国内企業最前線
人と地球のために、私たちだからできることがあります
産業廃棄物処理の三洋商事が目指す社会貢献2020年5月に「地球環境・未来創造部」を設立、20歳代の石田公希さんを責任者に立てて、社会課題に挑む三洋商事。多くの企業が本業とSDGs(国連が提唱する持続可能な開発目標)やCSR(企業の社会的貢献)との距離感に悩むなか、迷いなく突き進む潔さが印象的でした。(2021年2月14日公開)
地球に感謝を込めて、100年続く企業を目指します
産業廃棄物の処理やリサイクル事業という本業とする三洋商事。社内の整理・整頓・清掃・清潔・躾からなる5S 運動から始まって近隣の清掃活動、そして小学生に対するエコスクールなどの活動を地道に積み上げています。2020年5月には、「地球環境・未来創造部」を設立、入社3年目の若手社員である石田公希さんを立てて、未来に向けた取り組みを強化します。石田公希さんにお話を聞きました。
Q1 12月に『妙見島企業~クリスマス サンタの落とし物集め~』のイベントを開催しましたが、まずそのお話から……。
石田:当社が本社を置く江戸川区の妙見島は23区唯一の天然の島なのですが、昨年の12月24日に、妙見島に籍を置く企業に呼び掛けて近隣の清掃を行いました。クリスマスイブイベントとして、サンタの格好をして清掃を行ったものですから、道行く親子連れから「頑張れ」「いいことだね」と、たくさんのお声がけをもらいました。
今回は計5社約30名の参加でしたが、参加してくれた企業に当日の集合写真とともにお礼のメールを送ったところ、「うれしい気持ちになれた」との声もいただきました。
Q2 三洋商事が呼びかけられたそうですが、御社はどのような会社ですか。
石田:60 年以上にわたってリサイクル(廃棄物処理)サービスを展開してきた会社です。コンピューターやサーバーなどのIT関連機器の処分に力を入れています。循環型社会の一翼を担うため、廃棄物の破砕・分別技術の向上を図るとともに、「燃やさない、埋めない」リサイクルシステムに取り組み、廃棄物の再資源化に努めています。
廃棄物を出さないゼロエミッションを目標に、通信機器やコンピューター類の分解はすべて手作業(手サイクル)で行い、資源の有効活用を進め、リサイクル率98%を実現しています。
Q3 石田さんが所属する「地球環境・未来創造部」は2020年5月に生まれた新しい部署だとうかがいました。新部署立ち上げの経緯についてもお聞かせください。
石田:当社の経営理念は、「地球に“ありがとう”を伝える企業」というもの。産業廃棄物の処理活動をとおして、人と地球とのつながりを見つめ直し、豊かな環境づくりに貢献しようとしてきました。
私自身は、中学生の頃から環境問題に興味を持ち、将来は環境保全に携わる仕事に就きたいと考え、大学も環境系の学部に進学しました。卒業を前にして、三洋商事という会社があると知り、選考試験を受けて内定が決まった後に、アルバイトとして事前に業務を経験しました。
入社後は現場と事務職を経験した後、新部署「地球環境・未来創造部」の立ち上げに関わり、その責任者になりました。
Q4 入社まもない人間にあえて大役を任すというのは、すごい話ですね。
石田:入社して3年目のことでした。CSR(企業の社会的責任)活動の強化が目的ですが、「地球に“ありがとう”を伝える企業」にふさわしい“持続可能な社会づくり”に取り組み、企業のイメージアップにつなげることも使命の1つです。
当社は2008年から従業員全員で取り組む行動に「お掃除」を設定し、全員で毎朝30分の「おそうじプロジェクト」を行っています。地球の環境保全に取り組もうという会社なら、まず自分たちの足元からきれいにしようということで、「5S 運動(整理・整頓・清掃・ 清潔・躾)」を掲げ、「東京リサイクルセンター(本社)」を含む全国の各事業所で社長をはじめ従業員全員が参加して、自分たちの仕事場の掃除を行っています。
Q5 先ほど職場を案内してもらいましたが、すみずみまできれいに整理整頓され、強く印象に残りました。
石田:社内の掃除には社長の河原林令典が率先します。トイレの掃除にも社長や上長が参加します。社員の休憩場所や食事の場所もいつもきれいが当たり前になっています。
当社は、ここ10年余りで長期休暇制度、完全週休2日制度、食堂の設置や無料朝食&ランチサービス、制服のクリーニングサービスなど福利厚生にも力を入れてきました。また、残業をなくすためフレックスタイム制を導入し、タイムカードも廃止しました。まず、一人ひとりの従業員を信用しようという思いが背景にあります。
三洋商事では、従業員が必ず守らなくてはならない約束が3つあります。「明るく元気にあいさつすること」「掃除をこまめにすること」「SKHを守ること」です。SKHというのは、S=さんづけで呼ぶ、K=敬語で話しかける、H=品格ある行動の3つを指しています。
Q6『全国無料エコスクール』も行っていますが、こちらの開催は順調ですか。
石田:小学生を対象に環境の授業を行う「エコスクール」活動を2009年度より継続的に行ってきました。リサイクルに関して多くを学べる体験学習の機会となっており、これまでに全国で計80回以上開催してきました。
ただ、この1年は、新型コロナウイルスの感染拡大もあり、昨年10月16日(金)に国立大学法人 千葉大学教育学部附属小学校(千葉県千葉市)で行われた「海洋ごみ」に関する授業が行われただけとなっています。千葉大学教育学部附属小学校の先生とは、千葉の海岸清掃のボランティアで知り合いました。
子どもたちだけでなく、先生、見学に来てくださった教育実習生からも好評との評価をもらい、今後の活動の励みになりました。
今後はコロナの影響もにらみつつ、オンラインで授業を行う『全国無料エコスクール』も開催する予定です。オンラインでの実施なら、全国の小学校にまで対象を広げることができ、より多くの生徒たちに環境について学ぶ機会を提供できると思います。下の募集要項に沿ってぜひお申し込みください。
●実施概要
対象:全国の小学校(全学年)※中学校・高校は要相談
授業時間:60分程度
実施期間:2020年11月~
授業料金:無料
実施方法:zoom等のビデオ会議システムで教室をつなぎ、授業を行う。興味のある学校教育関係者の方は、ホームページ(https://eco-suku.com/)よりお問い合わせいただくか、地球環境・未来創造部(mirai@sanyo-syoji.co.jp)までメールでご連絡を。
Q7 石田さんは「エコスクール」に加えてシンポジウムにも参加されていますね。御社の環境絵本の製作・配布の活動もユニークです。
石田:当社は、2008年に産業廃棄物処理業として初めてエコ・ファースト企業に認定されました。これは環境分野において先進的・独自的かつ業界をリードする企業を、環境大臣が認定する制度ですが、現在でも全国でわずか50社(2020年10月時点)しか認定されていません。
昨年11月2日(月)には、オンラインで開催される環境省、エコ・ファースト推進協議会共催の『第5回 エコ・ファースト シンポジウム』に私も参加しました。初めてのことでもあり、あがってしまいましたが、よい経験ができたと思います。
また、2007年に「森の住人ハッパー」を、2008年に「森の住人ハッパー ――川に魚がいなくなっちゃったの巻」を、2009年に「森の住人ハッパー ―海の森がなくなっちゃうの巻」の3冊の絵本を発行し、学校や施設への寄贈、SNSのプレゼント企画などでお渡ししています。
Q8 三洋商事は全国に有力なお客様を持ち、複数の県に事業拠点があります。CSRやSDGsの取り組みを組織のすみずみに浸透させるのは大変だと思いますが、あらためて抱負をお聞かせください。
石田 最近は、どの企業も経営理念を大切にしています。私たちも、経営理念である「地球に“ありがとう”を伝える企業」を目指そうという先人の志を大切にし、その思いを社内だけでなく社外に発信して実現する役割があります。
三洋商事は現在全国に250人以上の従業員が働いていますが、一人ひとりが個性と人格を持っています。ただし、三洋商事という共通の場をとおして、私たちの役割が社会から必要とされ、社会に役立っているという誇りにつながれば、大きな結束の力となりえます。
「地球環境・未来創造部」のような部署は、それ自体が利益を生むわけではありません。従業員の理解と支えがなければ長続きしません。私たちの部署では、まず日々の活動を「ニュースレター」という形で社内に発信し、従業員の共通の話題づくりから理解を図っています。
●お問い合わせ
三洋商事株式会社 地球環境・未来創造部
TEL:03-6808-2171 e-mail:mirai@sanyo-syoji.co.jp
ホームページ:https://sanyo-syoji.co.jp/
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