皆さんからのメッセージ

震災3年。個人の思いとチカラが積み重ねてきたもの。


  1. 仮設校舎から本校舎へ。震災との戦いは続く~石巻市立渡波小学校 教諭 木村 明子
  2. 地域に花を咲かせるための、“土”を作る~北いわて未来ラボ 地域コーディネーター 下平暢樹
  3. “ケンカゴマ”で全国に製造業ネットワークを広げる~有限会社ユニーク工業 専務取締役 羽広保志
  4. 東北の眠れる価値を引き出して伝える~NPO法人 ラブギャザリング 安藤 貴明、深尾尚子
  5. 被災地の皆さんからの学び~謙虚であること ~株式会社budori 代表 有村 正一
  6. <特別寄稿>支援の“素人”が地元に飛び込んだ3年間
    ~登内 芳也 岩手県北上市役所「地域・産業連携復興支援員
  7. <インタビュー>地域の心が揺れる今こそ、“外”の人間が役割を果たす時
    ~株式会社アバンテイ 代表取締役 渡邊智惠子

地域の心が揺れる今こそ、“外”の人間が役割を果たす時

株式会社アバンテイ 代表取締役 渡邊智惠子

2011年6月から被災地での雇用創出をめざして「東北グランマの仕事づくり」プロジェクトをスタート

ゼロから、全人生をかけなければと感じた被災地での仕事づくり

渡邊智惠子さん

311は、まさしく自分の人生を変える出来事でした。
震災前から、株式会社アバンテイは、オーガニックコットン製品の製造販売企画会社として、仕事を通じて社会に貢献する、いわゆるソーシャルビジネスの会社として認知されてきたかもしれません。でも、震災の年に岩手県陸前高田市と久慈市、宮城県石巻市のお母さんたちとの協働で始めた手仕事ーーー現在の「東北グランマの仕事づくり」につながるーーーは、自分の中では、アバンテイの事業とは全く別モノでした。

アバンテイについては、1985年の設立以来、“生業(なりわい)”として必死に事業に取り組んできました。“生業”である限り、社会貢献との両立を目指しつつも、収益性を検討するとか、成長戦略を構築するとか、様々なプロセスを経て今があります。

でも311をキッカケとする「東北グランマの仕事づくり」は、始める前に考える時間はありませんでした。ある日突然、震災が起きて、目の前に生きがいである仕事を失った女性たちがいる、儲かるとか儲からないじゃなくて、やるしかない。しかも、もう一度自分自身がゼロから本気で、文字通り“自分の全人生を賭けて”やらなければいけないと思いました。自分の人生で、自分のこと以外でこんな風に感じることは、ないだろうと思います。

2011年から始めた沿岸部で被災したお母さん---東北グランマとのクリスマスオーナメントづくり。これまでに、JR構内や都内ホテルなど、様々な公共の場所で飾られてきた。

被災地の心の問題と、被災地の“外”にいる人間の役割。

私自身の心の奥には “ひょっとしたら、沿岸部の皆さんに起きたことは、自分の身に起きたことだったかもしれない”という気持ちが常にあります。どこかで“自分の代わりに、目の前の皆さんが受けたのだ”と感じている。

震災から3年を経て、被災地では格差が生まれつつある、その格差が心を荒ませつつある、と強く感じます。震災直後には大きな悲劇を皆が一緒に受けて、皆が一丸となって戦おうとした。けれども、年月の中で、家を建て直すことが出来た人、地域の外に転出した人、仮設住宅から出る目途が立たない人、今までの仕事を継続出来る人/出来ない人、家族の中に若い働き手がいる人/いない人、様々な違いが格差となりつつ、狭い地域の中で人間関係を複雑にしがちです。

今からこそが、被災地の外にいる人間が大きな力を出さないといけない。地域の人間関係に縛られない分、一歩引いた目で、地域を、これからの東北をこうしていこうという当初の志(こころざし)を言い続ける、具現化するよう働きかけ続ける。
また、私自身にとっても働く=人生、仕事は人の心と密接に結びつき、支えるものです。
被災地での仕事づくりを通じて、心を支える、彼らの力になる、大それた言い方かもしれないけれども、それが私の天命だったんだな、だから、私は今回の震災で大きな被災地の“外”にいたのかもしれない、そんな風に思っています。

ソチオリンピック用に東北グランマが手づくりした帽子とスヌード。TVで有名選手が着用する様子は作り手を喜ばせた。

テーマは、“継続”。打ち上げ花火に終わらせない。

震災から3年間、「東北グランマの仕事づくり」と並行して、一つずつ新しいプロジェクトを増やしてきました。2012年には、福島県における「ふくしまオーガニックコットンプロジェクト」。これは風評被害で野菜や米などが栽培困難となった土地や耕作放棄地を、綿花の有機栽培によって再生を図るものです。また、2013年には長野県小諸市にある小諸エコビレッジを拠点に、大自然の中で福島県を含む子供たちを育む「わくわくのびのび“えこ”こども塾」です。

「東北グランマの仕事づくり」にしても、毎年、新しいお客様と出会い、新しい手づくり商品を東北グランマたちと作っています。そういう意味では、常に新しいことをやっている感覚ですが、3つのプロジェクトはどれがメインとかではなくて、とにかく打ち上げ花火で終わるのではなくて、継続していかなければならないと思っています。

継続するためには、誰かに任せていかなければなりません。私自身は何もない所に道を創る、いわば“けもの道”創る人間です。継続するために、「東北グランマの仕事づくり」でも、例えば陸前高田のお母さんたちにも、今までは内職を受ける立場だけだったのが、グループの中で生産管理やスケジュール管理のリーダーを決めて少しずつ役割を経験してもらっています。

「ふくしまオーガニックコットンプロジェクト」や「わくわくのびのび“えこ”こども塾」は社団法人との連携または社団法人化することで、外部の様々な方が関わります。震災で、東北のお母さんたちをはじめとして震災がなければ決して会わない方たちとの出会いがあり、ネットワークが広がり、私自身の人生の深みとなりました。私やアバンテイだけでやっていくのでは駄目、様々な人のお力を借りながら、今のプロジェクトを継続していきます

●株式会社アバンテイ
ふくしまオーガニックコットンプロジェクト(ザ・ピープル サイト)

心を繋ぐ「東北グランマのクリスマスオーナメント」

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