識者に聞く
なぜ、高速ツアーバス事故はなくならないのか
国土交通省「バス事業のあり方検討会」委員 JR連合自動車連絡会顧問 佃 栄一さんに聞く高速道路を走るツア―バスの事故が相次いでいる。その多くは運転手の過労などが直接の原因だといわれる。大勢の人命を預かるツアーバスだけに、安全教育や健康管理はどうなっているのだろうか。バスの運行に詳しいJR連合自動車連絡会顧問 佃栄一さんに高速ツアーバス運行の問題点について聞いた。
起こるべくして起きた人身事故
Q1 高速ツアーバスの事故が相次いでいますね。
佃:今年の4月29日に関越自動車道で高速ツアーバスが道路脇の防音壁に衝突し、7人の命が奪われ39人が重軽傷を負いました。原因は運転手の居眠りです。バスの運転手は法律で禁止されていた日雇いのドライバーでした。
8月2日にも東京ディズニーリゾート帰りの観光客35人を乗せたツアーバスが東北自動車道で前方のトラックに衝突し、乗客28人とバス運転手1人、トラック運転手と同乗者2人の計31人が負傷しました。東北道の事故は関越道の事故を受け、遠距離高速バスの夜間運行の場合、1人の運転手が走行できる距離の上限を670キロメートルから400キロメートルに引き下げるという「夏期輸送期間中の緊急対策」が実施されていたにも関わらず、それを無視し1人で運転していたものです。運転手は2か月前に軽い脳梗塞で医師から運転を控えるように言われていたようです。
5月から6月に掛け、国土交通省がツアーバス事業者298社と企画旅行業者59社の緊急監査を実施し7月19日に発表したが、バス会社で約84%、企画会社で約50%がなんらかの違反をしている事実が明らかになりました。
悲惨な事故が発生し後も、このような実態であることに驚き、安全意識の低さに愕然としています。人の命を預かる企業としての使命感が全く欠けていると感じるのは私だけでしょうか
行政だけでタクシーやトラックを含めた全10万社にも及ぶ全運送業者の監査(現行監査員、全国で308名)を実施することは困難であり、第三者機関を(例えば、駐車監視員制度)をつくる必要があると思います。