CSRフラッシュ

ベトナムの観光地に公共バスを走らせたい

カーフリーデージャパンのベトナム・ホイアン市における実験から

カーフリーベトナム1

歩行者・自転車・公共交通を優先する社会を――世界各地で行われるモビリティウィーク&カーフリーデ―と連携して、わが国で活動を続けるカーフリーデージャパン。このほどベトナム中部の観光地ホイアンで「将来的な公共バスの運行をめざした実験的なプロジェクト」を行い、その模様を国内で報告しました。

試運行のバスと利用する観光客など

試運行のバスと利用する観光客など

公共交通がない15万都市で

ベトナム中部に位置する人口15万人の観光都市、それがホイアン市です。日本人にも馴染みの深い「日本橋」などの歴史的町並みで知られていますが、近年は海辺のリゾートとしても欧米からの観光客が数多く訪れています。

街中と海辺を中心に大小のホテル群が並び、全体で5,000室ほどの宿泊規模があるといわれています。

一部の大規模ホテルだけは宿泊客向けに自前の交通サービスを行っているものの、町には公共バスがないため人々は徒歩、バイク、タクシー、自転車などを移動手段としています。

                         

ホイアンの街中で

ホイアンの街中で

ベトナムの大都市においては急激なバイクの増加で渋滞・騒音・交通事故・健康被害・コミュニティーの破壊のほか、大気汚染も深刻の度を増しています。ここホイアン市はまだそれほどではないものの、近い将来には深刻化していくことでしょう。

今回の実験は一般社団法人カーフリーデ―ジャパン(望月真一代表)とベトナム現地のNGO団体アクション・フォー・ザ・シティ(ダン・ホン・ザン代表)が地球環境基金の一般助成活動として行ったもの。地元の行政機関と小規模の観光事業者のグループなどが協力して実現しました。

 


約10km、1周45分の試運行で課題を抽出

今回の実験は、2016年2月26日と27日の2日間にわたって行われました。大きなテーマは次の3つでした。1つは将来の公共バスサービスに向けて運行の可能性を探り、課題を抽出すること。2つめはバスサービスの必要性を市民にアピールすること。3つめはバスの運行に向けた関係団体間の議論に向けて準備することでした。

今回の試運行は2日間の実験でした。まず現地調査に始まり、観光事業者の意見聴収、参加ホテルへの説明会等を実施、そして行政からの協力も得ることで試運行を実施することができました。

 

プロジェクトの準備でひんぱんに打ち合わせ

プロジェクトの準備でひんぱんに打ち合わせ

その結果、運行ルートはリゾート地と市内中心部を結ぶ三角のルート約10.5kmに10か所のバス停を設け、朝8時から夜9時までの13時間を15分間隔で運行することに決まりました。それに合わせて13席の小型バス8台が準備されました。

 
カーフリーベトナム5

今回は試運行を行い、人々の利用実態を把握するという狙いもあり、運賃を無料に、そして利用者には乗降データ・利用実態調査のためヒアリングやアンケートを行いました。

 


利用者は観光客が中心

さあ、いよいよ本番です。ホテルの利用客を主なターゲットとし、街中の観光案内所やホイアン市役所でもポスターなどで周知、無料チケットを配布しました。

試運行のバス停は日本の交通標識のような形態で、設置においては市の許可が必要でした。こちらの提案を生かしたマップ等の必要な情報を提示したバス停とすることができず、利用しやすいサービスに欠ける部分もありました。

2日間の試運行で把握できた延べ利用者数は760人でした。1人で2回〜3回という旅行者もいたので実数は339人でした。利用者は50歳以上が3分の1を占め、ベトナム人とヨーロッパ人がそれぞれ約3割、アジア人は17%でした。国別の利用者で目立ったのはオーストラリア人とイギリス人でした。

利用は一人平均2回弱、しかしホテル客に限ると2.6回と多くなり、右回りは、反対回りの倍の利用があったが、利用距離は逆に短いなど、データを取るまで予想ができない結果も得られました。また、2つ星までの宿泊施設利用者の利用の比率が多いことなど今後の運行計画にとって貴重な結果が得られました。

バス停風景

バス停風景


利用者の声をもっと吸い上げた運行計画を

ヒアリング調査では、市内中心部を目的地とした人が約4割を占めました。逆に海辺のホテル街を目的地とした人は2割でした。1日目の利用者数は2日目に比べると少なく、事前の宣伝がまだまだ不十分だったことがわかります。また試運行期間2日間では期間も短く、中途半端であることがわかりました。利用者からはチケットに停留場の場所の地図が入ったものがあればよかったとの声が多く寄せられました。

この日の報告会で登壇したカーフリーデ―ジャパンの望月真一代表は、助成金が付けば今後も2回、3回と試運行を行い、その後、「恒常的に運行する公共バスにもっていきたい」と抱負を語りました。

 

報告する望月真一代表

報告する望月真一代表

報告会にはベトナムから日本に来ている留学生も数多く参加して、ベトナムではバスのイメージが良くないことに留意することや、息の長い取り組みを行うよう要請したのが印象的でした。

なお、現地のNGO団体アクション・フォー・ザ・シティは、2007年にハノイで設立され、現在はホイアン市にも事務所を構えています。2008年に横浜で開催されたカーフリーデーアジア会議を機に交流が始まり、2012年9月にホイアン市でカーフリーデーを実施したほか、子どもの遊び場整備などを通じてホイアン人民委員会に信頼されていることが、今回の事業に大きく貢献しました。

 


カーフリーデ―ジャパン
http://www.cfdjapan.org/
●お知らせ:カーフリーデ―ジャパンが「ヨーロッパモビリティウィーク カーフリーデ―2016」の説明会を開催します。興味のある方はぜひご参加ください。
[日時]2016年6月1日(水)18時から [場所]JICA地球広場セミナールーム601/602(新宿区市谷本村町10-5 JICA市ヶ谷ビル6階)

カーフリーデイpdf


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