業がマッチングギフト(上乗せ寄付)を行い、目標を達成します。
日本では企業幹部が寄付先を決定し、従業員がなんら関わることなく寄付をしているケースが多いのですが、この方法だと社員も大いに募金(ファンドレイズ)に関わり、一致団結していく様子が分かります。企業担当者に「いったいなんのためにそんなことをやるのか」と聞くと、従業員が喜ぶからだと語ってくれました。

松村:私たちの場合、なにかしてあげる、してもらうという一方通行ではなく、みんなが主体的にやっていこうというメッセージを強く打ち出すようにしています。

佐藤:その精神が大切です。私たちも東北の復興、石巻の再生をさらに応援していきます。(2013年1月)

追加ニュース: グッドデザイン賞2012を受賞!
ISHINOMAKI 2.0/石巻VOICE/石巻工房が日本デザイン振興会の主宰するグッドデザイン賞2012においてそれぞれがベスト100および復興デザイン賞を受賞。ISHINOMAKI 2.0は「都市づくり、地域づくり、コミュニティづくり]分野で、石巻VOICEは「公共領域のためのメディア」分野で、石巻工房は「社会基盤、プラットフォーム」分野で評価されたもの。
一般社団法人ISHINOMAKI 2.0
http://ishinomaki2.com/
東日本大震災を経験した石巻を、震災前の状況に戻すのではなく、新しいまちへとバージョンアップさせるために2011年6月に設立された。メンバーには地元の若い商店主やNPO職員をはじめ、建築家、まちづくり研究者、広告クリエイター、Webディレクター、学生などの専門家が集結。ジャンルに縛られない多種多様なプロジェクトを実現させてきた。石巻のバージョンアップが、日本のバージョンアップのモデルになることを目指している。
郵便番号986-0822
宮城県石巻市中央二丁目10-2新田屋ビル一階 IRORI石巻
tel&fax:0225-25-4953
一般財団法人 ジャスト・ギビング・ジャパン (本社:東京都港区、代表理事:佐藤大吾)
http://www.justgiving.jp/
英国発10億ポンドを集める世界最大級の寄付仲介サイトJustGivingの日本版「JustGiving Japan」を運営。インターネット上で募金(ファンドレイズ)活動ができ、多くの人々が気軽に寄付に参加できるサービス。日本では2010年3月9日より運営を開始。現在、約10万人から、約9.8億円の寄付を集めるなど、国内最大の寄付仲介サイトとして確固たる地位を築いている。

※この記事は昨年10月17日に日本財団ビルで行われた「民間防災および被災地支援ネットワーク」におけるお二人の対談をまとめたものです。文責は当編集部にあります。なお、石巻の写真は、一般社団法人ピースボート災害ボランティアセンターと一般社団法人ISHINOMAKI 2.0からお借りしました。

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