国内企業最前線

あなたが一足の靴を買うたびに、貧しい国の子供たちに、TOMSの新しい靴が贈られる

“One for One”で社会的事業を進める株式会社シンフォニー

ビジネスをとおして社会の課題に挑む社会的企業。わが国でも社会起業家を目指す人たちが増えてきた。一人の若者が旅先で裸足の子供たちの暮らしぶりを見て起業を思いついたTOMS。日本でTOMSの事業に取り組む株式会社シンフォニーの矢澤哲代表に話を伺った。

矢澤哲 代表取締役

旅先で出会った子供たちは靴を履いていなかった

Q1 “一足の靴を購入するたびに、靴を必要としている(貧しい国の)子供たちに新しい一足の靴を贈る”というのがTOMSのビジネスモデル“One for One”だそうですね。

矢澤 2006年にTOMSの 創業者である米国人ブレイク・マイコスキーが考案したものです。TOMSをスタートする前、彼はアルゼンチンのある村で、現地の子供たちと出会いました。その子たちが自分の足を守る靴を買えないという現実を知り、彼は大変ショックを受けたのです。

裸足で生活する子供たちが靴を履けるようにするため、靴が売れたら、靴を履けない子供たちに靴をプレゼントするという仕組みの事業を起こせないかと考え、スタートしたのがTOMSです。

「1足の靴がお客様に購入されるたびに、靴を必要としている子供たちに新しい1足の靴が贈られる」というTOMSのシンプルな約束“One for One”(ワン フォーワン)はこうして生まれました。
創立から7年。TOMSは世界の50カ国で恵まれない子供たちに約250万足の靴を届けられるまでになりました。

展途上国の子供たちに靴を贈るブレイク・マイコスキーさん

New York Times誌ベストセラー本1位となったブレイク・マイコスキー著「Start Something That Matters」(2011年発行)(写真左)。靴をプレゼントした子どもたちから贈られた手づくりのミサンガと手紙は彼の宝物だ(写真右)。

一足の靴が病気から子供たちを守ってくれる

Q2 なぜ、靴だったのでしょうか。子供たちに役立つテーマはほかにもありそうなものですが。

矢澤:発展途上国では、いまも多くの子供たちが裸足のままで生活をしています。遊ぶときも、家の仕事を手伝うときも、学校へ行くときも、子供たちはいつも裸足なのです。

道路がきれいに舗装され、歩道と車道が区別されている先進国では想像つかないかもしれませんが、発展途上国では裸足で生活することで、常に危険と隣り合わせなのです。たとえば、発展途上国で最も多い病気のひとつは土壌からの感染症です。それは裸足の皮膚から伝染します。

靴を履くことで、子供たちの多くはこうした病気の感染から守られます。また土や砂利の道から受ける傷やその痛みからも守られるのです。

さらに、発展途上国の多くの学校では靴が制服の1つとなっているため、靴のない子供たちは学校に通うこともできない場合があります。靴があれば子供たちは教育を受ける機会も得られ、将来の可能性を大きく広げることができるわけです。

子供たちに贈られる靴は子供たちの足にフィットすることも大切。TOMSはGIVING専門のスタッフも配置している

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