CSRフラッシュ
難病患者でも、普通に外出したい、旅に出たい。
アッヴィ合同会社の「I know IBDプロジェクト」から炎症性腸疾患(IBD)をご存じですか。大腸・小腸などに炎症が起こり、腫瘍を合併することもある難病です。主な症状が”下痢”や“腹痛”のため周りに気づかれにくい“見えない難病”とも言われます。研究開発型の製薬企業アッヴィ合同会社は、2022年に周囲のIBDへの理解を実感できる社会の実現を目指すI know IBDプロジェクトを始動。5月19日の「IBDを理解する日」に合わせて、今年はIBD患者の“旅”をテーマに活動を広げていくと発表しました。(2023年6月11日公開)
外出だけでなく、旅にもチャレンジを。
トイレの貸し出しに協力する施設・店舗が各地に拡大中。
─I know IBDプロジェクトの提案─
“見えない難病”とも言われる炎症性腸疾患(IBD)。IBDの患者さんの中には、便意の切迫感によりトイレの回数が増える方もいるため、外出だけでなく旅行に不安や気後れを感じる患者さんも多くいらっしゃいます。
「I know IBD(アイノウ アイビーディー)プロジェクト」は、IBD患者さんの日常生活での困りごとの1つである外出時のトイレの不安に対して、トイレの貸し出しに協力いただく企業・店舗を募り、社会全体でIBDへの理解向上を目的として2022年にスタートしました。
プロジェクト発足から約1年を経て、協力企業・協力店数は、全国47都道府県で75社2,224店舗(2023年5月28日5月8日時点)を数え、協力企業には①トイレの貸し出しのほか、②ステッカーの掲出、③従業員の方へのIBDについての教育の3点を協力依頼しています。
全47都道府県に協力企業・協力店が拡大したことから、本年は非日常の外出といえる“旅”の場面にも活動を拡大することを発表しました。“旅”をテーマとした活動では、商店街や観光地、自治体等のパートナーとの共創で、I know IBDプロジェクトへの賛同をさらに広げます。
非日常の“旅”へ。いま、患者の皆さんが望むこと
IBD患者である安達 涼子さん(仮名)の発言から
IBD患者にとって、日常生活の中での外出時の心配事である 「トイレ」の不安は、旅行でも悩みの1つです。旅行を楽しむためには、さまざまな事前の準備が必要となり、自分が安心できる材料を探すのが習慣になっています。
例えば、長距離バスに乗る前は、車内にトイレがあったとしても1つしかないので使用しにくいため、便意・腹痛が起こらないように飲食を一切控えて乗車をしています。また、急な腹痛が心配なため、寒い場所や長時間トイレに行けない状況が分かっているときはトレーニングパンツとナプキンを着用することもあります。旅行先も、渋滞に巻き込まれないよう混まない場所を行き先に検討するほか、旅程には余裕を持つなどさまざまな対策を行っています。
IBDは、外見からは病気であることが分かりませんが、社会が気づいていないIBD患者を取り巻くさまざまな課題“見えない壁”が移動や食事といった旅行の場面にもあります。しかし、周囲の理解や配慮があることで、IBD患者の安心につながり、旅行への“見えない壁”の解消になると思います。
私自身の経験では、訪問先の施設に事前に、自分の病気のことを伝えて相談したところ、障がい者用駐車場を使用できるよう配慮していただいたことがあります。対応していただいた方々の理解と配慮を大変ありがたく感じました。
「I know IBDプロジェクト」の活動が、普段の外出だけではなく旅などの非日常のお出かけ先にも広がるのはとてもありがたいと思います。IBD患者さんが外出先で困ったときに借りられるトイレがある、ということが分かるだけでも、外出や旅行への不安解消につながると思います。
多くの自治体や観光地、企業やお店がこのプロジェクトに賛同していただけると嬉しいです。そして、このプロジェクトの拡大を通じて、社会全体でIBDを知り、正しく理解するきっかけにしてもらえたらと思います。
ユニバーサルツーリズムとIBD患者さんの旅のサポートのあり方
JTB総合研究所 ユニバーサルツーリズム推進担当 勝野 裕子さん
ユニバーサルツーリズムとは、高齢や障がい等の有無にかかわらず、誰もが気兼ねなく参加できる旅行のことです。日本の人口減少や少子高齢化が進展する中、国内外からの交流人口の拡大によって地域の活力の維持・社会の発展を目指して、ユニバーサルツーリズムが推進されるようになりました。
日本のバリアフリー化は世界でもトップクラスで、多機能トイレや車いす用の駐車場などのハード面は整備されています。一方で、“思い込みや偏見をとる”心のバリアフリーには課題が残っています。
特に、目に見えない困りごとに対しては想像力を働かせることが必要です。外出や旅行についても、個人の心身機能の障害で旅行が困難なのではなく、社会や環境のあり方・仕組みが障害を作り出していることに気づくことが重要になります。
「I know IBDプロジェクト」の支援領域が旅にまで拡大され、観光地などでの賛同が広がっていくことで、心のバリアフリーも加速していくと思います。このプロジェクトが、ユニバーサルツーリズムの普及に寄与することを期待します。
炎症性腸疾患とは?
慶應義塾大学 名誉教授
北里大学 北里研究所病院 炎症性腸疾患先進治療センター 特別顧問
日比 紀文先生
IBD は、大腸や小腸など消化管に炎症が起こり、原因不明のため根本治療のない疾患で、主に指定難病である潰瘍性大腸炎とクローン病があります。
下痢や腹痛が主な症状であるため、トイレの回数の急増や、食事の制限など患者さんの生活にさまざまな影響を及ぼすこともあります※1.2。
IBD の発症は、これから社会で活躍する世代である 10〜20 代で多く報告されています※3が、現時点では完治につながる治療法がなく、患者さんの人生を通じて大きな負担となる可能性もある疾患です※12,4,5。
しかし、治療の進歩は著しく、適切な治療により炎症が抑えられ多くの患者さんが普通の日常生活を送ることができるようになってきました。学校に通い、社会に出て働き、結婚、出産などさまざまな経験をしています。一方で、IBDの症状の1つである便意切迫感により、外出や旅行に対して不安や気後れを感じる患者さんも、多く存在すると考えられます。
周囲の方々のIBDへの正しい理解と、その理解を目に見えるようにすることは、患者さんが治療を続けていく上でも、日常生活を送る上でも、そして非日常の旅の場面でも、非常に勇気になると思います。
I know IBDプロジェクトについて
アッヴィ合同会社 イミュノロジー事業本部 事業本部長 三上香宏さん
I know IBDプロジェクトは、IBD患者さんの日常生活での困りごとの一つである外出時のトイレの不安に対して、トイレの貸し出しに協力いただく企業・店舗を募り、社会全体でのIBDへの理解向上を目的としています。プロジェクト発足から約1年を経て、協力企業・協力店数は、全国47都道府県で75社2,224店舗(5月8日時点)を数え、IBD 患者さんへ施設・店舗内トイレの貸し出しを実施いただきました。
この度、全47都道府県に協力企業・協力店が拡大したことから、また昨今の旅行需要の回復を受けて、IBD患者さんの日常だけでなく、非日常の外出といえる「旅」の場面にも活動を拡大することを発表しました。“旅”をテーマとした活動では、商店街や観光地、自治体等のパートナーとの共創で、I know IBDプロジェクトへの賛同を広げていきます。
先行した取り組みとして、年間約240万人が訪れる川越一番街商店街が I know IBDプロジェクトへの参加に向けて、準備をしています。今年の夏ごろから、プロジェクトへの参加を開始見込みであり、参加いただける店舗数など詳細は、協議中です。
※1 A comprehensive review and update on ulcerative colitis,2019 Dec;65(12):100851. doi: 10.1016/j.disamonth.2019.02.004. Epub 2019 Mar 2.
※2 The Facts about Inflammatory Bowel Diseases. Crohn’s & Colitis Foundation of America. 2014. Available at:https://www.crohnscolitisfoundation.org/sites/default/files/2019- 02/Updated%20IBD%20Factbook.pdf. (2023 年 5 月12 日アクセス)
※3 難病情報センター(https://www.nanbyou.or.jp/)(2023 年5 月 12 日アクセス)
※4 Quality of Life in Inflammatory Bowel Disease: A Systematic Review and Meta-analyses-Part I Inflamm Bowel Dis. 2018 Mar 19;24(4):742-751. doi: 10.1093/ibd/izx100.
※5 Mehta F. Report: economic implications of inflammatory bowel disease and its management. Am J Manag Care. 2016 Mar;22(3 Suppl): s51-60.
アッヴィについて
アッヴィのミッションは現在の深刻な健康課題を解決する革新的な医薬品の創製と提供、そして未来に向けて医療上の困難な課題に挑むことです。患者さん一人ひとりの人生を豊かなものにするため次の主要領域(免疫疾患、がん、精神・神経疾患、アイケア、ウイルス、消化器疾患、さらにアラガンエステティックスポートフォリオの製品・サービス)に取り組んでいます。
※アッヴィの詳細については www.abbvie.co.jp をご覧ください。
I know IBD (アイノウ アイビーディー) プロジェクトについて
本プロジェクトの目的は、“見えない壁”ともいえる、社会が気づいていないIBD患者さんを取り巻くさまざまな課題を明らかにし、解消に取り組み、さらにはIBDを正しく認知し理解する人が一人でも多く増えることで、社会全体のIBDについての理解を高めることです。
IBD患者さんを対象に行った調査では、7割以上の方が「日常生活に何らかの影響がある」と感じています。炎症症状による全身の倦怠感や睡眠への影響など、生活上の負担が大きくなることもあり、その象徴的な例として、半数を超えるIBD患者さんが「外出時にトイレの場所を“常に”チェックしている」と答えています。
I know IBDプロジェクト特設Webサイト
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