企業とNGO/NPO新春対談

“面白い”と“共感”でわが街に本物の復興を !

ISHINOMAKI 2.0代表理事 松村豪太 × ジャスト・ギビング・ジャパン代表理事 佐藤大吾

本業を活かした息の長い支援を

佐藤:本業を活かした活動と言えるかもしれませんね。ハーマンミラーのお店で売れれば石巻にも利益が還元されるわけですね。

松村:「石巻工房」が事業主として利益を出すという仕組みです。「石巻工房」がメーカーで、ハーマンミラーは代理店という形です。元すし職人だった仲間が世界的な家具メーカーの支援で家具製作の工房長も兼ねています。

佐藤:ここでの商品はハーマンミラーの店舗で販売しても良いほどのクオリティーということでしょうか。この種の支援グッズは、ストーリーは良くても、商品としての実力があと一歩という製品もあると思います。そのあたりの工夫はなにかあったのでしょうか。

松村:私たちの仲間は、地元の人間と建築家、デザイナー、広告のクリエイター、Webデザイナー、大学の研究者などさまざまな人によって構成されています。その中には家具やインテリアを販売するイケアにデザインを提供したことのある建築家もいます。彼が「石巻工房」のデザインをブラッシュアップする一方、ものづくりのノウハウについてはハーマンミラーの職人に教えてもらいました。そういうコラボレーションでできたのが「石巻ベンチ」という商品でした。これまでにたくさんの引き合いをいただいています。

ーマンミラーなどの支援で誕生した「石巻ベンチ」

ストーリーだけの購入では継続しない

佐藤:フェアトレード(発展途上国の原料や製品を適正な価格で購入することを通じ、立場の弱い途上国の生産者や労働者の生活改善と自立を目指す運動)の商品やコーズマーケティング(特定の商品を購入することが環境保護などの社会貢献に結びつくと訴える販促キャンペーン)の商品にいつも付きまとうのはその問題です。途上国の支援につながるというストーリーがあっても、商品そのものの実力が弱いと、なかなか継続的に売れません。

松村:運よくメンバーの中に高いスキルをもった人間がいましたが、そういう人間がいないとできないのかと言われればそうでもありません。
大切なのはそういう先進的な考えを受け入れる懐の深さだと思います。ちょっと変わったものだとうちではダメだと言われると残念な結果になります。私たちは多少怒られるのを覚悟で新しいことに挑戦しています。怒られる怖さを乗り越える勇気も大事かもしれません(笑い)。

佐藤:買ってくれる方にストーリーを訴えるというのがいまのところ主流ですね。どのメーカーのものを買っても同じような価値なら貢献性が高い方を買おうかということもあると思いますが、商品のパワーが弱いと爆発的に売れることはありません。
だから貢献度の高い商品を売りたい!と思ったら消費者ではなく、商品設計者や、パッケージデザイナーなどの「作り手側」に対して協力を呼び掛けることが有効だと思います。今回であればワイデンアンドケネディさんやハーマンミラーさんの応援があったわけですが、本当はとても高いギャラのデザイナーが協力してくれるなら素晴らしい商品を格安でつくることができます。いいものを安く売ることができるわけですから売れますよ。

松村:触れないものでもクオリティーが大切だと思います。トークセッションなども単に語り部として話すだけでなく、若い人がその場に参加してみたいと思うような話題性を醸し出せるかが試されています。
ハーマンミラーの素晴らしいところは、自社で完結させるだけでなく、丸の内の三菱地所さんに紹介して、そのリソースを石巻に活かせないか提案もしてくれました。
三菱地所がもっている丸ビルレストラン街をあげて石巻の食材をテーマにしたイベントを行うという話もあります。東京のみなさんにもおいしいものを食べていただけるし、三菱地所もそれで集客できればみんながハッピーになれるわけです。

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